日立製作所の保有株売却(2022年・日立建機の決断)

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論点新しい大株主に誰を迎えるか
日立建機:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
伊藤忠・日本産業パートナーズ連合の出資と米州販売への支援確保

何をなぜ決めたか:伊藤忠・日本産業パートナーズ連合の出資と米州販売への支援確保

概要

2022年1月14日、日立製作所は保有する日立建機株55,290,000株(議決権所有割合26.0%)を、HCJIホールディングス合同会社へ譲渡することで合意した。HCJIは、日本産業パートナーズが運営するファンドの特別目的会社と、伊藤忠商事の特別目的会社が共同で出資する会社である。日立建機は同じ日の取締役会で、この譲渡を前提にHCJIと資本提携契約を締結することを決議した。

譲渡は2022年8月23日に実行された。日立の議決権所有割合は51.5%から25.4%へ下がり、26.0%を持つHCJIが筆頭株主となった。日立建機は日立の連結子会社から、HCJIと日立の双方の持分法適用関連会社へ移った。

背景

売り手の日立は、上場子会社の整理を進めていた。2009年3月時点で22社あった上場子会社は、日立金属と日立建機を2022年度に非連結としたことで0社になった。同じころ日立建機は、2021年8月に米ディア アンド カンパニーとの北中南米の合弁事業について、業務提携を解消することで合意していた。

提携の解消を決める直前の2021年3月期、米州向けの売上収益は118,048百万円で、連結の売上収益813,331百万円の約15%にとどまった。日立建機は2021年10月に北米の子会社を米州全域の地域統括会社「日立建機アメリカ」へ改め、2022年1月までに米州の販売代理店16社と新規取引でおおむね合意した。

内容

日立建機が伊藤忠商事に期待したのは、北米の物流網と金融事業である。伊藤忠は日米間の陸海送の物流網、小型建機の製造販売会社と建機のオンラインレンタル会社を通じた全米の顧客網、米国でファイナンスを手がける事業会社を持ち、両社は代理店向けと個人・法人の顧客向けの双方で協業を検討するとした。日本産業パートナーズには、中長期の保有を前提に経営基盤の強化とレンタル資産の管理運用への助言を求めた。

資本提携契約では、HCJIが取締役候補者1名を指名委員会に提案できると定めた。HCJIは株式の取得から5年間、原則として日立建機株の追加取得も譲渡もしない。日立とは、日立ブランドの使用、Lumada事業と研究開発での連携、マイニング事業を中心とする部品取引を続ける。

含意

日立建機は2022年3月に米州での独自展開を本格的に始めた。伊藤忠商事、東京センチュリー、日立建機の各米国法人が出資するZAXIS Financeは、2023年5月に米国の顧客向け、9月に代理店向けの融資を始めた。米州向けの売上収益は2024年3月期に375,247百万円となり、2021年3月期の約3.2倍に増加した。

一方、株主の構成は4年で再び動いた。日立は2025年11月に保有株の一部を68,100百万円で売却し、持分は18.4%に下がって持分法適用会社から外れた。日本産業パートナーズは2026年4月15日にHCJIの出資者でなくなり、2026年3月期の有報で伊藤忠の議決権被所有割合は間接所有を含め33.4%となった。日立建機は2027年4月にランドクロスへ社名を変更する予定である。

いつ何が起きたか12件
当時の取締役10名

当時の取締役(2021年6月株主総会決議)

考察:米州の立ち上げに合わせた株主選び
考察

考察:米州の立ち上げに合わせた株主選び

なぜ日立建機は、HCJIとの資本提携を受け入れたのか。日立が上場子会社を整理する以上、親会社の持ち株はいずれ動く。日立の完全子会社になるか、株式を市場や同業へ売却するか、別の株主を迎えるか。この中から日立建機は、伊藤忠商事を含む新しい株主との資本提携を選んだ。ディアとの合弁を解消し、米州で自前の販売網の構築を始めたばかりの時期である。北米に物流網とファイナンス事業を持つ伊藤忠を株主にすることは、米州事業の立ち上げを直接支える選択だったと考えられる。

もっとも、この提携の発端は日立建機ではなく、日立の事業再編にある。日立建機は、売り手が決めた譲渡を前提に契約を締結した。HCJIの持ち分は26.0%で、日立も25.4%を残した。大株主が2社に分かれ、どちらも過半を持たない構成である。HCJIが持つのは取締役候補を1名提案する権利だけで、5年間は株の追加取得も譲渡も原則としてできない。この安定した構成は、最終的に誰が主要な株主になるかを先送りした構成でもあったのだろう。

数字で見ると、米州についての読みは当たった。米州向けの売上収益は2021年3月期の1,180億円から、2024年3月期には3,752億円に増加した。一方、先送りした株主構成は4年で再び変わった。日立は2025年11月に持分を18.4%へ下げ、2026年4月には日本産業パートナーズがHCJIから外れた。伊藤忠の議決権被所有割合は33.4%に達している。社名から日立の字が消える2027年4月以降、伊藤忠との資本関係をどう定めるかが、この提携の評価を決めることになる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
数字で見る2表

数字で見る

図と表

日立建機:売上収益と米州向け売上収益の推移

米州(百万円)米州以外(百万円)

米州向けの売上収益は2021年3月期の1,180億円から3年で3,752億円に増加した

日立建機:売上収益と米州向け売上収益の推移
(百万円)売上収益米州備考
2017年3月期753,94785,484
2018年3月期959,153152,400
2019年3月期1,033,703185,741
2020年3月期931,347186,321
2021年3月期813,331118,0482021年8月にディアとの北中南米合弁の提携解消で合意
2022年3月期1,024,961219,1561月にHCJIと資本提携。3月に米州で独自展開を開始
2023年3月期1,279,468312,4768月に日立の連結子会社から持分法適用関連会社へ
2024年3月期1,405,928375,247前期は翌期有報で売上収益1,264,927・米州298,130に組替
2025年3月期1,371,285356,135
2026年3月期1,405,493344,5222025年11月に日立の持分が18.4%へ低下
出所:日立建機 有価証券報告書 第53期〜第62期(2017年3月期〜2026年3月期)【連結財務諸表注記】(セグメント情報 地域別情報)
出所:日立建機 有価証券報告書 第53期〜第62期(2017年3月期〜2026年3月期)【連結財務諸表注記】(セグメント情報 地域別情報)

日立建機:大株主の所有割合の推移

日立建機:大株主の所有割合の推移
(%)日立製作所HCJIホールディングスシトラスインベストメント備考
2017年3月期50.23−−
2018年3月期50.81−−
2019年3月期50.81−−
2020年3月期50.81−−
2021年3月期51.42−−
2022年3月期51.42−−譲渡は合意済みで、実行は2022年8月
2023年3月期25.4226−
2024年3月期25.4226−
2025年3月期25.4225.992.57シトラスインベストメントは伊藤忠商事の全額出資会社
2026年3月期18.3625.997.4
出所:日立建機 有価証券報告書 第53期〜第62期(2017年3月期〜2026年3月期)【大株主の状況】
出所:日立建機 有価証券報告書 第53期〜第62期(2017年3月期〜2026年3月期)【大株主の状況】
当時の取締役10名

当時の取締役(2021年6月株主総会決議)

参考文献

参考文献

参考
  • 日立建機 有価証券報告書 第59期(2023年3月期)【沿革】
  • 日立建機 有価証券報告書 第58期(2022年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】
  • 日立建機 有価証券報告書 第62期(2026年3月期)【重要な契約等】
  • 日立建機 有価証券報告書 第59期(2023年3月期)【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
  • 日立建機 有価証券報告書 第60期(2024年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】
  • 日立建機 有価証券報告書 第60期(2024年3月期)【連結財務諸表注記】(セグメント情報 地域別情報)
  • 日立建機 有価証券報告書 第62期(2026年3月期)【関係会社の状況】【大株主の状況】【重要な契約等】
  • 日立建機 有価証券報告書 第62期(2026年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】
  • 日立建機 有価証券報告書 第58期(2022年3月期)【沿革】
  • 日立建機 有価証券報告書 第59期(2023年3月期)【連結財務諸表注記】
  • 日立建機 有価証券報告書 第60期(2024年3月期)【連結財務諸表注記】
  • 日立建機 有価証券報告書 第62期(2026年3月期)【沿革】
  • 日立建機 有価証券報告書 第53期〜第62期(2017年3月期〜2026年3月期)【連結財務諸表注記】(セグメント情報 地域別情報)
  • 日立建機 有価証券報告書 第53期〜第62期(2017年3月期〜2026年3月期)【大株主の状況】
  • 日立建機 ニュースリリース「筆頭株主の異動等に伴う今後の当社の事業方針について」
  • 日立建機 適時開示「親会社、その他の関係会社及び主要株主である筆頭株主の異動に関するお知らせ」
  • 日立製作所 統合報告書「統合報告書2023「経営改革と今後の成長」」
  • 日立建機 有価証券報告書「第57期(2021年3月期)【連結財務諸表注記】」
  • 日立建機 有価証券報告書「第58期(2022年3月期)【沿革】【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】」
  • 日立建機 有価証券報告書「第59期(2023年3月期)【沿革】【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】」
  • 日立建機 有価証券報告書「第60期(2024年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】【連結財務諸表注記】」
  • 日立建機 有価証券報告書「第62期(2026年3月期)【沿革】【関係会社の状況】【大株主の状況】【重要な契約等】」
  • 日立製作所 有価証券報告書「第157期(2026年3月期)【連結財務諸表注記】」

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