NSユナイテッド海運 日本郵船によるTOBで非公開化 公開買付けへの賛同と、日本製鉄の持分縮小をともなう上場の取りやめ

更新:

時期 2026年7月
当時の社長 山中一馬
論点 支配株主の異動と非公開化
何をなぜ決めたか
概要

2026年7月31日、日本郵船はNSユナイテッド海運の普通株式に対する公開買付けを実施すると発表し、同社取締役会は賛同と応募推奨を決議した。買付価格は1株10,600円、買付予定数は1,137万9,482株、買付総額は1,206億円を見込む。発行済株式2,397万679株から自己株式40万5,192株を控除した2,356万5,487株に対し、48.29%を買い付ける計算になる。

日本製鉄が所有株式の一部を自己株式公開買付けに応募したのち、日本郵船83.33%・日本製鉄16.67%の2社のみが株主となり、株式は上場廃止となる見込みである。本稿の時点で公開買付けは開始されておらず、買付期間は決まっていない。

背景

同社は1950年4月に過度経済力集中排除法により日本製鐵から日鐵汽船として分離独立し、翌1951年1月に東京・大阪・神戸の各証券取引所へ上場した。1964年5月の海運集約で日本郵船グループの系列会社となり、2010年10月に日鉄海運と合併してNSユナイテッド海運となる。

以来、新日本製鐵(現・日本製鉄)が33.36%の筆頭株主、日本郵船が18.35%の第2位株主という構成が続いた。両社はともにその他の関係会社にあたり、郵船は議決権の18.39%にとどまりながら影響力基準で該当している。鉄鋼原料の撒積み輸送を主力とするドライバルクは、運賃市況の振れが大きい事業である。

内容

独立社外取締役4名からなる特別委員会が2026年2月27日から7月30日までに15回開かれ、全員一致で本取引は一般株主にとって公正であると答申した。買付価格10,600円は公表前営業日の終値7,740円に36.95%を上乗せした水準で、みずほ証券とプルータス・コンサルティング双方のDCF法による算定レンジに収まる。

日本製鉄は所有する786万1千株のうち472万438株を1株7,676円で自己株式公開買付けに応募する。応募するのは所有割合にして20.03%で、残る16.67%は手放さない。日本郵船の公開買付けには応募しない。

含意

62年前に系列会社として日本郵船の傘下に入り、2010年に新日鉄系へ移った会社が、こんどは支配される側として郵船に戻る。ただし日本製鉄は16.67%を残し、鉄鋼原料を運ぶ関係は保たれる。

2026年3月期は中間105円・期末205円の通期310円を配当したが、2027年3月期は中間・期末とも無配とする予定で、1951年1月に始まった上場は2027年4月中旬に幕を閉じる見込みである。

いつ何が起きたか 7件
筆者の見解
筆者の見解

62年をかけて戻った先

1964年の海運集約で日本郵船の系列に入ったとき、郵船は株主として同社を支配していたわけではなかった。2010年に新日鉄系の日鉄海運と合併したのちも、郵船は18.35%の第2位株主として残り続けている。62年にわたって関係だけを保ってきた株主が、こんどはそれを83.33%の資本に変える。系列という緩い結びつきのままでは、市況の振れる船隊も脱炭素対応の投資も分け合いきれないという判断が働いたとみられる。

ただし、完全な傘下入りではない。日本製鉄は16.67%を残し、持分法適用関連会社として業績を取り込みながら輸送の協力関係を保つ。1950年に日本製鐵から分かれて以来、この会社は荷主を株主に持ち続けてきた。株主が2社に絞られ市場から退いても、鉄鋼原料を運ぶという事業の輪郭と、2021年3月期の1,385億円から2023年3月期の2,508億円まで振れた売上の振幅そのものが変わるわけではない。

Yutaka Sugiura, 2026年8月

業績の推移
公開買付けの条件

公開買付けの条件

科目 概要 備考
公開買付者 日本郵船株式会社 公開買付け前の所有株式数は4,324千株、所有割合18.35%の第2位株主
公開買付価格 1株10,600円 公表前営業日の終値7,740円に36.95%を上乗せした水準
買付予定数 11,379,482株 発行済株式から自己株式と日本郵船・日本製鉄の所有分を除いた全数にあたる
買付総額 1,206億円
対象となる所有割合 48.29% 発行済株式総数23,970,679株から自己株式405,192株を控除した株式数に対する割合
自己株式公開買付け 4,720,438株を1株7,676円で取得 日本製鉄が所有株式の一部を応募する。所有割合にして20.03%にあたる
応募契約を結んだ株主 日本製鉄株式会社 所有株式数7,861千株・所有割合33.36%の筆頭株主。日本郵船の公開買付けには応募しない
成立後の所有割合 日本郵船83.33%・日本製鉄16.67% 株主はこの2社のみとなる
株式価値の算定機関 みずほ証券・プルータス・コンサルティング 買付価格10,600円は双方のDCF法による算定レンジに収まる
特別委員会 独立社外取締役4名 2026年2月27日から7月30日までに15回開き、全員一致で本取引は公正と答申
当社取締役会の意見 賛同の表明および応募推奨 2026年7月31日決議
上場廃止 2027年4月中旬の予定 公開買付けの成立後に株式併合を行い取引を完了する

出所:日本郵船「NSユナイテッド海運株式会社の普通株式に対する公開買付けについて」(2026年7月31日)/NSユナイテッド海運「その他の関係会社である日本郵船株式会社による当社株式に対する公開買付けの開始予定に関する賛同の表明及び応募推奨のお知らせ」(2026年7月31日)。所有株式数・発行済株式総数はNSユナイテッド海運 有価証券報告書 第100期(2026年3月期)【大株主の状況】【議決権の状況】

所有者別の株式所有割合の推移

NSユナイテッド海運:所有者別の株式所有割合の推移

(%) その他の法人外国法人等金融機関個人その他 備考
2022年3月期 54.6914.0814.8114.71 その他の法人には日本製鉄33.36%と日本郵船18.35%が含まれる
2023年3月期 54.3515.4616.1313.17
2024年3月期 54.2217.3215.0712.02
2025年3月期 54.5116.7412.6315.03
2026年3月期 54.0521.4312.4811.27 外国法人等が5期で7.35ポイント上昇。ゼナーが5.05%の大量保有を届け出た

出所:NSユナイテッド海運 有価証券報告書 第96〜100期【所有者別状況】

業績の推移

NSユナイテッド海運:業績の推移

(百万円) 売上高営業利益経常利益親会社株主に帰属する当期純利益 備考
2022年3月期 195,94126,71126,60623,582
2023年3月期 250,82532,48733,44427,603
2024年3月期 233,10021,60122,18517,986
2025年3月期 247,40820,22419,01518,621
2026年3月期 229,78420,52921,04624,095 期末株価7,259円・時価総額1,740億円。買付総額1,206億円はこれを下回る
売上高と営業利益率
売上高(百万円)営業利益率(%)

出所:NSユナイテッド海運 有価証券報告書 第96〜100期(連結損益計算書)

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参考文献
出典・参考
  • 日本郵船 適時開示「NSユナイテッド海運株式会社の普通株式に対する公開買付けについて」
  • NSユナイテッド海運 適時開示「その他の関係会社である日本郵船株式会社による当社株式に対する公開買付けの開始予定に関する賛同の表明及び応募推奨のお知らせ」
  • NSユナイテッド海運 有価証券報告書「第100期(2026年3月期)【沿革】【関係会社の状況】【所有者別状況】【大株主の状況】【議決権の状況】」

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