新和海運と日鉄海運が合併(2010年・NSユナイテッド海運の決断)

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論点 鉄鋼原料輸送を柱とする同業と合併するか
NSユナイテッド海運:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
郵船系と新日鉄系の2社の統合による、NSユナイテッド海運の発足

何をなぜ決めたか:郵船系と新日鉄系の2社の統合による、NSユナイテッド海運の発足

概要

2010年5月20日、新和海運と日鉄海運はそれぞれの取締役会で新和海運を存続会社とする合併を決議し、合併契約を締結した。両社の定時株主総会の承認を経て、同年10月1日に合併の効力が発生し、商号をNSユナイテッド海運に改めた。合併比率は日鉄海運の普通株式1株に対し新和海運の普通株式1.6株で、68,764,400株を割り当て交付した。

取得原価は15,748百万円で、受け入れた資産23,207百万円と引き受けた負債5,392百万円の時価純額がそれを上回ったため、差額の2,067百万円が負ののれんとして特別利益に入った。

背景

2008年度のドライバルク市況は7月まで空前の好況が続いたが、10月以降は世界的な景気悪化に伴う鉄鉱石や石炭の荷動きの鈍化で、史上最低水準まで急落した。2010年3月期の新和海運の連結売上高は951億円で、前期の1,328億円から3割近く減った。

両社はいずれも製鉄原料や一般炭を中心とするドライバルク輸送を柱とする外航海運オペレーターで、新和海運は長期契約を柱とした顧客基盤とエネルギー輸送を含む事業ポートフォリオに裏打ちされた総合力を、日鉄海運は新日本製鐵グループのインダストリアル・キャリアとして製鉄原燃料輸送分野での高い専門性を、それぞれ強みとしていた。新日本製鐵は2008年3月に新和海運株式を買い増して「その他の関係会社」となり、2010年3月末の議決権の所有割合は日本郵船26.77%、新日本製鐵15.04%だった。

内容

合併の目的に挙げたのは、鉄鋼原料・石炭輸送・不定期船貨物輸送の各分野で規模の利点を生かし、両社の強みを結び付けて輸送サービスの品質を高めること、エネルギー分野を含む成長マーケットでのプレゼンスの向上、そして変動の激しい事業環境下での強固な事業・財務基盤の確保である。

法手続きは吸収合併だが、両社はそれぞれの強みを相互に尊重する「対等の精神」に基づく合併として合意した。合併比率は、新和海運が三菱UFJモルガン・スタンレー証券、日鉄海運がみずほ証券に算定を依頼し、その結果を参考に協議して決めた。新会社の資本金は10,300百万円で、社長に日鉄海運の島川惠一郎氏、副社長に新和海運の杉浦哲氏が就く体制とした。

含意

合併後の2011年3月末、新日本製鐵の議決権の所有割合は34.06%となり、日本郵船は18.77%だった。提出会社の外航海運事業の船腹は77隻・391万重量トンから99隻・601万重量トンへ広がった。

2011年度を初年度とする中期経営計画『Unite & Full-Ahead!』は、2013年度に連結経常利益100億円を達成し、2015年度に150億円へ到達可能な経営基盤を確立することを掲げた。実績は2014年3月期が89億円、2016年3月期が41億円だった。

いつ何が起きたか 10件
考察:対等の精神と、動いた資本の系列
考察

考察:対等の精神と、動いた資本の系列

この合併で目を引くのは、「対等の精神」という言葉と、実際に動いた資本構成との距離である。新会社の社長は日鉄海運から出て、新日本製鐵の議決権の所有割合は15.04%から34.06%へ上がった。一方で存続会社は新和海運であり、上場もその株式が引き継いだ。どちらが吸収したのかを一言で言い切りにくい構成になっており、事業の対等と資本の非対等が同居した合併であったと推察される。1964年の海運集約で日本郵船グループの系列会社となった新和海運にとって、郵船の議決権が26.77%から18.77%へ下がった点では、系列の入れ替わりでもあった。

もっとも、統合した規模が業績に直結したわけではない。提出会社の外航船腹は77隻から99隻へ広がったが、2013年3月期には155億円の純損失を計上し、中期経営計画が2015年度に掲げた連結経常利益150億円に対する実績は41億円にとどまった。合併初年度から大量の新造船竣工に伴う船腹の供給増が市況を押し下げており、その波は船隊を大きくすることでは避けられなかったのだろう。中堅の海運会社が規模を作るという選択は、市況の波を越える体力を与えはしても、波そのものを制御する力までは与えなかったと思われる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
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図と表

NSユナイテッド海運:連結業績の推移

売上高(百万円)経常利益率(%)
NSユナイテッド海運:連結業績の推移
(百万円) 売上高経常利益親会社株主に帰属する当期純利益 備考
2006年3月期 93,55910,4195,413
2007年3月期 105,59514,5918,857
2008年3月期 131,98821,87416,074 資源需要の拡大でドライバルク市況が高騰し、合併前の最高益となった
2009年3月期 132,79912,4986,689
2010年3月期 95,1064,0531,215 金融危機後の市況急落で売上高は前期を3割近く下回った
2011年3月期 127,1845,8733,236 合併による業容拡大で増収増益。負ののれん発生益20億67百万円を特別利益に計上
2012年3月期 135,044496△914 新造船の大量竣工による船腹供給圧力で市況が低迷した
2013年3月期 131,3792,529△15,505 155億円の純損失。合併後で最大の赤字となった
2014年3月期 153,6658,92010,778 中期経営計画が2013年度に掲げた連結経常利益100億円には届かなかった
2015年3月期 157,62510,3808,626
2016年3月期 137,1484,0644,110 2015年度の目標150億円に対し、連結経常利益は41億円にとどまった
出所:NSユナイテッド海運 有価証券報告書(2006年3月期〜2016年3月期/連結損益計算書)
出所:NSユナイテッド海運 有価証券報告書(2006年3月期〜2016年3月期/連結損益計算書)

NSユナイテッド海運:外航海運事業の運航船腹(提出会社)

所有船(隻)用船(隻)
NSユナイテッド海運:外航海運事業の運航船腹(提出会社)
(隻) 所有船用船計 備考
2006年3月期 17273
2007年3月期 17273
2008年3月期 17071
2009年3月期 16869
2010年3月期 17677 重量トン数は391万。合併直前の船隊規模
2011年3月期 29799 合併で用船が21隻増え、重量トン数は602万へ広がった
2012年3月期 298100 重量トン数は655万で、合併後の最大となった
2013年3月期 19293
2014年3月期 29395
2015年3月期 29193
2016年3月期 27981 重量トン数は597万。用船の返船が進み合併直後の水準を下回った
出所:NSユナイテッド海運 有価証券報告書(2006年3月期〜2016年3月期/設備の状況・主要な設備の状況)
出所:NSユナイテッド海運 有価証券報告書(2006年3月期〜2016年3月期/設備の状況・主要な設備の状況)

合併の条件

合併の条件
科目 概要 備考
企業結合の法的形式 新和海運を存続会社とする吸収合併 それぞれの強みを相互に尊重する「対等の精神」に基づく合併として合意した
被取得企業 日鉄海運 外航海運事業。新日本製鐵グループのインダストリアル・キャリア
企業結合日 2010年10月1日 合併契約の締結は2010年5月20日。連結に含めた業績は同日から2011年3月まで
合併比率 日鉄海運1株に対し新和海運1.6株 新和海運が持つ日鉄海運株8万株と日鉄海運の自己株式150万株には割当てなし
交付した株式数 68,764,400株 評価額は15,610百万円。増加すべき資本金は2,200百万円
取得原価 15,748百万円 株式15,610に合併直前保有株4とアドバイザリー費用等134を加えた額
取得した議決権比率 100.0% 合併直前の所有は0.2%で、企業結合日に99.8%を追加取得した
合併比率の算定 両社が第三者機関に算定を依頼 新和海運は三菱UFJモルガン・スタンレー証券、日鉄海運はみずほ証券
取得企業を決定した根拠 対価の種類が株式であること 株式を交付した新和海運を取得企業と決定した
負ののれん発生益 2,067百万円 受け入れた資産・負債の時価純額が取得原価を上回ったことにより発生した
受け入れた資産・負債 資産23,207百万円/負債5,392百万円 資産は流動9,604と固定13,603、負債は流動4,901と固定491
期首完了と仮定した影響 売上高16,080百万円・経常利益1,887百万円 当期純利益は2,169百万円。監査証明を受けていない概算額
新商号 NSユナイテッド海運 英文名はNS UNITED KAIUN KAISHA, LTD.。新会社の資本金は10,300百万円
合併後の経営体制 社長は島川惠一郎、副社長は杉浦哲 新日本製鐵の議決権比率は15.04%から34.06%へ上がり筆頭株主となった
出所:NSユナイテッド海運 有価証券報告書(2011年3月期)【企業結合等関係】、新和海運 有価証券報告書(2010年3月期)【経営上の重要な契約等】
出所:NSユナイテッド海運 有価証券報告書(2011年3月期)【企業結合等関係】、新和海運 有価証券報告書(2010年3月期)【経営上の重要な契約等】
参考文献

参考文献

参考
  • 新和海運 有価証券報告書 第84期(2010年3月期)【重要な後発事象】
  • NSユナイテッド海運 有価証券報告書 第85期(2011年3月期)【沿革】
  • NSユナイテッド海運 有価証券報告書 第85期(2011年3月期)【企業結合等関係】
  • 新和海運 有価証券報告書 第83期(2009年3月期)【業績等の概要】
  • 新和海運 有価証券報告書 第84期(2010年3月期)【主要な経営指標等の推移】
  • 新和海運 有価証券報告書 第84期(2010年3月期)【沿革】
  • 新和海運 有価証券報告書 第84期(2010年3月期)【関係会社の状況】
  • NSユナイテッド海運 有価証券報告書 第85期(2011年3月期)【関係会社の状況】
  • NSユナイテッド海運 有価証券報告書 第85期(2011年3月期)【主要な設備の状況】
  • NSユナイテッド海運 有価証券報告書 第85期(2011年3月期)【対処すべき課題】
  • NSユナイテッド海運 有価証券報告書 第90期(2016年3月期)【主要な経営指標等の推移】
  • NSユナイテッド海運 有価証券報告書 第87期(2013年3月期)【主要な経営指標等の推移】
  • NSユナイテッド海運 有価証券報告書 第97期(2023年3月期)【主要な経営指標等の推移】
  • NSユナイテッド海運 有価証券報告書(2006年3月期〜2016年3月期/連結損益計算書)
  • NSユナイテッド海運 有価証券報告書(2006年3月期〜2016年3月期/設備の状況・主要な設備の状況)
  • 新和海運・日鉄海運 適時開示「新和海運株式会社と日鉄海運株式会社の合併契約締結について」
  • 新和海運 株主総会「第84回定時株主総会決議ご通知」
  • 新和海運 有価証券報告書「第84期(2010年3月期)【重要な後発事象】【関係会社の状況】【沿革】」
  • NSユナイテッド海運 決算短信「平成23年3月期 決算短信」
  • NSユナイテッド海運 有価証券報告書「第85期(2011年3月期)【企業結合等関係】【関係会社の状況】【対処すべき課題】」
  • NSユナイテッド海運 統合報告書「Annual Report 2011」

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