パイオニアAV事業の取得(2014年・オンキヨーの決断)

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論点赤字と引き換えに市場占有率を取るか
オンキヨー:業績の推移
売上高(億円)経常利益率(%)
年商352億円・営業損失49億円の事業の、自社株の割当と現金16億円での引き受け

何をなぜ決めたか:年商352億円・営業損失49億円の事業の、自社株の割当と現金16億円での引き受け

概要

2014年11月7日の取締役会決議に基づき、オンキヨーはパイオニアと資本業務提携契約を締結し、2015年3月2日にパイオニアの完全子会社パイオニアホームエレクトロニクス(PHE)の全株式と、パイオニアの海外6社が営むホームAV事業・電話機事業・ヘッドホン関連事業を取得した。取得原価は16億59百万円で、対価は全額現金である。PHEは同日オンキヨー&パイオニアへ商号を変更した。

背景

オンキヨーはこの統合でAVレシーバー分野の市場占有率を確保したとしながら、AVレシーバーやHi-Fiオーディオの市場自体は世界のAV市場のなかで4分の1程度にすぎず、ヘッドホン・ブルートゥーススピーカー・デジタルオーディオプレーヤーの市場のほうがはるかに大きく伸長率も高いと書いている。統合で得たいのはモバイルオーディオのノウハウであった。2015年3月期の連結売上高は355億63百万円、経常損失は34億83百万円である。

内容

取得と同じ2015年3月2日を払込期日として、オンキヨーはパイオニアに対し第三者割当で普通株式10,835,900株を1株155円で発行した。発行価額の総額は16億7,956万円で、株式取得と事業譲受のために支出した現金16億37百万円とほぼ同額にあたる。パイオニアは2015年3月31日現在で発行済株式の14.79%を保有し、オーエス・ホールディング、ギブソン ブランズ インクに次ぐ第3位の株主となった。

含意

受け入れた資産は89億20百万円、引き受けた負債は64億69百万円で、企業結合時の時価純資産が取得原価を上回ったため792百万円の負ののれん発生益をAV事業に計上した。売り手のパイオニアは同じ取引で35億26百万円の移転損失を計上している。移転した事業のパイオニア連結における業績は、売上高352億40百万円・営業損失48億74百万円であった。

いつ何が起きたか10件
考察:手にした裁量と、その使い道
考察

考察:手にした裁量と、その使い道

現金は動いたが、持ち出しではなかった。オンキヨーが株式取得と事業譲受のために支出したのは16億37百万円、同じ日にパイオニアから受けた第三者割当の払込は16億79百万円である。差し引きすれば自社株を渡して事業を引き受けたに等しい。引き受けたものの中身は、売り手の連結で売上高352億40百万円・営業損失48億74百万円。自社の売上355億63百万円とほぼ同じ規模の、赤字の事業であった。時価純資産が取得原価を上回って792百万円の負ののれん発生益が立ったのは、相手が正味の財産を付けて譲渡したからにほかならない。44歳の社長は、資金の負担ではなく、赤字の負担を単独で背負う側に立った。

統合そのものは動いた。AV事業の売上は2015年3月期の260億円から2016年3月期に466億70百万円へ、セグメント損益は12億56百万円の損失から183百万円の利益に転じ、2017年3月期24億40百万円、2018年3月期25億94百万円と積み上がった。それでも連結の経常損益は一度も黒字にならない。増加したのは売上だけではなく、生産拠点も販売網も開発部隊も固定費として残ったからである。効いたのは一つではない。統合で積み上がった固定費、81億円余の譲渡が2019年10月に流れて売却代金の入金待ちに戻った資金繰り、疑義注記の下で減少した調達手段——三つが重なって、2020年3月期に33億55百万円の債務超過へ転落した。どれか一つが欠けても、そこまでは届かなかったはずである。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
数字で見る3表

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図と表

オンキヨー:AV事業セグメントの推移

AV事業の売上高(百万円)AV事業のセグメント損益率(%)
オンキヨー:AV事業セグメントの推移
(百万円)AV事業の売上高AV事業のセグメント損益備考
2011年3月期33,6382,844
2012年3月期32,1041,989
2013年3月期25,4212,559
2014年3月期26,4061,910
2015年3月期26,000△1,256統合は3月2日。パイオニア分の寄与は1か月にとどまる
2016年3月期46,670183パイオニア分が通年で加わった最初の期。売上は1.8倍になった
2017年3月期38,5782,440
2018年3月期34,6312,594
2019年3月期29,7261,784
2020年3月期11,605△1,6002019年10月に譲渡契約を終了。売上は前期の4割に減少した
出所:オンキヨー 有価証券報告書 第1〜10期(セグメント情報、報告セグメントごとの外部顧客への売上高・セグメント利益)
出所:オンキヨー 有価証券報告書 第1〜10期(セグメント情報、報告セグメントごとの外部顧客への売上高・セグメント利益)

オンキヨー:連結業績と純資産の推移

売上高(百万円)純資産額(百万円)
オンキヨー:連結業績と純資産の推移
(百万円)売上高経常損益純資産額備考
2011年3月期52,6132776,202
2012年3月期43,414△2,4644,447
2013年3月期35,5383846,179
2014年3月期36,060△4517,402
2015年3月期35,563△3,4833,485純資産は前期末比39億16百万円減。自己資本比率は11.1%
2016年3月期64,392△2,2412,897
2017年3月期55,882△4582,676
2018年3月期51,533△1,9472,701
2019年3月期43,836△1,6762,572
2020年3月期21,808△5,668△3,355債務超過に転じ、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる状況となった
出所:オンキヨー 有価証券報告書 第5期・第8期・第10期(主要な経営指標等の推移・連結経営指標等)
出所:オンキヨー 有価証券報告書 第5期・第8期・第10期(主要な経営指標等の推移・連結経営指標等)

買収の条件

買収の条件
科目概要備考
被取得企業パイオニアホームエレクトロニクス事業譲受の相手先はパイオニア。Pioneer Europe NVなど海外6社の事業も同時に取得
取得した事業の内容ホームAV製品、電話機およびヘッドホンの開発・製造・販売
企業結合を行った主な理由経営資源を互いに有効活用し製品開発力を高めるコスト競争力を向上させることにより経営基盤の強化を図ることを目的とする
企業結合日2015年3月2日資本業務提携契約の締結は2014年11月7日開催の取締役会決議に基づく
企業結合の法的形式株式取得および事業譲受PHEは株式取得、海外6社が営むパイオニア対象事業は事業譲受
取得した議決権比率100%取得企業を決定した根拠は、現金を対価とする株式取得および事業譲受であること
取得原価1,659百万円支出した現金1,637百万円と、アドバイザリー費用22百万円の合計
負ののれん発生益792百万円企業結合時の時価純資産が取得原価合計を上回った差額。AV事業に計上
受け入れた資産合計8,920百万円流動資産8,769百万円、固定資産151百万円
引き受けた負債合計6,469百万円流動負債6,294百万円、固定負債174百万円
パイオニアへの第三者割当増資10,835,900株を1株155円で発行発行価額の総額1,679,564,500円。払込期日は企業結合日と同じ2015年3月2日
パイオニアの持株比率14.79%2015年3月31日現在。筆頭株主はオーエス・ホールディングの23.56%
連結に含めた業績の期間2015年3月2日から3月31日まで期首に完了したと仮定した影響額は、算定が困難として記載を省略している
移転した事業の業績(売り手側)売上高35,240百万円パイオニア連結に計上された分離事業の損益。営業損失は4,874百万円
移転損益(売り手側)△3,526百万円パイオニアの帳簿価額は資産10,007百万円・負債6,389百万円
出所:オンキヨー 有価証券報告書 第5期(2015年3月期)【企業結合等関係】【経営上の重要な契約等】/パイオニア 有価証券報告書 第69期(2015年3月期)【事業分離等関係】
出所:オンキヨー 有価証券報告書 第5期(2015年3月期)【企業結合等関係】【経営上の重要な契約等】/パイオニア 有価証券報告書 第69期(2015年3月期)【事業分離等関係】
参考文献

参考文献

参考
  • オンキヨー 有価証券報告書「第5期(2015年3月期)【企業結合等関係】【経営上の重要な契約等】【セグメント情報】」
  • パイオニア 有価証券報告書「第69期(2015年3月期)【事業分離等関係】」
  • オンキヨー 有価証券報告書「第6期(2016年3月期)【企業結合等関係】【セグメント情報】」
  • オンキヨー 有価証券報告書「第9期(2019年3月期)【重要な後発事象】」
  • オンキヨー 有価証券報告書「第10期(2020年3月期)【継続企業の前提に関する注記】【主要な経営指標等の推移】」
  • オンキヨー 有価証券報告書「第11期(2021年3月期)【重要な後発事象】」

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