現金を一円も使わずに804億円の買い物をした、という手際の鮮やかさが、この合併の表の顔である。ただし株式で払うことは、払わずに済ませることとは違う。発行済株式総数は42,851,700株から91,000,534株へ倍増し、旧ビーネックス株主の持分は合併の日をもって半分を割った。引き換えに受け取ったのは、受入資産268億4,300万円・引受負債176億1,700万円という実体と、その差を大きく超える709億1,900万円ののれんである。対価の大半は、事業の実体ではなく将来の超過収益力という見積りへ払われていたのだろう。
もっとも、その見積りが持ちこたえたのは3か月だった。2021年6月期末の減損で314億2,800万円が落ち、うち294億3,500万円は建設領域の夢真の資金生成単位に配分されたのれんである。値札は456億500万円まで書き換えられた。それでも合併そのものは数字を残しており、売上収益は988億8,700万円から4年で1,879億5,400万円へ伸び、当期利益は2022年6月期から4期続けて黒字を保っている。1970年5月創業の建築設計事務所に始まる夢真の名は2023年1月に商号から消え、2020年に付けたビーネックスの名も同時に消えた。規模だけが残ったとみることもできる。