夢真HDを吸収合併(2021年・オープンアップグループの決断)

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論点 同業を株式交換だけで統合するか
オープンアップグループ:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
現金を使わず株式だけで行う統合と、3か月後に314億円を削られたのれん

何をなぜ決めたか:現金を使わず株式だけで行う統合と、3か月後に314億円を削られたのれん

概要

2021年4月1日、ビーネックスグループが夢真ホールディングスを吸収合併し、同日付で商号を夢真ビーネックスグループへ改めた。夢真HDの普通株式1株に対し0.63株を割り当て、交付した株式数は47,761,083株。合併交付金はない。

取得原価804億5,600万円のうち803億3,600万円は企業結合日に交付した株式の時価、1億2,000万円は消滅会社の新株予約権者へ交付した新株予約権で、対価に現金は含まれない。発行済株式総数は42,851,700株から91,000,534株へ増えた。

背景

統合の狙いに掲げたのは、事業領域の拡大、採用力・人材育成力等の強化、財務基盤の強化の3つである。同じ技術者派遣業界に属しながら、ビーネックスは機電・IT・製造、夢真は建設施工管理と、主力事業では顧客の重複がほぼなく、事業ポートフォリオはバランスよく強化されると見込んだ。

両社とも未経験者を雇用したうえでキャリアアップの機会を提供することに主眼を置いており、人材採用と教育のノウハウの親和性も高い。企業規模の拡大が信用力の向上につながることで財務基盤が強化され、更なる大規模な業界再編にも対応できる体制の構築が可能になる、という見立てだった。

内容

合併比率の公正性を確保するため、ビーネックスは株式会社SBI証券を、夢真HDはトラスティーズ・アドバイザリー株式会社を、それぞれ別個に独立した第三者算定機関として選定した。両社は受領した算定結果等を参考に、財務状況・業績動向・株価動向を勘案して交渉・協議を重ね、1対0.63の比率で合意した。

取得企業をビーネックスと決めた根拠は、株式を交付する企業であることに加えて、相対的な規模の相違の有無等の複数の要素を総合的に勘案した結果である。企業結合日に受け入れた資産は268億4,300万円、引き受けた負債は176億1,700万円で、取得原価との差額709億1,900万円がのれんとなった。

含意

のれんの発生原因は今後の事業展開によって期待される超過収益力で、日本基準では20年間の均等償却とした。ところが合併の3か月後にあたる2021年6月期末、IFRS組替後の717億1,600万円のうち314億2,800万円を減損し、うち294億3,500万円は建設領域の株式会社夢真の資金生成単位に配分されたのれんだった。期末残高は456億500万円である。

この期の連結従業員数は18,125人から30,067人へ、売上収益は817億5,500万円から988億8,700万円へ増えた一方、営業損益は252億2,000万円の損失となった。翌2022年6月期は売上収益1,485億7,300万円・営業利益101億300万円で、統合が通期の数字に表れている。

いつ何が起きたか 9件
当時の取締役 6名

当時の取締役(2020年9月株主総会決議)

考察:帳簿に残った456億円という値札
考察

考察:帳簿に残った456億円という値札

現金を一円も使わずに804億円の買い物をした、という手際の鮮やかさが、この合併の表の顔である。ただし株式で払うことは、払わずに済ませることとは違う。発行済株式総数は42,851,700株から91,000,534株へ倍増し、旧ビーネックス株主の持分は合併の日をもって半分を割った。引き換えに受け取ったのは、受入資産268億4,300万円・引受負債176億1,700万円という実体と、その差を大きく超える709億1,900万円ののれんである。対価の大半は、事業の実体ではなく将来の超過収益力という見積りへ払われていたのだろう。

もっとも、その見積りが持ちこたえたのは3か月だった。2021年6月期末の減損で314億2,800万円が落ち、うち294億3,500万円は建設領域の夢真の資金生成単位に配分されたのれんである。値札は456億500万円まで書き換えられた。それでも合併そのものは数字を残しており、売上収益は988億8,700万円から4年で1,879億5,400万円へ伸び、当期利益は2022年6月期から4期続けて黒字を保っている。1970年5月創業の建築設計事務所に始まる夢真の名は2023年1月に商号から消え、2020年に付けたビーネックスの名も同時に消えた。規模だけが残ったとみることもできる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
数字で見る 4表

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図と表

オープンアップグループ:のれんと総資産の推移

のれん(百万円)
オープンアップグループ:のれんと総資産の推移
(百万円) のれん総資産 備考
2016年6月期 2,00611,893
2017年6月期 3,68216,800
2018年6月期 5,65828,127
2019年6月期 5,38531,207
2020年6月期 4,50131,730 合併前の最後の通期。ここまでは日本基準
2021年6月期 45,605105,835 4月1日に夢真HDを吸収合併。71,716を計上したのち31,428を減損した組替後の値
2022年6月期 45,36296,521 第18期よりIFRSに基づいて連結財務諸表を作成
2023年6月期 45,253101,491
2024年6月期 51,075116,566
2025年6月期 58,156122,702
出所:オープンアップグループ 有価証券報告書 第12〜21期(連結貸借対照表・連結財政状態計算書)
出所:オープンアップグループ 有価証券報告書 第12〜21期(連結貸借対照表・連結財政状態計算書)

オープンアップグループ:売上収益と当期利益の推移

売上収益(百万円)親会社帰属当期利益率(%)
オープンアップグループ:売上収益と当期利益の推移
(百万円) 売上収益親会社帰属当期利益 備考
2016年6月期 30,1431,523
2017年6月期 43,0351,923
2018年6月期 65,3632,569
2019年6月期 81,5963,706
2020年6月期 81,7551,335 2020年6月期までは日本基準の売上高・親会社株主に帰属する当期純利益
2021年6月期 98,887△27,122 夢真HDの業績は4月1日から3か月分。減損を含め営業損益は25,220の損失
2022年6月期 148,5736,975 夢真HDを通期で取り込んだ最初の期。営業利益は10,103
2023年6月期 150,6979,533
2024年6月期 173,22511,768
2025年6月期 187,95412,559
出所:オープンアップグループ 有価証券報告書 第16期・第21期(主要な経営指標等の推移)
出所:オープンアップグループ 有価証券報告書 第16期・第21期(主要な経営指標等の推移)

オープンアップグループ:連結従業員数の推移

連結従業員数(人)
オープンアップグループ:連結従業員数の推移
(人) 連結従業員数 備考
2016年6月期 5,861
2017年6月期 10,041
2018年6月期 17,552
2019年6月期 20,329
2020年6月期 18,125
2021年6月期 30,067 合併で11,942人増。旧夢真HDの建設施工管理技術者が加わった
2022年6月期 29,084
2023年6月期 31,172
2024年6月期 32,739
2025年6月期 26,978 欧州の人材派遣事業を売却し連結から除外した影響
出所:オープンアップグループ 有価証券報告書 第12〜21期(従業員の状況・主要な経営指標等の推移)
出所:オープンアップグループ 有価証券報告書 第12〜21期(従業員の状況・主要な経営指標等の推移)

合併の条件

合併の条件
科目 概要 備考
結合当事企業 ビーネックスグループ(存続)・夢真HD(消滅) 夢真ホールディングスの事業の内容は人材派遣事業。結合後企業の名称は夢真ビーネックスグループ
企業結合日 2021年4月1日 同日付で商号を株式会社夢真ビーネックスグループへ変更した
企業結合の法的形式 吸収合併 当社を吸収合併存続会社、夢真ホールディングスを吸収合併消滅会社とする
合併比率 夢真HDの普通株式1株に対し0.63株 合併交付金はない。両社がそれぞれ別個に独立した第三者算定機関へ算定を依頼した
交付した株式数 47,761,083株 自己株式1,569株を充当し残数を新規発行。発行済株式総数は42,851,700株から91,000,534株へ
取得原価 80,456百万円 交付した株式の時価80,336百万円と、消滅会社の新株予約権者へ交付した新株予約権120百万円
主要な取得関連費用 358百万円 アドバイザリーに対する報酬・手数料等
取得企業を決定するに至った主な根拠 株式を交付する企業であること これに加えて相対的な規模の相違の有無等の複数の要素を総合的に勘案して決定した
のれん 70,919百万円 今後の事業展開によって期待される超過収益力。日本基準では20年間にわたる均等償却
のれん(IFRS組替後) 71,716百万円 2022年6月期からのIFRS適用に伴う組替値。IFRSでは償却せず毎期減損テストを行う
のれん以外の無形固定資産 受注残1,000百万円 加重平均償却期間は0.53年
受け入れた資産 26,843百万円 流動資産21,827百万円、固定資産5,016百万円
引き受けた負債 17,617百万円 流動負債10,090百万円、固定負債7,526百万円
業績の取込期間 2021年4月1日から2021年6月30日まで 連結財務諸表に含まれている被取得企業の業績の期間
期首に完了と仮定した影響額 開示なし 概算額の算定が困難であるとして記載されていない
出所:夢真ビーネックスグループ 有価証券報告書 第17期(2021年6月期)【企業結合等関係】/第18期(2022年6月期)【のれん及び無形資産】
出所:夢真ビーネックスグループ 有価証券報告書 第17期(2021年6月期)【企業結合等関係】/第18期(2022年6月期)【のれん及び無形資産】
当時の取締役 6名

当時の取締役(2020年9月株主総会決議)

参考文献

参考文献

参考
  • 夢真ビーネックスグループ 有価証券報告書「第17期(2021年6月期)【企業結合等関係】」
  • 夢真ビーネックスグループ 有価証券報告書「第18期(2022年6月期)【のれん及び無形資産】【沿革】」
  • ビーネックスグループ 有価証券報告書「第16期(2020年6月期)【主要な経営指標等の推移】」
  • オープンアップグループ 有価証券報告書「第21期(2025年6月期)【主要な経営指標等の推移】」

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