NTT Ltd.との海外事業統合(2022年・NTTデータグループの決断)

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論点 借入金と引き換えに海外事業を統合するか
NTTデータグループ:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
規模の倍増と、1兆416億円の借入金の引き受け

何をなぜ決めたか:規模の倍増と、1兆416億円の借入金の引き受け

概要

2022年5月9日、NTTデータは取締役会で、NTTの完全子会社であるNTT株式会社(現NTT DATA, Inc.)グループの海外事業と自社の海外事業を統合することを決議した。自社の海外事業を吸収分割でNTT, Inc.へ承継し、対価として同社の普通株式3,315株を受け取ったうえで、NTTが保有する260株を総額1,120億円で追加取得する形である。効力発生日の2022年10月1日に議決権の55%を取得し、NTT Ltd.を含むグループが連結に入った。譲渡対価の合計は5,541億円であった。

背景

国ごとのシェアが2%を超えていたのは日本やスペインなど数カ国にとどまり、米国は1%であった。NTTデータは2010年代を通じて海外のシステム開発会社を買い集めてきたが、地域ごとの規模は世界の大手に届かない。一方の親会社は2010年に約2,860億円で英ディメンションデータを買収し、2019年にはNTTコミュニケーションズの海外事業と合わせてNTT Ltd.を設立して、データセンタとネットワークを軸とする海外事業を別に抱えていた。

内容

統合後のNTTデータ全体の売上高は約300億ドル(約3.5兆円)、うち国外分は約180億ドル(約2.1兆円)となり、80カ国以上で14万人の体制となった。シェア2%超の国は20カ国以上に広がった。NTTデータのコンサルティング・システム開発と、NTT Ltd.のデータセンタ・ネットワーク運用を組み合わせる構想である。

共通支配下の企業結合として帳簿価額で引き継いだ資産には、のれん5,604億円と有形固定資産9,713億円が含まれる。引き受けた社債及び借入金は1兆416億円で、うち9,790億円はグループ内のNTTファイナンスとの取引残高であった。

含意

連結売上高は2022年3月期の2兆5,519億円から2023年3月期に3兆4,902億円へ跳ね上がった。統合後6か月で認識した売上高は5,827億円、当期利益は135億円である。

一方、有利子負債は4,964億円から1兆7,318億円へ、総資産は3兆845億円から6兆1,581億円へ膨らんだ。2024年度の営業利益率は日本セグメントの10.6%に対し海外は3.6%にとどまり、規模の飛躍と収益性の差が並んで残った。

いつ何が起きたか 9件
当時の取締役 15名

当時の取締役(2021年6月株主総会決議)

  • 本間洋:社長
  • 山口重樹:副社長執行役員
  • 藤原遠:副社長執行役員
  • 平野英治:取締役
  • 藤井眞理子:取締役
  • 西畑一宏:副社長執行役員
  • 鈴木正範:常務執行役員
  • PatrizioMapelli:取締役
  • 有本武司:取締役
  • 池史彦:取締役
  • 小畑哲哉:取締役(監査等委員・常勤)
  • 桜田桂:取締役(監査等委員・常勤)
  • 佐藤りえ子:取締役(監査等委員)
  • 佐々木裕:常務執行役員
  • 岡田顯彦:取締役(監査等委員・常勤)
考察:借りた規模と、返す負債
考察

考察:借りた規模と、返す負債

この統合で手に入ったものは、自力では届かなかった数字であった。売上高は一年で9,383億円増え、国ごとのシェアが2%を超える国は数カ国から20カ国以上へ広がった。ただし増えた分の中身は、NTTデータが十年余り買い集めてきたシステム開発の会社ではなく、データセンタとネットワークという資本集約の事業である。引き受けた社債及び借入金1兆416億円のうち9,790億円がグループ内のNTTファイナンスとの取引残高であったことは、規模の飛躍が同時に親会社の金融機能への依存の深まりでもあったことを示している。

もっとも、発表直後の決算説明会で少数株主から出た、当期利益の45%がNTTへ移ることへの疑問は、結果として3年で意味を失った。2025年9月30日にNTTデータグループ自体がNTTの完全子会社となり、少数株主がいなくなったためである。海外事業の統合から親会社への再統合まで、間は3年しかなかった。1988年に公正競争の確保を理由として切り出された会社は、海外で戦う規模を親会社から借りたところから、37年の独立に幕を下ろす道へ入っている。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
数字で見る 3表

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図と表

NTTデータグループ:のれん・有利子負債・総資産の推移

のれん(百万円)有利子負債率(%)
NTTデータグループ:のれん・有利子負債・総資産の推移
(百万円) のれん有利子負債総資産 備考
2018年3月期 311,658566,2732,234,278 日本基準。のれん311,658は無形固定資産合計742,080の内数
2019年3月期 357,014581,0232,476,062 IFRSへ移行した最初の期。前期とは基準が異なる
2020年3月期 391,017597,9552,686,008
2021年3月期 415,272578,9022,897,015
2022年3月期 493,769496,4803,084,513 統合の決議はこの期の末日後、2022年5月9日の取締役会である
2023年3月期 1,133,5591,731,8616,158,194 10月1日に統合。のれんは6,397億円、有利子負債は1兆2,353億円増えた
2024年3月期 1,321,7732,175,3137,219,429 統合の平年度化で有利子負債がさらに4,434億円増えた
2025年3月期 1,351,1142,599,0777,777,384
出所:NTTデータグループ 有価証券報告書 第30〜37期(連結貸借対照表・連結財政状態計算書)
出所:NTTデータグループ 有価証券報告書 第30〜37期(連結貸借対照表・連結財政状態計算書)

NTTデータグループ:日本・海外セグメントの売上高と利益

海外セグメント売上高(百万円)海外セグメント利益率(%)
NTTデータグループ:日本・海外セグメントの売上高と利益
(百万円) 海外セグメント売上高海外セグメント利益日本セグメント売上高日本セグメント利益 備考
2022年3月期 1,039,76131,114−− 海外の区分はあるが、国内は公共・社会基盤、金融、法人の3区分に分かれる
2023年3月期 1,880,35181,5971,654,418169,946 日本・海外の2区分へ変更。海外の売上高はNTT Ltd.の連結拡大で前期比80.8%増
2024年3月期 2,654,548115,7791,756,962186,735 統合後はじめての通期。海外の利益率は4.4%
2025年3月期 2,750,863100,2471,933,246205,212 海外の利益率は3.6%へ低下、日本は10.6%。差は7ポイントに開いた
出所:NTTデータグループ 有価証券報告書 第30〜37期(セグメント情報)
出所:NTTデータグループ 有価証券報告書 第30〜37期(セグメント情報)

統合の条件

統合の条件
科目 概要 備考
統合の対象 NTT, Inc.グループの海外事業 NTTの完全子会社であるNTT株式会社(現NTT DATA, Inc.)の傘下。中核はNTT Ltd.
決議日 2022年5月9日 同日に吸収分割契約を締結。契約の承認に係る株主総会決議は2022年6月16日
取得日 2022年10月1日 吸収分割の効力発生日
支配を獲得した方法 海外事業の吸収分割及び現金を対価とした持分取得
分割の対価 NTT, Inc.の普通株式3,315株 株式割当比率1.04。第三者算定機関の算定と社外取締役3名の特別委員会の答申を踏まえた
効力発生日の出資比率 NTTデータ51%・NTT49% 保有株式数はNTTデータが3,315株、NTTが3,185株
追加取得 260株を総額1,120億円 効力発生日付でNTT保有分を取得。同日の発行済株式総数の4%に相当する
取得した議決権比率 55% 追加取得後の保有株式数は3,575株。NTTは45%の2,925株となった
譲渡対価の合計 554,113百万円 現金112,000と本海外事業分割に関連する株式等442,113。後者は非資金取引
取得関連費用 1,084百万円 アドバイザリー費用706、弁護士費用341、その他37。販売費及び一般管理費に計上
引き継いだのれん 560,493百万円 共通支配下の企業結合として帳簿価額で引き継いだ。有形固定資産は971,376百万円
引き受けた社債及び借入金 1,041,612百万円 うち関連当事者であるNTTファイナンスとの取引残高が979,075百万円
取得資産及び引受負債の純額 1,028,835百万円 非支配持分472,595を認識し、差額48,842百万円を資本剰余金から控除した
統合後6か月の業績 売上高582,760百万円 2022年10月1日から2023年3月31日まで。当期利益は13,593百万円
通期換算した影響額 売上高1,188,778百万円 期首に統合したと仮定したプロフォーマ情報。当期利益22,207百万円。監査証明なし
出所:NTTデータグループ 有価証券報告書 第35期(2023年3月期)【経営上の重要な契約等】・連結財務諸表注記「7.企業結合」
出所:NTTデータグループ 有価証券報告書 第35期(2023年3月期)【経営上の重要な契約等】・連結財務諸表注記「7.企業結合」
当時の取締役 15名

当時の取締役(2021年6月株主総会決議)

  • 本間洋:社長
  • 山口重樹:副社長執行役員
  • 藤原遠:副社長執行役員
  • 平野英治:取締役
  • 藤井眞理子:取締役
  • 西畑一宏:副社長執行役員
  • 鈴木正範:常務執行役員
  • PatrizioMapelli:取締役
  • 有本武司:取締役
  • 池史彦:取締役
  • 小畑哲哉:取締役(監査等委員・常勤)
  • 桜田桂:取締役(監査等委員・常勤)
  • 佐藤りえ子:取締役(監査等委員)
  • 佐々木裕:常務執行役員
  • 岡田顯彦:取締役(監査等委員・常勤)
参考文献

参考文献

参考
  • NTTデータ 2022年度決算説明会 質疑応答(2023年5月11日)
  • NTTデータグループ 有価証券報告書 第37期(2025年3月期)【沿革】
  • NTTデータ ニュースリリース「NTT DATAとNTTはITサービス競争力強化に向け海外事業を統合」
  • NTTデータ ニュースリリース「株式会社NTT DATA, Inc.の設立が完了」
  • NTTデータ 決算説明会 質疑応答「2021年度決算説明会 質疑応答」
  • NTTデータグループ 有価証券報告書「第35期(2023年3月期)【経営上の重要な契約等】」
  • NTTデータグループ 有価証券報告書「第35期(2023年3月期)連結財務諸表注記「7.企業結合」」
  • NTTデータグループ 適時開示「当社株式の上場廃止のお知らせ」

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