SCSK株式会社CSKとの合併と、SCSKへの商号変更
独立系大手の顧客基盤を資本で抱えるか、単独で規模を追うか——ほぼ同じ売上規模の二社による合併
- 概要
- 2011年2月24日、住商情報システムと株式会社CSKの両取締役会が合併契約の締結を決議し、同年10月1日に住商情報システムを存続会社とする合併が成立した。商号はSCSKへ改められ、商社系と独立系という出自の異なる二社が一社になった経営判断である。
- 背景
- CSKは1968年設立の独立系大手で、証券・不動産へ多角化した末に2009年3月期に1,521億円の当期純損失を計上し、ACAの支援を受けて情報サービス事業へ回帰していた。住商情報システムとは2009年9月に業務・資本提携の基本合意を結び、両社社長を委員長とする業務提携委員会で協議を重ねていた。
- 内容
- CSK普通株式1株につき住商情報システム普通株式0.24株を割り当てた。第三者算定機関は住商情報システムが野村證券、CSKがみずほ証券。CSKの2011年3月期は連結売上高1,403億円・従業員8,755名で、住商情報システムの1,328億円をやや上回っていた。
- 含意
- 合併後最初の2012年3月期の連結売上高は前期比50.8%増の2,003億円、営業利益は82.0%増の128億円となり、連結従業員は8,478名増えて11,995名になった。当期純利益256億円にはCSKから引き継いだ繰越欠損金による繰延税金資産の計上が含まれる。
借り物ではない規模
救済の色を帯びた合併という読み方は、この案件には収まりが悪い。CSKは2011年3月期まで三期続けて当期純損失を出していたが、売上高では1,403億円と住商情報システムを上回り、従業員も8,755名を抱えていた。合併比率0.24と存続会社の選択が示したのは、事業の大小ではなく、損失を重ねた十年と、住友商事の信用力を背にできる財務基盤との差であったとみることができる。買う側と買われる側を分けたのは規模ではなかった。
もっとも、規模を得た代償も残った。合併初年度の当期純利益256億円には、CSKから引き継いだ繰越欠損金による繰延税金資産が含まれ、事業の実力とは切り分けて読む必要がある。引き受けた子会社群も原形のままでは残らず、JIECは2020年に本体へ吸収され、クオカードは2017年に手放された。二度目の合併で外部から規模を取り込んだSCSKは、2005年の合併と同じく、束ねたものを自社の形に作り直す作業へ十年を費やしている。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
背景
創業者を失ったCSKの十年
合併の相手となるCSKは、1968年10月に設立された独立系大手の情報サービス会社で、1982年に東京証券取引所市場第二部へ上場し、1985年に第一部へ指定された。創業者の大川功氏は2001年3月に死去し、セガやアスキーを含むグループの資本関係をどう解くかが残された。同年7月の事業戦略説明会で青園雅紘社長はグループの資本関係の再編にまで言及している[1][2]。
当時のCSKの連結欠損金は2001年3月末で622億円に膨らんでいた。青園社長は「すべての会社に自助努力で採算改善を目指してもらう。もうCSKから増資などの支援を行うことはない」と述べ、企業向け情報サービスをコア事業と定めた。セガ、CSK・エレクトロニクス、アスキーの三社が連結業績の足を引っ張っており、コア事業から外れた会社の売却は自然な流れとみられていた[3]。
巨額損失と、提携からの三年
本業回帰は一度で終わらなかった。CSKは証券事業や不動産事業へ進出して多角化を進めたが、2009年3月期に不動産証券化ビジネス等の金融サービス事業の不振で多額の損失を出し、当期純損失は1,521億円に達した。2009年7月にアント・コーポレートアドバイザリーとの基本合意に基づいて資本増強を実施し、証券事業と不動産事業から撤退して情報サービス事業へ戻る再建に取り組んだ[4][5]。
住商情報システムは2005年に住商エレクトロニクスとの合併で規模を倍にしていたが、その後の伸びは鈍く、2011年3月期の連結売上高は1,328億円、経常利益は73億円にとどまっていた。両社は2009年9月に業務・資本提携に向けた基本合意書を結び、両社の代表取締役を委員長とする業務提携委員会で個々の事業面での効果を追う協議を重ねている。合併はその協議の延長線上に置かれた[6][7]。
決断
提携ではなく合併を選ぶ
2011年2月24日、両社の取締役会は合併契約の締結を決議した。契約は同年5月19日の変更契約を経て6月28日の定時株主総会で承認され、10月1日を効力発生日として住商情報システムが存続し、CSKは解散した。CSK普通株式1株に対して住商情報システム普通株式0.24株を割り当て、優先株式は種類ごとに1対1で引き継いだ。商号はSCSKへ改められた[8][9]。
統合形態の選定にあたっては、提携の枠内にとどめる案も議論された。両社は市場の見立てを共有したうえで、人的・技術的リソースを結集して顧客基盤を強化し、そのグローバル展開を進めることが業界での位置を確保する最善の道であるとの結論に達し、統合形態としては合併が最善であると判断している。統合の推進にあたっては、重要事項を協議する統合推進委員会を共同で置くことも合意された[10]。
補完関係にある顧客基盤
合併の理屈は、市場の成熟と顧客基盤の補完に置かれた。会社は、ITサービス産業が成長から成熟へ移る過程にあり国内市場の成長に鈍化が見られること、ITハードベンダーのサービス分野への進出やインド・中国を含む海外勢との競合で競争が激しくなっていることを挙げている。得意とする産業分野は重なる一方、既存の顧客基盤は補完関係にあるというのが両社の見立てであった[11][12]。
二社の規模は近かった。CSKの2011年3月期は連結売上高1,403億円、連結当期純損失77億円、連結純資産110億円、従業員8,755名で、売上高では住商情報システムの1,328億円をやや上回っていた。大株主は合同会社ACAインベストメンツが46.38%を握る。売上でまさる側が消滅会社となり、合併比率は0.24に置かれたところに、損失を重ねた十年と、親会社の信用力を持つ側との差が表れている[13]。
結果
一年で五割増えた売上
合併後最初の決算となった2012年3月期は、連結売上高が前期比50.8%増の2,003億円、営業利益が82.0%増の128億円、経常利益が126.8%増の166億円となった。会社は業容拡大に加え、製造業と銀行業向けビジネスが順調に推移したこと、売上総利益率が改善したことを増益の理由に挙げている。合併から半年分の寄与でこの伸びであった[14]。
当期純利益は256億円と前期の5.7倍に膨らんだが、この数字は事業の実力だけを示すものではない。年金基金の運用委託資産の毀損に係る特別損失を計上する一方、合併に伴ってCSKから繰越欠損金を引き継いだことによる繰延税金資産の計上があった。合併の相手が抱えていた過去の損失が、税務上の資産として存続会社の利益に乗った形になる[15]。
人と会社の統合
合併がもっとも大きく変えたのは人員であった。連結の従業員数は前連結会計年度から8,478名増えて11,995名となり、そのうちBPOが2,271名、システム開発が4,185名を占めた。システム開発、ITマネジメント、BPO、プリペイドカードの各セグメントは合併に伴って新たに加わったもので、前期の実績がないため前期比較そのものができなかった[16]。
CSKから引き継いだ子会社群の整理はその後も続いた。JIECは2020年4月に本体へ吸収合併され、CSK Winテクノロジは商号変更を経て2021年10月にMinoriソリューションズなどと合併し、SCSK Minoriソリューションズとなった。クオカードは2017年12月に全株式を譲渡している。合併で引き受けた事業は、そのままの形では残らなかった[17]。
- 週刊東洋経済 2001年8月4日号「[News&Forecast/時々刻々]売却 CSKのグループ再編 対象はセガ、アスキー?」
- 住商情報システム 有価証券報告書(2011年3月期・連結)
- SCSK 有価証券報告書(2012年3月期・連結)
- SCSK 有価証券報告書【沿革】