三菱樹脂・レイヨン統合(2015年・三菱ケミカルグループの決断)

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論点 事業会社3社を単一の化学会社に統合するか
三菱ケミカルグループ:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
傘下事業会社3社を1つにまとめた単一の化学会社の発足

何をなぜ決めたか:傘下事業会社3社を1つにまとめた単一の化学会社の発足

概要

2017年4月1日、三菱ケミカルホールディングス傘下の化学系3社(三菱化学・三菱樹脂・三菱レイヨン)が合併し、事業会社「三菱ケミカル」が発足した。存続会社は三菱化学で、商号を三菱ケミカル株式会社へ改めている。発足後最初の通期となる2018年3月期の単体売上高は1兆2,270億円、経常利益1,254億円で、グループの連結売上収益3兆7,244億円のおよそ3分の1を担う中核事業会社となった。

背景

2005年の持株会社発足から12年、化学系3社は別法人のまま並存していた。2015年12月に策定した中期経営計画「APTSIS 20」(2016年度〜2020年度)は、機能商品・素材・ヘルスケアの3分野を通じて高成長・高収益型の企業グループをめざすとの基本方針を掲げ、2020年度の数値目標としてコア営業利益3,800億円、売上高営業利益率8%、親会社の所有者に帰属する当期利益1,800億円、株主資本利益率10%以上を置いた。3社の統合は、その施策の一つとして決まった。

内容

3社の事業ユニットを26に集約し、さらに10の事業部門へ編成した。顧客ニーズや市場動向の情報を事業間で即座に共有し、協奏によるシナジーを最大限に発現させる体制を狙ったもので、自動車・航空機のモビリティやパッケージング・フィルムなど5つの戦略市場を定めて関連事業を一体で動かす形を採った。あわせて米国・欧州・中国・アジアパシフィックの各地域にリージョナルヘッドクォーターを設けている。

3社はいずれも非上場の完全子会社であり、合併比率も対価も有価証券報告書には載らない。三菱化学メディア、三菱樹脂インフラテックなど8社も同じ日に商号を三菱ケミカルへ改めた。

含意

統合はセグメントの区分にも表れた。2017年3月期まで別々に開示していたエレクトロニクス・アプリケーションズ(外部収益1,047億円)とデザインド・マテリアルズ(8,067億円)は、2018年3月期から機能商品セグメント1兆1,459億円へ統合された。一方で業務基盤の一体化は後年まで残り、10を超えるERPの統合は2021年12月の経営方針「Forging the Future」に施策として盛り込まれている。財閥系の分立を一社に統合するワンカンパニー化は、レゾナック(2023年)に先行する事例となった。

いつ何が起きたか 9件
当時の取締役 12名

当時の取締役(2015年6月株主総会決議)

  • 小林喜光:会長
  • 石塚博昭:副会長
  • 姥貝卓美:副会長
  • 越智仁:取締役
  • 橘川武郎:社外取締役
  • 三津家正之:取締役
  • 市原裕史郎:取締役
  • 中田章:取締役
  • 梅葉芳弘:取締役
  • 伊藤大義:社外取締役
  • 渡邉一弘:社外取締役
  • 國井秀子:社外取締役
考察:財閥系の分立を一社にするワンカンパニー化の難しさ
考察

考察:財閥系の分立を一社にするワンカンパニー化の難しさ

三菱ケミカルの発足は、財閥系の分立した事業会社を一社に統合する難しさを映し出している。三菱化学・三菱樹脂・三菱レイヨンは、いずれも独自の歴史と買収の来歴を抱えた別法人であり、資本の上で一つのグループに属していても、業務や技術情報は互いに隔てられていた。法人格を合わせる形の上の統合は一日で済むが、システムや商習慣、組織文化まで含めた中身の統合には長い時間を要する。組織の形が先に整い、中身が後から追う順序は、拡大を急いだ日本の総合化学が抱えがちな課題であったと思われる。

もっとも、この統合が投げかけた問いは小さくない。汎用素材の市況に収益を揺さぶられてきた総合化学が、技術の融合で機能商品に活路を求める動きは、2023年に発足したレゾナックなど後続の再編にも通じる。掲げたコア営業利益3,800億円には届かず、最終年度の2021年3月期は親会社の所有者に帰属する当期利益が△75億円に沈んだが、統合の成否は発足の一時点でも計画の達成率でもなく、一つになった会社の中身をどれだけ一体で動かせるかという、その後の長い実行の過程で測られていくのだろう。

数字で見る 3表

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図と表

三菱ケミカルグループ:機能商品分野のセグメント売上収益

エレクトロニクス・アプリケーションズ(百万円)デザインド・マテリアルズ(百万円)
三菱ケミカルグループ:機能商品分野のセグメント売上収益
(百万円) エレクトロニクス・アプリケーションズデザインド・マテリアルズ機能商品 備考
2011年3月期 152,425657,567− 日本基準。三菱化学・三菱樹脂・三菱レイヨンの事業が2区分に分かれていた
2012年3月期 133,774661,276−
2013年3月期 118,194689,739−
2014年3月期 133,675790,901−
2015年3月期 118,752818,591−
2016年3月期 115,649852,565− 国際会計基準に組み替えた外部収益。この期にAPTSIS 20で3社統合を決めた
2017年3月期 104,707806,692− 合併直前の期。翌期の有報では機能商品1,072,640に組み替えられている
2018年3月期 −−1,145,932 3社合併に伴い、旧2区分を機能商品セグメントへ統合した
2019年3月期 −−1,155,496
2020年3月期 −−1,118,070
2021年3月期 −−994,647
出所:三菱ケミカルホールディングス 有価証券報告書 第6〜16期(事業セグメント)
出所:三菱ケミカルホールディングス 有価証券報告書 第6〜16期(事業セグメント)

三菱ケミカルグループ:連結の売上収益と当期利益の推移

売上収益(百万円)親会社の所有者に帰属する当期利益率(%)
三菱ケミカルグループ:連結の売上収益と当期利益の推移
(百万円) 売上収益親会社の所有者に帰属する当期利益資産合計 備考
2011年3月期 3,166,77183,5813,294,014 日本基準。売上高・当期純利益・総資産額
2012年3月期 3,208,16835,4863,173,970
2013年3月期 3,088,57718,5963,307,758
2014年3月期 3,498,83432,2483,479,359
2015年3月期 3,656,27860,8594,323,038
2016年3月期 3,543,35251,3584,223,774 国際会計基準へ移行(移行日2015年4月1日)。日本基準の売上高は3,823,098
2017年3月期 3,376,057156,2594,463,547 合併直前の期。インド・中国のテレフタル酸事業を非継続事業に分類した
2018年3月期 3,724,406211,7884,701,415 三菱ケミカル発足後の最初の通期。同社単体の売上高は1,227,020
2019年3月期 3,840,341169,5305,572,508
2020年3月期 3,580,51054,0775,132,149
2021年3月期 3,257,535△7,5575,287,228 APTSIS 20の最終年度。コア営業利益3,800億円の目標には届かなかった
出所:三菱ケミカルホールディングス 有価証券報告書 第10期・第12期・第16期【主要な経営指標等の推移】
出所:三菱ケミカルホールディングス 有価証券報告書 第10期・第12期・第16期【主要な経営指標等の推移】

合併の条件

合併の条件
科目 概要 備考
結合当事企業 三菱化学・三菱樹脂・三菱レイヨン 三菱ケミカルホールディングスの事業会社6社のうち、化学系の3社にあたる
合併の形式 3社の合併による統合 存続会社は三菱化学で、商号を三菱ケミカル株式会社へ改めた
効力発生日 2017年4月1日 同日付で三菱化学メディア、三菱樹脂インフラテックなど8社も商号を変更した
統合を決定した時期 2015年12月 中期経営計画「APTSIS 20」(2016年度〜2020年度)の施策の一つとして決まった
合併比率と対価 記載なし 3社はいずれも非上場の完全子会社で、有価証券報告書に比率も対価も載らない
企業結合の注記 本件の記載なし 第13期の【企業結合】に載るのは産業ガス事業、スパガス社、ニューロダーム社
事業ユニットの集約 26ユニット・10事業部門 3社の事業ユニットを26に集約し、さらに10の事業部門へ編成した
存続会社の資本金 53,229百万円 2018年3月31日現在。三菱ケミカルホールディングスの議決権所有割合は100.0%
発足後最初の通期の単体売上高 1,227,020百万円 日本基準。経常利益125,416、当期純利益57,983、総資産1,558,267百万円
掲げた目標 2020年度にコア営業利益3,800億円 APTSIS 20のグループ目標。ROS8%、当期利益1,800億円、ROE10%以上
出所:三菱ケミカルホールディングス 有価証券報告書 第11期(2016年3月期)【対処すべき課題】【コーポレート・ガバナンスの状況】 / 第12期(2017年3月期)【沿革】【事業の内容】 / 第13期(2018年3月期)【関係会社の状況】【企業結合】
出所:三菱ケミカルホールディングス 有価証券報告書 第11期(2016年3月期)【対処すべき課題】【コーポレート・ガバナンスの状況】 / 第12期(2017年3月期)【沿革】【事業の内容】 / 第13期(2018年3月期)【関係会社の状況】【企業結合】
当時の取締役 12名

当時の取締役(2015年6月株主総会決議)

  • 小林喜光:会長
  • 石塚博昭:副会長
  • 姥貝卓美:副会長
  • 越智仁:取締役
  • 橘川武郎:社外取締役
  • 三津家正之:取締役
  • 市原裕史郎:取締役
  • 中田章:取締役
  • 梅葉芳弘:取締役
  • 伊藤大義:社外取締役
  • 渡邉一弘:社外取締役
  • 國井秀子:社外取締役
参考文献

参考文献

参考
  • 三菱ケミカルホールディングス 有価証券報告書「第11期(2016年3月期)【対処すべき課題】【コーポレート・ガバナンスの状況】」
  • 三菱ケミカルホールディングス 有価証券報告書「第12期(2017年3月期)【沿革】【事業の内容】【事業セグメント】」
  • 三菱ケミカルホールディングス 有価証券報告書「第13期(2018年3月期)【関係会社の状況】【企業結合】」
  • 三菱ケミカルホールディングス 有価証券報告書「第10期(2015年3月期)・第16期(2021年3月期)【主要な経営指標等の推移】」
  • 三菱ケミカルグループ 決算説明会資料「IR Day 2022」

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