タイミーの前身は、スキマバイトとは何の関係もない会社だった。2017年8月、小川嶺氏が東京都国立市に株式会社Recolleを設立し[1]、自分の体形と好みを入力すると似合う服の提案を受けられるアパレル向けサービス[2]を立ち上げた。投資家の助言を受けて内容は二転三転し、最後は試着すると割引になる女性向けの仕組みに落ち着いている。エンジェル投資家から出資が決まりかけたところで、小川氏は他人の資金を預かって数年やり遂げる覚悟が自分にないと判断し、起業そのものを畳んだ。
返済のため小川氏はアルバイトに追われる。そこで感じたのが『何で応募にメールを使うのか。アプリで完結すればいいのに』[引用元]という不満である。履歴書を書き、面接に出向き、報酬は後日振り込まれる。求人サービスの発想としては珍しく、企業の採用課題からではなく、自分が払わされた手間から出発している。
2018年6月に社名をタイミーへ変え[3]、同年8月にスキマバイトサービス『タイミー』の提供を始めた。アプリの原型は小川氏が自作し、働き手は学生の友人経由で集めている。事業者側の開拓は飲食店への飛び込み営業だった。一日単位でも半日単位でもなく、店がもっとも忙しい二時間分の一業務だけを外に出させる。仕事を細かく割るほど、履歴書も面接もない働き手で埋められる隙間が増えた。求人媒体が扱ってきた『週三日以上』の枠を、その手前で分解する売り方である。
働き手を集めたのは即日払いだった。2018年5月には、働く前に報酬を得られる仕組みについて特許を取得[4]している。翌2019年6月にはセブン銀行と恒常的な銀行振込サービスで業務提携し[5]、働いたその日のうちに賃金が口座へ入る流れを整えた。2019年5月には二次元コードで雇用契約と出退勤を処理する特許も取っている。履歴書と面接を省いたぶん、誰がいつ本当に働いたかを確かめる仕組みが要る。手間を削る仕組みと、削ったぶんを埋める仕組みを、同じ時期に並べて用意した。2019年10月には英語表記を『Taimee』[6]から『Timee』へ改め、11月には初のテレビCMを流している。
拠点も同時に増やした。2019年7月に大阪と福岡、2020年2月に名古屋、2021年に仙台と広島、2022年に札幌と長野へオフィス[7]を置いている。当時の登録者数からすれば過剰にも見える配置だった。飲食店一軒ごとに業務を切り分けて提案する売り方は、電話とアプリだけでは完結しない。全国に散る中小の事業者を一軒ずつ訪ねる営業を前提にした以上、拠点を先に置くほかなかった。本社も事業拡大のたびに恵比寿・本郷・道玄坂・東池袋と移り、2023年2月に東新橋へ落ち着くまで、五年で五度移転[8]している。
2020年、タイミーはサービス開始以来はじめての危機に直面した。FY20(2020年10月期)の売上高は4億6100万円、経常損益は11億9600万円の赤字である。仕事を細かく切り出す売り方は飲食店との相性がよく、そこに集中したからこそ伸びた。同じ集中が、損失の大きさもそのまま決めた。
打開策は職種の載せ替えだった。巣ごもり需要で宅配と倉庫の人手が逼迫していた時期にあたり、外へ出られない働き手と人を出せない倉庫の双方が滞留していた。売上は一年ほどでコロナ禍以前の水準へ戻り、FY21(2021年10月期)の売上高は12億9900万円と前期の2.8倍になった。ただし経常損益は13億8700万円の赤字で、赤字幅はむしろ広がっている。伸びを取りに行くための費用が、売上より先に出た期である。
物流へ載せ替えた成長は、外部資金の調達で加速した。2021年8月に伊藤忠商事と営業支援に関する資本業務提携を開始し[9]、同年9月には第三者割当増資40億円と借入13億円をあわせた53億円を調達している[10]。従業員の平均年齢が30歳前後の会社が、大企業を動かした経験のある経営者と総合商社の営業網を同時に取り込んだことになる。
調達の中身は次第に借入へ寄っていった。2022年11月に運転資金として183億円[11]、2023年9月にはみずほ銀行・三菱UFJ銀行・りそな銀行からの借入だけで130億円を集め、サービス開始から5年で累計調達額は約403億円に達している[12]。スキマバイトは働き手へ即日払いし、事業者からの入金は後になるため、取扱高が伸びるほど立て替える現金が要る。株式でなく借入で賄えたのは、返済原資となる取扱高の伸びを金融機関に説明できたためである。FY22(2022年10月期)の営業キャッシュフローは19億5100万円の流出で、財務キャッシュフローの20億5900万円の流入がこれを埋めていた。
業績が損益分岐を越えたのはFY22である。売上高62億1600万円に対し経常利益は1億1500万円と薄いものの、前々期まで10億円規模の赤字を出していた会社が黒字へ転じた。翌FY23は売上高161億4400万円、営業利益19億5700万円と一気に水準が上がる。従業員数もFY23末で708人に達した。エリア営業に人を割く方法をとる以上、売上の伸びは人員の伸びとほぼ連動する。ベンチャーキャピタルからの出資に頼らず銀行借入で運転資金を賄えたのも、この黒字転換があったからである。
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|---|---|---|---|---|
| 2017〜2019年アパレルで挫折した大学生が借金返済のアルバイトから見つけた不便 | 小川嶺 | Recolle(レコレ)を設立 | ★ | |
| 小川嶺 | 社名をタイミーに変更 | ★ | ||
| 小川嶺 | スキマバイトサービス「タイミー」の提供開始 | ★★ | ||
| 2020〜2023年飲食への集中が招いた売上3分の1と物流への載せ替え | 小川嶺 | 求人主力の飲食から物流への転換と、倉庫内軽作業の開拓 2020年、新型コロナウイルスの感染拡大で飲食店が営業を自粛し、掲載求人の約6割を占めていた飲食関連は数%まで落ち込んだ。売上は一時3分の1へ減少したが、小川嶺社長は自社プラットフォームで唯一出稿が上向いていた物流へ主力職種を移し、一年ほどで売上を回復させた。 詳細を読む | ★★★ | |
| 小川嶺 | 求人の主力を物流に転換 | ★★ | ||
| 小川嶺 | 伊藤忠商事と営業支援に関する資本業務提携を開始 | ★★ | ||
| 小川嶺 | 無担保・無保証の銀行借入による運転資金の調達と累計403億円の資金構成 2022年11月と2023年9月、タイミーは大手3行からの長期借入とコミットメントラインで183億円・130億円を相次いで調達した。いずれも無担保・無保証・希薄化無しで、借入金利はAll-in costで年利1.0%未満。サービス開始から5年で累計調達額は約403億円となった。 詳細を読む | ★★★ | ||
| 小川嶺 | GMOあおぞらネット銀行と恒常的な銀行振込サービスに関する業務提携を開始 | ★ | ||
| 小川嶺 | 東京証券取引所グロース市場に株式を上場 | ★ | ||
| 2025〜2026年単発仲介から総合人材への拡張と規制が問い直す責任範囲 | 小川嶺 | スキマワークスの全株式取得と、物流倉庫の業務請負への進出 2025年8月6日、タイミーが物流倉庫領域の業務委託(BPO)型運営に強みを持つスキマワークス株式会社の全株式を取得すると発表した。2017年8月の設立から8年、同社にとって初めてのM&Aであった。取得価額は開示されていない。 詳細を読む | ★★★ |
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事実根拠:出所(タイミー)