スキマワークス買収(2025年・タイミーの決断)

更新:
論点仲介から業務請負へ買収で拡張するか
タイミー:業績の推移
売上高(億円)経常利益率(%)
全株式の取得による、物流倉庫の業務請負分野への進出

何をなぜ決めたか:全株式の取得による、物流倉庫の業務請負分野への進出

概要

2025年7月23日の取締役会で決議し、8月6日に公表、8月29日付で株式譲渡を実行して、物流倉庫領域の業務委託(BPO)型運営に強みを持つスキマワークス株式会社の議決権100パーセントを取得した。9月16日には同社の株主割当増資の引受も決め、9月30日に払い込んだ。取得原価は450,837千円で、うち149,999千円が増資の引受である。2017年8月の設立から8年、タイミーにとって初めてのM&Aであった。

背景

タイミーは物流の現場にField Managerと呼ぶ人員を置き、人員配置やレイアウト改善まで提案していた。ある企業では外注人件費に占める浸透率が10〜15パーセントから約45パーセントへ上がり、事業者からは業務一式をタイミーに任せたいという求めが出ていた。募集と支払いを仲立ちする仲介では、その先を受けきれなかった。

内容

受け入れサポートをはじめとする業務を任せられるリーダー社員の配置などを通じて、業務請負・委託業務を広げる狙いを掲げた。両社の知見を掛け合わせ、"タイミー"を導入している多くの拠点で安定した運営を実現できる体制を強めるという説明であった。

含意

仲介手数料だけで成り立っていた収益構造に、原価を伴う事業が加わった。売上原価率は2025年10月期の5.6パーセントから2026年4月期に8.3パーセントへ上がっている。2026年5月18日の取締役会で本体のフィールドマネージャー事業とロジヒーローの営業を買収先へ吸収分割で承継させることを決め、6月11日には8月1日付の"タイミーソリューションズ"への商号変更を公表した。ただしこの区分は2026年4月期に107百万円のセグメント損失を計上している。

いつ何が起きたか8件
当時の取締役5名

当時の取締役(2025年1月株主総会決議)

考察:仲介の限界を認めた買収
考察

考察:仲介の限界を認めた買収

初のM&Aという言葉は、この買収の性格を言い当てていない。タイミーが獲得したのは新しい市場ではなく、自社の仲介では受けきれなかった仕事を引き受ける機能であった。Field Managerを置いた拠点で浸透率が45パーセントまで上がり、事業者から業務をまるごと引き受けてほしいと求められたとき、募集と支払いを仲立ちするだけの会社にその先はない。8年目で初めて他社を買った事実が、仲介だけでは届かない領域の存在を示している。

もっとも、この買収が利益として返るかは、まだ分からない。投じた額は450,837千円、のれんは345,283千円で、7年の定額償却を置いた。2026年4月期の6か月で、新たに立てた"その他"の区分は売上高636百万円に対し107百万円の損失である。同じ期の連結営業利益は3,812百万円だから、全体を揺らす規模ではない。額が小さいぶん失敗しても傷は浅いが、仲介と並ぶ収益源になったと言うにも早い。買った会社に本体のフィールドマネージャー事業を移す組み替えも始まったばかりで、人手不足が続くうちに、原価を抱える事業を採算に乗せられるかどうかで決まる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
数字で見る3表

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図と表

タイミー:売上高と売上原価の推移

売上高(百万円)売上原価率(%)
タイミー:売上高と売上原価の推移
(百万円)売上高売上原価備考
2020年10月期461−損益計算書の開示は第7期から。第4期の売上原価は開示されていない
2021年10月期1,299−
2022年10月期6,217−
2023年10月期16,145672
2024年10月期26,8811,274
2025年10月期34,2891,913連結初年度。被取得企業は貸借対照表のみ連結で、売上原価に寄与していない
2026年4月期21,0061,734決算期変更による6か月の変則決算。売上原価率は8.3%へ上がった
出所:タイミー 有価証券報告書 第4期〜第10期(主要な経営指標等の推移、連結損益計算書、損益計算書)
出所:タイミー 有価証券報告書 第4期〜第10期(主要な経営指標等の推移、連結損益計算書、損益計算書)

タイミー:のれんとタイミーソリューションズ事業の推移

のれん(百万円)
タイミー:のれんとタイミーソリューションズ事業の推移
(百万円)のれんその他区分の売上高その他区分のセグメント損益備考
2025年10月期345−−暫定計上。みなし取得日が期末のため償却額はなく、セグメントも単一だった
2026年4月期321636△107のれん償却額は24百万円。売上高は外部顧客への売上高で、6か月ぶん
出所:タイミー 有価証券報告書 第9期・第10期(連結貸借対照表、セグメント情報等、企業結合等関係)
出所:タイミー 有価証券報告書 第9期・第10期(連結貸借対照表、セグメント情報等、企業結合等関係)

買収の条件

買収の条件
科目概要備考
被取得企業スキマワークス株式会社物流倉庫の人材課題を解決するスタッフィングプラットフォームの開発・運営
取締役会の決議日2025年7月23日・2025年9月16日7月23日に株式の取得、9月16日に株主割当増資の引受を決議
企業結合日2025年8月29日株式取得日。株主割当増資の払込は9月30日、みなし取得日は10月31日
企業結合の法的形式現金を対価とする株式取得及び株主割当増資引受結合後企業の名称に変更はない
取得した議決権比率100%取得企業を決定した根拠は、現金を対価とする株式取得であること
取得原価450,837千円株式譲渡300,837千円と株主割当増資引受149,999千円の合計。全額が現金
取得関連費用22,306千円アドバイザリー費用等
受け入れた資産合計323,283千円流動資産310,120千円、固定資産13,162千円
引き受けた負債合計217,728千円流動負債173,942千円、固定負債43,786千円
発生したのれん345,283千円発生原因は今後の事業展開で期待される将来の超過収益力
のれんの償却方法7年間の定額法第9期の時点では償却期間を算定中とし、第10期の有報で7年と定めた
暫定的な会計処理の確定のれんの変動なし第10期に取得原価の配分が確定し、のれんの金額は動かなかった
取得のための支出254,543千円取得価額450,837千円から受け入れた現金196,294千円を差し引いた額
連結に含めた業績の期間貸借対照表のみみなし取得日が期末のため、第9期に被取得企業の損益は含まれない
業績に与える影響の概算額記載の省略期首に結合したと仮定した影響は重要性が乏しいとして開示されていない
出所:タイミー 有価証券報告書 第9期(2025年10月期)・第10期(2026年4月期)【企業結合等関係】【連結キャッシュ・フロー計算書関係】
出所:タイミー 有価証券報告書 第9期(2025年10月期)・第10期(2026年4月期)【企業結合等関係】【連結キャッシュ・フロー計算書関係】
当時の取締役5名

当時の取締役(2025年1月株主総会決議)

参考文献

参考文献

参考
  • タイミー ニュースリリース 2025年8月6日「スキマワークス株式会社の全株式を取得」
  • タイミー ニュースリリース 2026年6月11日「完全子会社の商号変更に関するお知らせ」
  • タイミー 有価証券報告書【沿革】
  • タイミー 有価証券報告書(2024年10月期)
  • タイミー 有価証券報告書 第9期(2025年10月期・連結)
  • タイミー 有価証券報告書 第10期(2026年4月期・連結)
  • タイミー 有価証券報告書「第9期(2024年11月1日〜2025年10月31日)有価証券報告書」
  • タイミー 有価証券報告書「第10期(2025年11月1日〜2026年4月30日)有価証券報告書」
  • タイミー ニュースリリース「スキマワークス株式会社の全株式を取得」

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