2007年8月、株式会社ビズリーチ(資本金7百万円)が東京都港区に設立された。創業者の南壮一郎氏は当時31歳、モルガン・スタンレー証券の東京支社投資銀行部門に年収約1,000万円で配属された後、2001年にパシフィック・センチュリー・サイバーワークス・ジャパンへ転じ、2004年から2007年にかけて楽天イーグルスの球団創設準備室でプロ野球参入に従事した経歴を持つ。 [1][2][3]
設計の核は、求人を年収1,000万円以上、求職者を年収750万円以上に絞り込み、ヘッドハンターや利用企業から成功報酬を徴収するだけでなく、求職者からも課金して登録者の質を担保する点に置かれた。求人広告型でも人材紹介エージェント型でもない層に新しい市場を切り出す試みで、ハイクラス層に特化することで他社との差別化を狙った。求職者から料金を取る転職サービスは当時の日本では珍しく、無料が当たり前だった利用者の意識を変える必要があった。ただし創業直後の2年間、南壮一郎氏の月給は20万円にとどまり、サービスを世に出すまでの開発期間は資金的にも個人的にも厳しい時期だった。
南壮一郎氏自身がエンジニア経験を持たず、フルタイムのエンジニア採用にも苦戦したため、『草ベンチャー』『大人のインターンシップ』という呼称で副業エンジニアを束ねる方針へ切り替えた。本業を別に持つ技術者が夜や週末に開発へ加わる体制で、人件費を抑えながら開発を進めた。後にCTOとなる竹内真氏も、創業初期は業務委託として開発に参画した一人で、前職でリクナビの開発にJavaで携わった経験を持っていた。こうした布陣のもと、約2カ月の開発期間で2009年4月にBizReachのサービス提供開始にこぎつけた。 [4]
2010年3月時点で、ビズリーチは求職者会員16,132名(年収750万円以上限定)、ヘッドハンターの登録者数292名、求人2,001件(年収1,000万円以上限定)の規模に達した。同月、ジャフコ・スーパーV3共有投資事業有限責任組合から約2.2億円の第三者割当増資を受け、リーマンショック明けの当時としてはまとまった調達となった。資金用途はマーケティングと営業への投資で、2011年4月までに求職者会員7万名という目標を設定したが、実績は4万名にとどまり計画未達のまま2012年5月に本社を東京都港区から渋谷区へ移転した。 [5]
2010年8月、セレクト・アウトレット型ECサイト『LUXA(ルクサ)』を開始した。同年11月には株式会社ルクサを東京都渋谷区に設立してLUXA事業を切り出し、HR領域以外への多角化を試した。会員向けに割引価格で商品やサービスを売るECで、転職サイトとは顧客も収益モデルも異なる事業を社内に抱える試みとなった。村田聡社長の下でLUXAは事業売却時点で従業員200名規模へ拡大し、2015年10月にKDDI株式会社へ売却された。この売却益が2016年以降に拡大したテレビCMの広告原資となり、HRMOS・スタンバイなど新規事業の立ち上げと並行するマーケティング投資の原資を生んだ。 [6][7][8]
2012年4月、後に株式会社ビズリーチ代表取締役社長となる多田洋祐氏が入社し、同月に竹内真氏も業務委託から正社員へ移行した。創業期を支える経営・開発の中核人材が、この時期に正式な体制として固まった。同年5月には本社を東京都港区から渋谷区へ移し、以降の拠点をスタートアップが集まる渋谷に置いた。 [9][10][11]
2014年9月の関西オフィス開設を皮切りに、2015年5月に名古屋オフィス、同年10月に福岡オフィスと地方主要都市への営業拠点を相次いで構えた。2015年5月には米Indeedの台頭を受けて求人検索エンジン『スタンバイ』を立ち上げ、ハイクラス向けのBizReachとは異なる検索型マッチングへ事業領域を広げた。同サービスはバックエンドにScalaとマイクロサービス・アーキテクチャを採用し、当時の先端事例として技術コミュニティで知られた。営業拠点を全国に置き検索型サービスを足したことで、ハイクラス特化から裾野の広いHRプラットフォームへ間口を広げた。 [12][13]
2016年2月の初のテレビCM放映決定と同年3月のYJキャピタル等10社からの約25億円調達は、BizReachの広告投下とスタンバイ・HRMOSの新規事業育成資金を同時に確保する一手であった。同年6月、採用管理クラウド『HRMOS(ハーモス)採用』のサービスを開始した。BizReachが候補者向けの転職サイトであるのに対し、HRMOSは企業の採用担当者向けSaaSであり、両者を組み合わせて企業の採用プロセス全体を支援する構成が固まった。求職者を集めるメディアと、採用業務を担う企業向けSaaSの双方を自社で押さえる設計を、この時期に組み合わせとして固めた。 [14]
HRMOSに続き、2016年8月にB2Bリードジェネレーション・プラットフォーム『BizHint』、同年10月にOB/OG訪問ネットワーク『ビズリーチ・キャンパス』を相次いで開始した。BizReach単体の成功報酬・課金モデルから、企業の採用・人事業務を月額で支える複数のSaaS・サービスへと収益源を分散させる動きで、テレビCMで得た認知と25億円の調達資金をこの多角化に充てた。BizHintは経営者・管理職向けの情報メディア、ビズリーチ・キャンパスは大学生のOB訪問という別々の接点を担い、HR領域内で候補者・企業・大学新卒の各層を一社で押さえる布陣が、この時期に整った。 [15]
2017年11月、法人限定M&Aマッチング『BizReach SUCCEED』(後のM&Aサクシード)を立ち上げ、人材データベースの運営で培ったマッチング技術を、中小企業の事業承継M&Aを売り手と買い手で結ぶ領域へ応用した。HR以外で初めて挑んだ隣接市場で、後年グループの第二の収益源として育てる事業をここから始めた。中小企業の事業承継では後継者難が広がっており、買い手と売り手を結ぶ場の需要があった。同年12月にはビズリーチ・トレーディング株式会社(現株式会社スタンバイ)を東京都渋谷区に設立し、求人検索エンジンのスタンバイ事業を子会社として切り出した。 [16][17]
2018年10月には即戦力人材転職支援サービス『BINARY』(現BINAR)を、2019年1月には『HRMOSタレントマネジメント』を開始し、転職支援と組織人事のラインナップを足した。採用後の人材活用までを対象に加えることで、入社前のマッチングと入社後の人事管理を一連のサービス群でつなぐ構えを取った。さらに2019年8月には脆弱性管理クラウド『yamory』を開始してセキュリティ領域へ参入し、HRのマッチングとSaaS運営で蓄えた開発体制と顧客基盤を、人事の周辺から情報セキュリティまで広げる多角化が続いた。 [18][19]
2019年は外部企業の買収による事業承継も重ねた。同年9月にCloud Solutions株式会社の全株式を取得して採用管理システム『リクログ』を、同年11月にトラボックス株式会社の全株式を取得して物流DXプラットフォーム『トラボックス』を承継し、HRと無関係の物流分野にも足を伸ばした。同月、子会社の株式会社スタンバイはZホールディングス(現LINEヤフー)を引受先とする第三者割当増資を実施し、同年12月にスタンバイ事業を同社へ吸収分割で移して、検索エンジン領域では外部資本との連携に踏み切った。 [20][21]
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|---|---|---|---|---|
| 2007〜2014年創業期 ── ビズリーチによる即戦力人材市場の開拓 | 南壮一郎 | ビズリーチ[資本金7百万円]を設立 | ★★ | |
| 南壮一郎 | “即戦力人材と企業をつなぐ転職サイト”『BizReach(ビズリーチ)』を開始 | ★ | ||
| 南壮一郎 | セレクト・アウトレット型ECサイト『LUXA(ルクサ)』を開始 | ★ | ||
| 南壮一郎 | “挑戦する20代の転職サイト”『キャリアトレック(キャリトレ)』を開始 | ★ | ||
| 2014〜2019年サービス拡張期 ── HRMOS とスタンバイによる隣接市場参入 | 南壮一郎 | 求人検索エンジン『スタンバイ』を開始 | ★ | |
| 南壮一郎 | EC「LUXA」の分社と、株式会社ルクサのKDDIへの売却 ビズリーチは2010年8月にセレクト・アウトレット型ECサイト『LUXA(ルクサ)』を始め、同年11月に株式会社ルクサとして分社した。人材領域の外へ広げたこの事業を、2015年4月にKDDIが株式取得で合意し、同年10月に売却した。株式の譲渡でビズリーチには特別利益が入り、その資金がHR本業のマーケティング投資に回った。 詳細を読む | ★★★ | ||
| 南壮一郎 | HRMOSの投入とSaaS群・隣接市場への多角化による成功報酬型からの収益源分散 2016年、ビジョナル(当時のビズリーチ)は採用管理クラウド『HRMOS』を投入し、成功報酬型の転職サイトBizReachに月額SaaSを重ねる多角化へ進んだ。同年3月にYJキャピタルなど10社から約37.3億円を調達し、以降HRMOS群・M&A・セキュリティ・物流へ事業を広げ、単一収益源への依存を薄める収益構造を組んでいった。 詳細を読む | ★★★ | ||
| 南壮一郎 | “B2Bリードジェネレーション・プラットフォーム”『BizHint(ビズヒント)』を開始 | ★ | ||
| 南壮一郎 | “OB/OG訪問ネットワークサービス”『ビズリーチ・キャンパス』を開始 | ★ | ||
| 南壮一郎 | “即戦力人材の転職支援サービス”『BINARY(現:BINAR(バイナ―))』を開始 | ★ | ||
| 南壮一郎 | “人財活用システム”『HRMOS(ハーモス)』を開始 | ★ | ||
| 南壮一郎 | “脆弱性管理クラウド”『yamory(ヤモリー)』を開始 | ★ | ||
| 2020〜2026年上場期 ── 持株会社化とBizReach依存からの脱却という課題 | 南壮一郎 | ビジョナルを設立 | ★★ | |
| 南壮一郎 | 持株会社ビジョナルの設立と東証マザーズへの上場 2019年12月に公表し2020年2月3日を期日とする株式移転で、株式会社ビズリーチは持株会社ビジョナルを新設し、自らはその完全子会社となった。新規事業はビジョナル・インキュベーションとして分社した。2021年4月22日には、この持株会社ビジョナルが東京証券取引所マザーズ市場へ新規上場した。 詳細を読む | ★★★ | ||
| 南壮一郎 | “クラウドサービスのセキュリティ信用評価”『Assured(アシュアード)』を開始 | ★ | ||
| 南壮一郎 | “勤怠管理システム”『HRMOS勤怠』を開始 | ★ | ||
| 南壮一郎 | “挑戦する20代の転職サイト”『キャリアトレック(キャリトレ)』のサービス提供終了 | ★ | ||
| 南壮一郎 | ビズヒントの全株式をスマートキャンプへ譲渡 | ★ | ||
| 南壮一郎 | ビズリーチがInterRaceの株式73.3%を取得し子会社化 | ★ |
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事実根拠:出所(ビジョナル)