リクルートHD 米Indeedを買収 米国企業の取り込みによる海外への足がかり

更新:

時期 2012年9月
当時の社長 峰岸真澄
論点 グローバルHRテックへの転換
何をなぜ決めたか
概要

2012年9月25日、リクルートは米国Indeed, Inc.の全株式の取得で同社と合意したと発表し、同年10月に子会社化した。100%子会社の米国法人をIndeedへ吸収させ、Indeed社の株主へは現金を支払う現金交付合併の方式を採った。取得対価の金額は公表していない。

背景

人材紹介は2007年からRGF HR Agentで中国・香港・シンガポール・インド・ベトナムへ、人材派遣は2010年にThe CSI Companies、2011年にSTAFFMARK HOLDINGSとAdvantage Resourcing 2社を取得して北米・欧州へ広げていた。残る主力事業がオンラインHRで、「No1グローバル総合人材サービス企業」を掲げてその獲得を進めていた。

内容

選んだのは、他サイトから求人情報を抽出して自動生成するアグリゲート型の検索エンジンを持つ2004年設立の会社であった。50カ国以上・26言語に対応し、月間約8千万人が訪れて15億件の求人検索を生む技術力とユーザー基盤に、リクルートが長年蓄えたメディア運営の知見を掛け合わせる構想を掲げた。

含意

買収から5年半後の2018年3月期、Indeedは「HRテクノロジー」という独立した報告セグメントとなり、売上収益2,132億円を計上した。2018年6月にGlassdoorが加わり、2025年3月期の同事業は売上収益1兆1,242億円・セグメント利益4,041億円と、連結売上の3割・セグメント利益の6割を占める主力事業に育っている。

いつ何が起きたか 10件
筆者の見解
筆者の見解

求人を持たない会社を買収するということ

手に入れたのは求人広告の在庫ではなく、他社のサイトに散らばる求人を集めて並べ替える仕組みであった、と思われる。それまでの海外展開は、人材紹介のRGF、人材派遣のCSIやSTAFFMARKと、いずれも人を介して収益を積み上げる事業の買収だった。Indeedはその型から外れ、自社では求人を持たないまま月間8千万人を集める。掲げた「No1グローバル総合人材サービス企業」の最後の空白がオンラインHRであったことを踏まえれば、その空白を人手ではなく技術で埋める判断だったといえる。

もっとも、この選択が連結の数字に現れるまでには時間がかかった。Indeedが独立した報告セグメントとして姿を見せるのは買収から5年半後の2018年3月期で、それまでは人材メディア事業の一領域として、2年続けて8割を超える増収率を示す注記のなかにあった。IFRSへ移った2016年4月1日の時点でも、Indeedに配分されたのれんは889億円で、連結ののれん1,692億円の半分ほどにとどまる。それが2025年3月期にはセグメント利益の6割を生むまでになった。この判断の当否は買った値段ではなく、買ったあとに何をどれだけ載せたかで決まったのだろう。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

業績の推移
買収の条件

買収の条件

科目 概要 備考
被取得企業 Indeed, Inc. 2004年設立。アグリゲート型求人専門検索エンジンの運営。決算期は12月31日
本社所在地 米国コネチカット州スタンフォード 177 Broad Street。有価証券報告書の関係会社の状況では米国デラウェア州
合意の公表 2012年9月25日 完了は2012年10月初旬を予定と発表した
取得の法的形式 現金交付合併 100%子会社の米国法人とIndeedを、Indeedを存続会社として合併させた
株式取得の時期 2012年10月 沿革は「人材メディア事業を海外展開するため」株式を取得したと記す
取得した議決権比率 100% 第55期以降の関係会社の状況でも100.0%で変わっていない
取得価額 公表資料に記載がない 発表資料にも有価証券報告書にも取得対価の金額の記載はない
被取得企業の資本金 22,182千米ドル 発表時点。第55期の関係会社の状況では10米ドルと記載されている
のれん 88,920百万円 IFRS移行日2016年4月1日のIndeedに関連するのれんの帳簿価額
買収時のIndeedの利用者 月間約8千万人 求人検索は月15億件、50カ国以上・26言語に対応(いずれもIndeed社調べ)
結合の理由 グローバルプラットフォームの獲得 欧米で急成長するIndeedが当社グローバルプラットフォームになりうると判断
買収者の売上高 3,720億57百万円 2012年3月期・単体。従業員数5,974名(2012年4月1日現在)
同月の持株会社移行 2012年10月 会社分割で持株会社体制へ移り、社名をリクルートホールディングスへ変更

出所:リクルート ニュースリリース 2012年9月25日「米国Indeed Inc.の株式取得(完全子会社化)に関するお知らせ」 / リクルートホールディングス 有価証券報告書 第55期(2015年3月期)【沿革】【関係会社の状況】・第58期(2018年3月期)【のれん及び無形資産】

HRテクノロジー事業ののれんの推移

リクルートHD:HRテクノロジー事業ののれんの推移

(百万円) HRテクノロジー事業ののれん連結のれん合計 備考
2016年3月期 88,920169,264 IFRS移行日2016年4月1日の帳簿価額。日本基準の連結のれんは213,051百万円
2017年3月期 88,533303,273 Recruit Global Staffing社の取得で連結ののれんが141,892増えた
2018年3月期 85,411312,944 IFRSの初度適用。この時点のHRテクノロジー事業はIndeedだけで構成される
2019年3月期 190,296410,651 2018年6月にGlassdoorを取得し、この事業ののれんが倍増した
2020年3月期 196,400383,163 セグメント別のれんは10億円単位の開示で、196.4十億円と記載
2021年3月期 201,500399,361 10億円単位の開示で201.5十億円
2022年3月期 227,000436,017 10億円単位の開示で227.0十億円
2023年3月期 246,900462,977 10億円単位の開示で246.9十億円
2024年3月期 280,300510,638 10億円単位の開示で280.3十億円
2025年3月期 277,100508,133 10億円単位の開示で277.1十億円。減損損失は計上していない
のれんの帳簿価額
HRテクノロジー事業ののれん(百万円)それ以外ののれん(百万円)

出所:リクルートホールディングス 有価証券報告書 第58期・第59期(2018年3月期・2019年3月期)【のれん及び無形資産】 / リクルートホールディングス 有価証券報告書 第60期〜第65期(2020年3月期〜2025年3月期)【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】各セグメントに帰属する地域別のれん金額

HRテクノロジー事業の売上収益とセグメント利益

リクルートHD:HRテクノロジー事業の売上収益とセグメント利益

(百万円) 売上収益セグメント利益 備考
2017年3月期 129,25416,704 区分新設時の比較情報。日本基準では海外人材募集領域の売上高1,202億円
2018年3月期 213,26030,621 HRテクノロジーを報告セグメントとして新設した期
2019年3月期 320,77147,449 2018年6月からGlassdoorが加わる
2020年3月期 417,73771,263
2021年3月期 417,83166,786 新型コロナウイルス感染症で企業クライアントの採用活動が減退した
2022年3月期 855,688323,345 規制緩和で採用需要が戻る一方、求職者の活動が限られ採用競争が生じた
2023年3月期 1,112,237342,309
2024年3月期 1,009,421344,390
2025年3月期 1,124,281404,113 連結売上収益3,557,478の31.6%、連結セグメント利益の59.5%にあたる
売上収益とセグメント利益率
売上収益(百万円)セグメント利益率(%)

出所:リクルートホールディングス 有価証券報告書 第58期〜第65期(2018年3月期〜2025年3月期)【事業セグメント】外部顧客からの売上収益・セグメント利益 / リクルートホールディングス 有価証券報告書 第55期〜第57期(2015年3月期〜2017年3月期)【経営成績等の状況の概要】海外人材募集領域

同じ問いに直面した会社
参考文献
出典・参考
  • リクルート ニュースリリース「米国Indeed Inc.の株式取得(完全子会社化)に関するお知らせ」
  • Indeed, Inc. プレスリリース「Indeed to be Acquired by Recruit(2012年9月25日)」
  • リクルートホールディングス 有価証券報告書「第55期(2015年3月期)【沿革】【関係会社の状況】」
  • リクルートホールディングス 有価証券報告書「第58期(2018年3月期)【のれん及び無形資産】【事業セグメント】」
  • リクルートホールディングス 有価証券報告書「第59期(2019年3月期)【沿革】【のれん及び無形資産】」
  • リクルートホールディングス 有価証券報告書「第60期〜第65期(2020年3月期〜2025年3月期)【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】」
  • リクルートホールディングス 有価証券報告書「第62期(2022年3月期)【事業等のリスク】」

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