持株会社化とマザーズ上場(2020年・ビジョナルの決断)

更新:
論点単一事業依存のまま上場に臨むか
ビジョナル:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
新設した持株会社の下への事業会社の再配置と株式公開

何をなぜ決めたか:新設した持株会社の下への事業会社の再配置と株式公開

概要

株式会社ビズリーチは単独株式移転により、2020年2月3日に完全親会社ビジョナルを設立した。ビズリーチ自身はその完全子会社となり、同月には新設分割でビジョナル・インキュベーションを設けて、ビズリーチ・サクシード、BizHint、yamoryの3事業をそこへ移した。

設立時のビジョナルの発行済株式は普通株式232,353株とA種優先株式53,301株、資本金は100百万円、資本準備金は4,438百万円である。東京証券取引所マザーズへ株式を上場したのは、それから1年2か月後の2021年4月22日であった。

背景

2020年7月期の連結売上高25,879百万円のうち、HR Techが24,914百万円を占めた。もう一方のIncubationは売上高892百万円に対して868百万円のセグメント損失で、報告セグメントの利益2,474百万円はHR Techの3,343百万円が支えていた。会社の名がそのまま主力サービスの名である構造のもとで、次の収益源をどう育てるかが課題となっていた。

内容

持株会社を設立したうえで、上場までの1年2か月を資本の整理に充てた。2020年12月6日、取得条項に基づく取得請求権の行使でA種優先株式53,301株をすべて自己株式として取得し、対価に普通株式53,301株を交付したうえで同日すべて消却した。翌12月7日には普通株式1株を100株に分割し、発行済株式総数は325,654株から32,565,400株になった。

上場直前の2021年4月21日には公募で普通株式2,127,700株を発行している。発行価格は5,000円、引受価額は4,700円、資本組入額は2,350円で、資本金と資本準備金がそれぞれ5,000百万円増加した。

含意

上場した年度の財務活動によるキャッシュ・フローは12,234百万円のプラスとなり、現金及び現金同等物の期末残高は9,114百万円から25,630百万円へ増加した。発行済株式総数は5月18日の第三者割当増資を経て35,858,000株となっている。

持株会社の下では事業の出し入れが続いた。2021年11月にビジョナル・インキュベーションは株式会社M&Aサクシードへ改称し、BizHintとyamoryはさらに新設分割で切り出された。2023年12月には株式会社ビズヒントの全株式をスマートキャンプへ譲渡している。

いつ何が起きたか8件
考察:名を外すという先行投資
考察

考察:名を外すという先行投資

上場のために持株会社を設立したのではなく、持株会社を設立してから上場した。この順序にこそ判断の芯があると思われる。株式移転から上場まで1年2か月が空き、その間に行われたのはA種優先株式の消却と100分割という、上場に必要な事務でしかない。会社の姿を組み替える作業は先に済んでいた。転職サイトの名をそのまま冠した会社が、投資家に見せる顔だけは別の名にしたということである。

もっとも、形を先に整えても、中身がすぐに伴ったわけではない。持株会社化から5年後の2025年7月期でも、HR Techが売上76,962百万円・利益24,739百万円を稼ぐ一方、Incubationは売上3,139百万円で1,691百万円の損失にとどまる。分社したビズヒントのように、撤退した事業もあった。構造を先に用意する判断は、二本目の柱が立つまでの時間を会社に強いる。ビジョナルという社名に実態が追いつくかは、まだ確かめられていないといえる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
数字で見る4表

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図と表

ビジョナル:報告セグメント別の売上高とセグメント利益

HR Tech売上高(百万円)Incubation売上高(百万円)
ビジョナル:報告セグメント別の売上高とセグメント利益
(百万円)HR Tech売上高HR Techセグメント利益Incubation売上高Incubationセグメント損益備考
2020年7月期24,9143,343892△868持株会社を設立し2区分の開示が始まった期。売上高は外部顧客への売上高
2021年7月期27,0524,0001,485△863東証マザーズへ上場した期。セグメント利益の合計3,137に調整額△768を加えて営業利益2,368
2022年7月期41,79110,6312,002△1,649M&Aサクシードへの改称とBizHint・yamoryの再分割を行った期
2023年7月期53,68515,7012,460△1,401
2024年7月期63,79120,0622,219△1,020ビズヒントの全株式をスマートキャンプへ譲渡した期
2025年7月期76,96224,7393,139△1,691HR Techの従業員は1,802名、Incubationは257名
出所:ビジョナル 有価証券報告書 第2〜6期(2021年7月期〜2025年7月期)【セグメント情報】
出所:ビジョナル 有価証券報告書 第2〜6期(2021年7月期〜2025年7月期)【セグメント情報】

ビジョナル:連結の売上高と営業利益

売上高(百万円)営業利益率(%)
ビジョナル:連結の売上高と営業利益
(百万円)売上高営業利益備考
2019年7月期21,492−株式会社ビズリーチの連結。ビジョナル設立前で、営業利益は開示されていない
2020年7月期25,8792,1862020年2月3日に株式移転でビジョナルを設立した期。経常利益は2,254
2021年7月期28,6982,368上場した期。財務活動によるキャッシュ・フローは12,234のプラス
2022年7月期43,9548,320第4期の有価証券報告書では、販管費の組替により前期の営業利益を8,282へ修正
2023年7月期56,27313,225
2024年7月期66,14617,837
2025年7月期80,16121,442
出所:ビジョナル 有価証券報告書 第2〜6期(2021年7月期〜2025年7月期)【主要な経営指標等の推移】・連結損益計算書
出所:ビジョナル 有価証券報告書 第2〜6期(2021年7月期〜2025年7月期)【主要な経営指標等の推移】・連結損益計算書

ビジョナル:従業員数の推移

連結従業員数(名)
ビジョナル:従業員数の推移
(名)連結従業員数臨時雇用者数備考
2019年7月期1,112207株式会社ビズリーチの連結。ビジョナル設立前の最後の通期
2020年7月期1,186240持株会社を設立した期
2021年7月期1,271195上場した期。提出会社の従業員は30名
2022年7月期1,528277提出会社の従業員は130名へ増加
2023年7月期1,550348
2024年7月期1,705432
2025年7月期2,175565
出所:ビジョナル 有価証券報告書 第2〜6期(2021年7月期〜2025年7月期)【主要な経営指標等の推移】【従業員の状況】
出所:ビジョナル 有価証券報告書 第2〜6期(2021年7月期〜2025年7月期)【主要な経営指標等の推移】【従業員の状況】

持株会社化と上場の条件

持株会社化と上場の条件
科目概要備考
移行の法的形式単独株式移転ビズリーチが単独で株式移転を行い、ビジョナルがその完全親会社となった
持株会社の設立日2020年2月3日前連結会計年度の連結財務諸表は、ビズリーチの連結財務諸表を引き継いで作成している
完全子会社株式会社ビズリーチ2007年8月に資本金7百万円で東京都港区に設立。議決権の所有割合は100.0%
株式移転で発行した株式普通株式232,353株・A種優先株式53,301株設立時の発行済株式総数は合計285,654株
設立時の資本金100百万円
設立時の資本準備金4,438百万円
承継した新株予約権第1回から第23回ビズリーチが発行した新株予約権に係る義務を、設立日の2020年2月3日に承継した
同時に設立した分割会社ビジョナル・インキュベーション株式会社新設分割により東京都渋谷区に設立。資本金10百万円、議決権の所有割合は100.0%
新設分割で承継した事業ビズリーチ・サクシード/BizHint/yamory事業承継M&A、B2Bリードジェネレーション、脆弱性管理クラウドの3事業
A種優先株式の取得2020年12月6日に全53,301株を自己株式として取得取得条項に基づく取得請求権の行使により、対価として普通株式53,301株を交付した
A種優先株式の消却2020年12月6日付で全53,301株を消却2020年11月20日の取締役会決議に基づき、会社法第178条により消却した
株式分割2020年12月7日付で普通株式1株を100株に分割発行済株式総数は325,654株から32,565,400株へ増加した
上場日と市場2021年4月22日 東京証券取引所マザーズ有価証券届出書は2021年3月17日に関東財務局長へ提出した
公募2021年4月21日に普通株式2,127,700株を発行ブックビルディング方式による有償一般募集。発行価格5,000円、引受価額4,700円、資本組入額2,350円
公募による資本の増加資本金5,000百万円・資本準備金5,000百万円資本金残高は5,436百万円、資本準備金残高は9,775百万円となった
第三者割当増資2021年5月18日に普通株式266,900株を発行オーバーアロットメントによる売出しに関連した野村證券への割当。資本金・資本準備金は各627百万円増加
上場後の発行済株式総数35,858,000株2021年7月期末。設立時の285,654株から株式分割と募集を経て増加した
出所:ビジョナル 有価証券報告書 第2期(2021年7月期)【沿革】【新株予約権等の状況】【発行済株式総数、資本金等の推移】【関係会社の状況】
出所:ビジョナル 有価証券報告書 第2期(2021年7月期)【沿革】【新株予約権等の状況】【発行済株式総数、資本金等の推移】【関係会社の状況】
参考文献

参考文献

参考
  • ビズリーチ ニュースリリース「株式会社ビズリーチ、グループ経営体制へ移行 新グループ名「Visional(ビジョナル)」」
  • ビジョナル 有価証券届出書「有償一般募集増資及び株式売出し(2021年3月17日 関東財務局長へ提出)」
  • ビジョナル 有価証券報告書「第2期(2021年7月期)【沿革】【発行済株式総数、資本金等の推移】」
  • ビジョナル 有価証券報告書「第2期(2021年7月期)連結株主資本等変動計算書 注記・【セグメント情報】」
  • ビジョナル 有価証券報告書「第6期(2025年7月期)【沿革】【関係会社の状況】」

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