現在のオープンアップグループの法人格は、1997年8月に三栄商事氏[1]が『障害者の雇用の促進等に関する法律』[引用元]に基づく特例子会社として神奈川県相模原市に設立した共生産業[2]に始まる。共生産業は障害者雇用の枠組みで設立された企業であり、人材派遣でも技術者派遣でもなく、また独立した事業意思を持つ会社でもなかった。三栄商事氏が法定雇用率を満たすために設けた組織で、対外的な事業展開や上場を視野に入れた性格ではない。1990年代後半の日本企業は障害者雇用納付金制度の運用強化を受けて特例子会社の新設が続き、共生産業もその文脈で生まれた。
2004年11月、投資ファンドの㈱アミューズキャピタルが共生産業の全株式を取得し、商号[3]を㈱トラストワークスサンエーに変更した。三栄商事氏から切り離された法人は、特例子会社という社会的役割と独立企業としての商業性のあいだで方向を定め直す必要があった。投資ファンドが取得した狙いは、上場可能な事業をこの法人格に乗せて出口を取ることで、ファンドの一般的な投資手法に沿う動きだった。アミューズキャピタル傘下に入った直後の2004年12月、トラストワークスサンエーは特定労働者派遣事業の届出を出し、三栄商事氏から人材サービス関連事業[4]とレストラン・映画館事業の譲渡を受けて事業を開始した。同時に㈱テクノアシスト相模を子会社化し[5]、人材派遣会社としての形を整えた。さらに2005年6月の㈱トラスト・テック買収によって[6]、法人は技術労働者派遣を本業として持つに至った。2008年10月にはトラスト・テックを吸収合併し、商号[7]もトラストワークスから㈱トラスト・テックへ変更した。法人格は共生産業のままで、中身だけが障害者雇用特例子会社から人材派遣会社へ、さらに技術者派遣会社へと入れ替わった経緯になる。法人の連続性と事業の連続性が一致しない構造が、後の経営統合と社名変更を繰り返す経営姿勢の原型として残った。
もう一方の系譜である夢真ホールディングスは、1976年に佐藤義雄氏が設立した㈲佐藤建築設計事務所[8]が前身である。1990年10月に株式会社へ改組して商号を㈱夢真に変え[9]、1996年10月には㈱貢昌を形式上の存続会社とする合併でも社名を維持した[10]。事業は建築設計と建設施工管理請負の現場派遣で、ゼネコン各社の現場に施工管理技術者を派遣する人材ビジネスとして拡大した。ゼネコン側の正社員採用が抑えられた1990年代後半は施工管理技術者の派遣需要が伸び、夢真はその追い風で受注を積み上げた。2003年9月、㈱夢真は㈱大阪証券取引所ニッポン・ニューマーケット[11]『ヘラクレス』に株式上場した。創業から二度の合併と一度の社名変更を経た上場で、建設業界における人材派遣企業の上場としては比較的早い時期にあたる。
上場後の夢真は、得た資金を傘下子会社の取得と新規事業の立ち上げに振り向ける戦略を採った。2005年4月には純粋持株会社へ移行し、商号を㈱夢真[12]ホールディングスに変え、施工図作図事業と建設施工管理請負事業を新設の㈱夢真に承継した。持株会社化は当時の上場企業のあいだで広がっていた経営手法で、夢真ホールディングスも子会社群を抱える経営の自由度を高める狙いで採用した。2005年11月の㈱ブレイントラスト買収を皮切りに[13]、夢真ホールディングスは買収による事業領域の拡張を継続した。ブレイントラストは2006年2月に㈱夢真コミュニケーションズへ商号変更し[14]、2007年5月には㈱夢真テクノスタッフサービスと合併[15]する社内再編が続いた。子会社の買収・社名変更・吸収合併・分割を繰り返すなかで、夢真ホールディングスの事業構成は建設施工管理派遣を中核としつつ多角化を進める形態へ変化した。2007年10月には子会社である㈱夢真を吸収合併し[16]、翌2008年10月には㈱夢真コミュニケーションズも吸収合併[17]して、持株会社が事業会社化と再分離を繰り返す経営手法を採った。
2005年までに、後にオープンアップグループとなる二つの系譜は、いずれも法人格と事業の入れ替えを頻繁に伴う形で人材派遣・技術者派遣の事業を組み立てていた。共生産業から始まる系譜は障害者雇用特例子会社の法人格に技術者派遣を乗せた経緯を持ち、夢真ホールディングス側の系譜は建築設計事務所から建設施工管理請負と持株会社体制に組み替えた経緯を持つ。両系譜とも、法人格を維持したまま事業の中身を入れ替える経営手法と、子会社の買収・分割・再編を頻繁に繰り返す手法を共通の特徴として持ち、これが2021年の経営統合とその後の事業再編の前提として両社に定着していた。
トラスト・テック(共生産業の系譜)は2007年6月にジャスダック証券取引所へ上場した[18]。1997年の共生産業設立から数えれば10年、2005年6月のトラスト・テック買収[19]から技術者派遣会社として歩み始めて2年での上場である。上場後はジャスダック・大阪証券取引所合併に伴う2010年4月の大証JASDAQ移行[20]、2013年8月の東証JASDAQスタンダード[21]経由で東証二部、同年12月の東証一部指定と[22]、市場区分を順次引き上げた。連結売上高はFY11の155億円からFY13の176億円、FY15の301億円へと拡大し、技術者派遣の需要拡大と同社の買収戦略が業績を押し上げた。
2015年以降、トラスト・テックは買収による事業領域の拡張を加速させた。2015年7月の㈱フリーダム子会社化[23]、同年10月の㈱トラィアル子会社化[24]、2016年8月のMTrec Limited(英国)子会社化[25]、2016年9月のPT.TRUST TECH[26] ENGINEERING SERVICE INDONESIA設立、2017年3月の㈱フュージョンアイ(IT派遣、後の㈱オープンアップITエンジニア)子会社化と[27]、国内・海外を含めた買収を矢継ぎ早に進めた。買収先は技術者派遣・人材派遣の有力企業で、それぞれが持つ顧客基盤と技術者プールをトラスト・テック傘下に取り込む手法だった。FY16の連結売上高は430億円と前期の1.4倍に達し、買収の業績寄与が数字に表れた。2017年12月にはイギリスの人材派遣会社1998 Holdings Limited(現GAP PERSONNEL INVESTMENTS LIMITED)と子会社5社を取得し[28]、欧州市場への進出を加速した。翌2018年8月にはGap Personnel Holdings Limitedを通じて英国の人材派遣会社Quattro Group Holdings Limitedを子会社化し[29]、欧州での施工体制を厚くした。2019年1月にはベトナムの大手人材派遣Le[30]&Associatesを傘下に持つL&A INVESTMENT CORPORATIONの株式を取得し、東南アジアにも事業を広げた。FY17の連結売上高は654億円と前期から5割増となり、海外領域は売上220億円を占めるまでに成長した。
ところが海外領域は規模を伸ばしたものの、収益面では伸び悩んだ。FY17の海外領域は売上220億円・営業損失1億円、FY18は売上312[31]億円・営業利益2億円と低水準にとどまった。投じた資本に対して利益が薄く、買収先の運営管理にも課題が残った。一方で技術系領域(後の機電・IT領域)は安定的に伸び、FY17の売上336億円・営業利益40億円、FY18の売上404億円・営業利益50億円と[32]、グループの収益柱となった。買収による規模拡張が利益拡大に直結する領域と直結しない領域の差が、この時期に表面化した。
2020年1月、㈱トラスト・テックは商号[33]を㈱ビーネックスグループに変え、持株会社体制へ移行した。事業を新設の㈱ビーネックステクノロジーズへ吸収分割し[34]、子会社の商号も㈱TTMから㈱ビーネックスパートナーズへ、㈱トラスト・テック・ウィズから㈱ビーネックスウィズへと一斉に変更した。持株会社体制への移行は、買収によって増えた子会社群の経営を整理し、グループ全体での経営判断を機動化する狙いがある。同時にブランド名を『ビーネックス』で統一することで、グループとしての一体感を高める動きでもあった。ビーネックスグループ化と並行して、2019年11月に㈱アクシス・クリエイト、㈱フェイス[35]、㈱アクシスヒューマンデベロップメントを子会社化し、建設領域への参入を加速した。アクシス・クリエイトは建設施工管理技術者派遣を主力とする会社で、ビーネックスグループは技術系領域(製造・IT)と海外領域に加え、建設領域を3本目の柱として組み込む構成を目指した。FY20の事業セグメントは技術系領域から名称を改めた機電・IT領域、海外領域、製造領域、そして新設の建設領域の4本柱体制で開示された。
ところが建設領域の業績は深刻な状況に陥った。FY20の建設領域は売上87億円・営業損失283億円[36]、減損損失294億円を計上し、グループ全体の営業損益も損失252億円となった。FY19までは営業利益47億円を出していた連結業績が、建設領域の減損1件で一気に252億円の損失に転じた。減損の主因は、買収によって積み上がったのれんの収益力評価が想定を下回ったことにある。買収時点で見込んだ建設施工管理派遣の需要拡大と利益率の想定が、実際の事業運営では達成できず、のれんの帳簿価額を引き下げる判断に至った。FY20の連結純利益(親会社の所有者に帰属する当期損失)は271億円の赤字となり[37]、本業の建設領域も営業損失283億円という事業赤字を抱える状況であった。
建設領域の減損294億円という金額は、ビーネックスグループの連結純資産に対しても影響の小さくない規模である。買収戦略を続けるなかで、買収先の収益性が想定を下回った場合の損失処理が経営課題として顕在化した。海外領域もFY18から利益が薄く、欧州・東南アジアでの事業運営に関する経営課題が並行して存在していた。3本柱を志向した事業ポートフォリオは、機電・IT領域の安定収益を建設領域と海外領域の損失が削る構造に陥り、グループ全体の収益性が低下した。買収一辺倒で領域拡張を進めた経営手法が、領域ごとの収益性検証を後追いさせる弱点を抱えていた点も同時に露呈した。
夢真ホールディングスの系譜も、2011年以降に買収による事業拡張を加速した。2011年1月の㈱ユニテックソフト子会社化、同年5[38]月の㈱フルキャストテクノロジー子会社化(同年7月に㈱夢テクノロジーへ商号変更)に始まる。夢テクノロジーは機械・電気系の技術者派遣会社で、夢真ホールディングスの建設施工管理派遣に技術系派遣を組み合わせる構図を作った。2014年10月には夢テクノロジーがユニテックソフトと合併し[39]、機電系派遣事業をひとつの法人にまとめた。2015年から2019年にかけて、夢真ホールディングスはほぼ毎年のペースで子会社設立と買収を重ねた。2015年2月の㈱夢エージェント設立[40]、2016年5月の㈱夢エデュケーション設立、2016年8月の㈱ソーシャルフィンテック(後の㈱夢ソリューションズ)子会社化、2017年12月の連結子会社㈱夢テクノロジーによる㈱クルンテープ子会社化、2018年9月の㈱夢グローバル設立、2019年1月の㈱夢テクノロジー完全子会社化、2019年4月の㈱インフォメーションポート(後の㈱オープンアップシステム)と㈱侍(後の㈱SAMURAI)の子会社化と、買収・新設のペースを上げた。
2019年10月、夢真ホールディングスは純粋持株会社体制へ移行し[41]、建設技術者派遣と付随事業を新設の㈱夢真へ承継した。傘下には建設施工管理派遣の㈱夢真、機電系派遣の㈱夢テクノロジー、ITサービスの㈱インフォメーションポート、教育事業の㈱夢エデュケーション、海外事業の㈱クルンテープ、㈱夢グローバルと、事業領域ごとに分かれた子会社群が並ぶ構成になった。2020年4月には㈱アローインフォメーション子会社化と[42]、買収を継続した。建設技術者派遣を主軸としつつ機電・IT・教育・海外の各領域に子会社を抱える構造で、ビーネックスグループ側の事業構成と相互に補完性を持つ形に整った。
夢真ホールディングスとビーネックスグループは、いずれも技術者派遣を主力とする上場企業で、建設施工管理派遣と機電・IT派遣をそれぞれ厚く持つ点で事業領域に共通性と補完性があった。両社とも持株会社体制で子会社群を抱え、頻繁な買収と社内再編で事業構成を組み替える経営手法を共有していた。2021年4月の経営統合は、両社の事業領域の重なりと補完関係、そして両社が共通して持つ買収・再編志向の経営姿勢のうえで実現した動きである。
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|---|---|---|---|---|
| 1990〜2005年二系統の前史 ── 障害者雇用特例子会社と建設技術者派遣の出発 | 佐藤建築設計事務所を株式会社に改組 | ★ | ||
| 夢真に商号変更 | ★ | |||
| 貢昌(形式上の存続会社)と合併 | ★ | |||
| 夢真に商号変更 | ★ | |||
| 特例子会社の共生産業を設立 | ★ | |||
| 大阪証券取引所 ニッポン・ニューマーケット「ヘラクレス」に株式上場 | ★ | |||
| アミューズキャピタルが共生産業の全株式を取得 | ★ | |||
| 三栄商事から人材サービス関連事業を譲受 | ★ | |||
| テクノアシスト相模を子会社化 | ★ | |||
| 純粋持株会社に移行 | ★ | |||
| 夢真HDに商号変更 | ★ | |||
| 障害者雇用の特例子会社にトラスト・テックを買い、技術者派遣を本業に据える 2005年6月、障害者雇用の特例子会社として設立された法人(当時の商号は株式会社トラストワークスサンエー)が、親会社である投資ファンドの株式会社アミューズキャピタルから株式会社トラスト・テックの全株式を取得し、技術労働者派遣事業を始めた経営判断。 詳細を読む | ★★★ | |||
| 技術労働者派遣事業に参入 | ★★ | |||
| 2006〜2020年買収拡張と海外進出 ── 三本柱形成と建設領域の歪み | 髙木晴人 | ジャスダック証券取引所に株式を上場 | ★ | |
| 小川毅彦 | トラスト・テックを吸収合併 トラストワークスから商号をトラスト・テックへ変更 | ★ | ||
| 小川毅彦 | フルキャストテクノロジーを子会社化 | ★ | ||
| 小川毅彦 | ジャスダック上場から東証二部・一部へ、6年半かけた市場区分の引き上げ 2007年6月にジャスダック証券取引所へ新規上場した株式会社トラスト・テックが、2013年8月22日に東京証券取引所市場第二部へ市場変更し、同年12月3日に市場第一部へ指定された経営判断。単一の年に収まらず、6年半をかけて段階的に進められた。 詳細を読む | ★★★ | ||
| 西田穣 | フリーダムを子会社化 | ★ | ||
| 西田穣 | MTrec Limitedを子会社化 | ★★ | ||
| 西田穣 | PT.TRUST TECH ENGINEERING SERVICE INDONESIAを設立 | ★ | ||
| 西田穣 | 1998 Holdings Limited と子会社5社を子会社化 | ★★ | ||
| 西田穣 | 英国 Quattro Group Holdings Limited を子会社化 | ★ | ||
| 西田穣 | 夢テクノロジーを株式交換により完全子会社化 | ★ | ||
| 西田穣 | インフォメーションポートを子会社化 | ★ | ||
| 西田穣 | 純粋持株会社体制へ移行 建設技術者派遣・付随事業を夢真へ承継 | ★ | ||
| 西田穣 | トラスト・テックがビーネックスグループに商号変更 | ★ | ||
| 西田穣 | 持株会社制へ移行 | ★★ | ||
| 2021〜2025年経営統合と入れ替え ── オープンアップグループ化と機電・IT領域への集約 | 佐藤大央 | 夢真ホールディングスを株式だけで吸収合併し、2年後に両社の名を社名から外す 2021年4月1日、株式会社ビーネックスグループが株式会社夢真ホールディングスを吸収合併し、商号を株式会社夢真ビーネックスグループへ変更した経営判断。2022年6月17日に再度の社名変更を発表し、2023年1月1日から株式会社オープンアップグループとなった。 詳細を読む | ★★★ | |
| 佐藤大央 | 夢真ビーネックスグループに商号変更 | ★ | ||
| 佐藤大央 | ビーネックスパートナーズの全株式を売却 | ★★ | ||
| 佐藤大央 | UTコンストラクションとUTテクノロジーを子会社化 | ★★ | ||
| 佐藤大央 | BeNEXT UK Holdings Limited の全株式を売却 | ★★ |
免責事項およびポリシー
事実根拠:出所(オープンアップグループ)