東急リバブル等三社を非公開化(2013年・東急不動産ホールディングスの決断)

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論点 グループ経営体制の再編と資本の集約
売上高(億円)経常利益率(%)
持株会社体制への移行と、東急コミュニティーを含む三社の一斉上場廃止

持株会社体制への移行と、東急コミュニティーを含む三社の一斉上場廃止

概要

2013年10月1日、東急不動産は東急コミュニティー・東急リバブルとともに共同株式移転で完全親会社の東急不動産ホールディングスを設立し、開発・管理・仲介の上場三社を同時に非公開化して一つの持株会社の傘下に統合した。金指潔社長が主導した、グループの資本と意思決定を集約する経営判断であった。

背景

東急不動産は東急コミュニティーと東急リバブルを子会社に持ちながら、三社がいずれも東証一部に上場する親子上場の形をとっていた。2011年11月に策定した中期経営計画(2011年度〜2013年度)でグループ経営基盤の強化を掲げ、将来の事業環境変化を見据えて検討を進めた結果、経営の機動性と効率性を高めるには持株会社体制への移行が最適との判断に至った。

内容

2013年5月10日に三社の取締役会が株式移転計画を決議し、6月の各社の定時株主総会で承認を得た。移転比率は東急不動産1株に持株会社1株、東急コミュニティー1株に4.77株、東急リバブル1株に2.11株で、交付した株式数は700,560,974株にのぼる。三社は9月26日に東証一部の上場を廃止し、10月1日に東急不動産ホールディングスが発足・上場して金指潔氏が初代社長に就任した。

含意

会計処理は共通支配下の取引等のうち少数株主との取引にあたり、取得原価82,076百万円に対して46,934百万円ののれんが生じ、20年の均等償却となった。子会社二社の少数株主持分35,206百万円が消え、資本剰余金は84,141百万円増えている。連結の事業範囲は変わらず、動いたのは資本の構成であった。開発・管理・仲介を一つの資本に集約した体制が、その後の渋谷への集中投資と非中核事業の整理を打つ土台になる。

いつ何が起きたか 9件
筆者の見解 上場をやめて資本を一つにするということ
筆者の見解

上場をやめて資本を一つにするということ

この決断の核心は、上場していた三社を一つの資本のもとに統合した点にある。東急コミュニティーと東急リバブルは東急不動産の子会社でありながら市場で別々に値付けされ、その利益のうち少数株主に帰属する部分は親会社の手の届かないところにあった。株式移転はその少数株主持分35,206百万円を株主資本へ振り替える取引であり、事業そのものは何ひとつ動いていない。変わったのは、誰がその利益を受け取るかという配分だっただろう。

もっとも、持株会社という体制それ自体が成長を生むわけではない。統合した資本をどこへ振り向け、どの事業を残しどれを手放すかという中身の判断があって初めて、統合は成果に結びつく。実際、東急不動産ホールディングスがその後に進めた渋谷への集中投資や非中核事業の一斉譲渡こそが、持株会社化の意味を事後的に埋めていった。枠組みを作ることと、その枠組みで何を選ぶことは別であり、2013年の再編は前者にあたる。その意味は後年の選択と集中によって測られたといえる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

数字で見る 3表
共同株式移転の条件

共同株式移転の条件

科目 概要 備考
企業結合の法的形式 共同株式移転による持株会社設立 東急不動産・東急コミュニティー・東急リバブルを株式移転完全子会社とする
株式移転計画の決議 2013年5月10日 承認は東急コミュニティー6月21日、東急リバブル6月24日、東急不動産6月26日の各定時株主総会
企業結合日 2013年10月1日 三社の上場廃止は9月26日、持株会社の設立登記と上場はいずれも10月1日
株式移転比率 東急不動産1.00/東急コミュニティー4.77/東急リバブル2.11 複数のフィナンシャル・アドバイザーの算定書に基づき当事者間で協議して決定
交付した株式数 700,560,974株 東急不動産1株に1株、東急コミュニティー1株に4.77株、東急リバブル1株に2.11株を割当て
取得の対価 81,711百万円 企業結合日に交付した普通株式の時価。取得に直接要したアドバイザリー費用等は365百万円
取得原価 82,076百万円 交付株式の時価81,711百万円とアドバイザリー費用等365百万円の合計
会計処理 共通支配下の取引等(少数株主との取引) 企業結合に関する会計基準と企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針に基づく
のれん 46,934百万円 主として期待される将来の超過収益力から発生。20年間にわたる均等償却
少数株主持分の減少 35,206百万円 同時に資本金2,448百万円、資本剰余金84,141百万円が増加し、自己株式4,814百万円を計上
持株会社の資本金 60,000百万円 本店は東京都渋谷区道玄坂。代表取締役会長に植木正威氏、代表取締役社長に金指潔氏
移行の目的 経営の機動性・効率性の向上 東急不動産が2011年11月に策定した中期経営計画で掲げたグループ経営基盤の強化の一環
資金調達の一元化 2014年3月20日 東急不動産を分割会社、持株会社を承継会社とする会社分割で社債700億円を承継

出所:東急不動産ホールディングス 有価証券報告書 第1期(2014年3月期)【企業結合等関係】

のれんと総資産の推移

東急不動産ホールディングス:のれんと総資産の推移

(百万円) のれん総資産 備考
2009年3月期 −1,035,731 持株会社設立前。東急不動産の連結
2010年3月期 −1,055,364
2011年3月期 −1,161,419
2012年3月期 −1,744,774
2013年3月期 −1,718,403 持株会社設立の直前期。東急不動産の連結
2014年3月期 82,8661,789,822 株式移転でのれん46,934が発生。東急ハンズの完全子会社化でも1,417を計上
2015年3月期 79,9301,973,801
2016年3月期 75,8731,984,382
2017年3月期 87,9752,067,152
2018年3月期 82,5532,176,761
2019年3月期 77,1312,405,249

出所:東急不動産ホールディングス 有価証券報告書 第1〜6期(連結貸借対照表) / 東急不動産 有価証券報告書(連結貸借対照表)

営業収益と利益の推移

東急不動産ホールディングス:営業収益と利益の推移

(百万円) 営業収益経常利益当期純利益 備考
2009年3月期 574,36127,67410,192 持株会社設立前。東急不動産の連結
2010年3月期 552,06728,17411,058
2011年3月期 571,44354,91611,597
2012年3月期 556,84134,86634,200
2013年3月期 595,85639,90622,146
2014年3月期 714,06750,58323,712 連結の範囲は変わらず、1,182億円の増収は分譲と請負工事の伸びによる
2015年3月期 773,14951,67525,230
2016年3月期 815,47956,37928,718
2017年3月期 808,50363,63131,518
2018年3月期 866,12668,69135,185
2019年3月期 901,88470,74437,459
営業収益(百万円)当期純利益率(%)

出所:東急不動産ホールディングス 有価証券報告書 第1〜6期(連結損益計算書) / 東急不動産 有価証券報告書(連結損益計算書)

参考文献
出典・参考
  • 東急不動産 有価証券報告書(2013年3月期・連結)
  • 東急不動産ホールディングス 有価証券報告書「第1期(2014年3月期)【企業結合等関係】」
  • 東急不動産ホールディングス 有価証券報告書「第1期(2014年3月期)連結キャッシュ・フロー計算書 注記【重要な非資金取引の内容】」
  • 東京急行電鉄 有価証券報告書「第144期(2013年3月期)【重要な後発事象】」

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