東急不動産ホールディングスの直近の動向と展望

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東急不動産ホールディングスの直近の業績・経営課題・市場ポジションと、今後の展望をまとめたページです。

セグメント構成や中期的な論点を、現経営陣の発信と有価証券報告書の記述をもとに整理しています。

直近の動向と展望

営業利益1,500億円目標と他人資本活用モデルへの転換

2024年5月の決算説明会で経営陣は、2031年3月期の連結営業利益1,500億円を長期目標に掲げ、次期中期経営計画の射程に位置づける方針を示した(出所:決算説明会 FY23)。2024年3月期の連結営業利益は1,202億円、2025年3月期予想は1,300億円水準であり、毎期300億円規模の上積みを刻みながら中長期目標へ近づける道筋を描く。大型再開発については、開発・賃貸・売却を組み合わせた段階売却モデルで事業効率と利益成長の同時追求を図る方針を示した。渋谷など重点エリアでは自社持分50%以上を保有する原則を掲げる一方、それ以外の物件は個別案件の性質に応じて持分比率を柔軟に変える運用とした。重点立地はバランスシートに残し、それ以外は早めに回す、という資本配分の差別化である。

ROEは9〜10%への引き上げを目標に置き、Shibuya Sakura Stageに代表される他人資本活用モデルが全面的に寄与する段階に入れば、資産活用型ビジネスのROAも改善するとの見通しを経営陣は示している。アナリストからの質問は連結バランスシートの規模と大型物件の売却戦略に集中しており、従来型の資産積み上げから資本効率重視型モデルへの転換が、市場との対話の中心テーマに移った。土地と建物を抱えこんで時価評価益を取りに行く時代から、回収・再投資の速度で稼ぐ時代への移行である。伝統的な総合デベロッパーから資本効率型不動産企業への転換点が、足元の対話の焦点に立つ。

参考文献
  • 決算説明会 FY23
  • 有価証券報告書

渋谷シフトと再エネ事業の現実解

オフィス事業では保有物件の95%が東京都心4区に集中しており、渋谷区と千代田区の低い空室率を踏まえ、賃料の増額改定は7〜8%程度を可能と経営陣は見ている(出所:決算説明会 FY23)。Shibuya Sakura Stageは入居の進捗とともに平均賃料を押し上げており、テナント構成の入れ替えで坪単価を引き上げる余地が残る。広域渋谷圏ではスタートアップ集積、MITとの連携強化、ウェット・ドライ両タイプのラボ整備など、ハードとソフトの双方で都市競争力を高める論点が示されている。単発のビル賃貸益ではなく、街全体の生産性で稼ぐ構図への転換である。広域渋谷圏の価値創造モデルを、次期中計の最重要テーマに置いている。

再生可能エネルギー事業は、2024年3月期の売電粗利益59億円から2025年3月期予想で49億円へ減益する。米子バイオマスの停止と為替差益の剥落が主因となるが、2026年3月期には新規施設の稼働で10億円の増益を見込む。安定資産という位置づけにふさわしい平準化された収益像は、新規稼働の積み上げによって立ち上がる段階にある。建築費高騰と人手不足には、2027年3月期までの竣工予定物件のうち約7割で建築工事契約を締結済みとし、渋谷の賃料上昇で追加コストを吸収する構図を描く。分譲マンション事業の粗利率36%は市況改善と商品価値向上で上振れの余地があるとされ、ランドバンクの約61%が再開発案件で構成される点を、経営陣は今後の利益源として強調している。

参考文献
  • 決算説明会 FY23
  • 有価証券報告書

参考文献・出所

有価証券報告書
日本会社史総覧 1995/11
決算説明会 FY23
PRESIDENT Online 2015/11
日経ESG 2021/8
Foresight 2022/5
財界オンライン 2023/02/09