インテリジェンスHD買収(2013年・パーソルHDの決断)

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論点 派遣単一から求職者接点へ広げるか
パーソルHD:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
全株式取得による転職メディア・人材紹介事業の取り込み

何をなぜ決めたか:全株式取得による転職メディア・人材紹介事業の取り込み

概要

2013年3月26日、テンプホールディングスは取締役会でインテリジェンスホールディングスの発行済株式および新株予約権の全部を取得して子会社化することを決議し、同日付で株式譲渡契約を締結した経営判断。取得は翌4月26日に実行された。取得原価は対価である現金50,874百万円と取得に直接要したアドバイザリー費用等417百万円を合わせた51,291百万円であった。

背景

事務系派遣を中核に規模を積んできたテンプホールディングスに対し、インテリジェンスは転職メディア"DODA"やアルバイト求人"an"を持ち、求職者と直接つながる接点を握っていた。有価証券報告書は、両社が広義の同業でありながら事業領域の重複が少なく相互補完的な関係にあり、インフラとブランド力の相互活用によるシナジーの創出が可能と判断したと記している。

内容

Intelligence Capital L.P.、インテリジェンス従業員持株会、および同社経営陣等12名から、23,639,900株と新株予約権1,506,600個の全部を取得し、議決権比率は100%となった。新株予約権の取得額は2,670百万円である。資金は自己資金と銀行借入で手当てし、連結子会社のテンプスタッフが三井住友銀行および三菱東京UFJ銀行から総額350億円の借入枠を2013年4月19日に実行した。

含意

取得によって56,300百万円ののれんが生じ、20年の均等償却が始まった。派遣・紹介・求人広告の三領域が持株会社の下に揃い、連結売上高は2013年3月期の2,472億円から2015年3月期に4,011億円へ伸びた。転職サービス doda を抱えるCareer事業は、その後グループで最も収益性の高い事業へ育っている。

いつ何が起きたか 5件
考察:派遣会社が求職者との接点を買収で得た意味
考察

考察:派遣会社が求職者との接点を買収で得た意味

この買収を、規模の追求として読むと半分しか見えない。テンプホールディングスが払った取得原価は512億円だが、企業結合日に受け入れた資産は327億円で、引き受けた負債376億円がそれを上回っていた。つまり帳簿上の純資産はマイナスであり、払った額はほぼそのまま563億円ののれんとして資産に立っている。買ったのは貸借対照表に載る資産ではなく、求職者が転職を考えたときに最初に開く画面であった。派遣会社は就業先の求人に対して登録者を送り出す立場にあり、求職者との関係は仕事の斡旋を通じてしか結べない。転職メディアと人材紹介を抱えることは、その関係を派遣の外側にも持つという意味を含む。2019年に"an"を畳んで doda に集めた選択も、媒体を集めることではなく接点を絞ることに主眼があったとみられる。

のれんは20年の均等償却とされ、毎期28億円強が費用に乗り続ける設計になった。その後グループで生じたのれんの減損損失は、2017年に買った豪州のPROGRAMMEDセグメントに係るもので、インテリジェンス由来ののれんは償却されこそすれ減損には至っていない。もっとも、買った事業と育てた事業の間には、収益性でも変動の幅でも差が残った。Career事業の利益率は派遣の数倍に達する一方、コロナ禍の2021年3月期にはセグメント利益が3億円まで減少している。高い収益性は高い感応度と表裏であり、グループ全体の業績は派遣の安定と紹介の振れ幅を抱えたまま推移してきた。人材市場の各領域に子会社を並べるという2013年の選択が、景気の波に対して強い構造だったのか、それとも振れ幅の異なる事業を同居させただけだったのかは、いまも問い直せる論点として残っていると推察される。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
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図と表

パーソルHD:のれんと無形固定資産の推移

のれん(百万円)のれん以外の無形固定資産(百万円)
パーソルHD:のれんと無形固定資産の推移
(百万円) のれん無形固定資産総資産 備考
2009年3月期 2,6262,83873,982
2010年3月期 3,2503,56275,912
2011年3月期 3,4693,73779,336
2012年3月期 2,3022,57186,529
2013年3月期 2,1622,63897,592 決議と契約はこの期の3月26日。取得は翌期の4月26日
2014年3月期 57,08972,335177,433 のれん56,300百万円が発生。商標権11,660百万円も新たに計上した
2015年3月期 66,02380,803228,663 パナソニックエクセルスタッフの取得でのれん11,844百万円が加わった
2016年3月期 70,30286,187236,238
2017年3月期 68,56182,867268,364
2018年3月期 102,113133,894403,465 豪州Programmed Maintenance Servicesの取得による増加を含む
出所:テンプホールディングス/パーソルホールディングス 有価証券報告書 第1期〜第10期(連結貸借対照表、主要な経営指標等の推移)
出所:テンプホールディングス/パーソルホールディングス 有価証券報告書 第1期〜第10期(連結貸借対照表、主要な経営指標等の推移)

パーソルHD:買収した事業のセグメントの推移

セグメント売上高(百万円)セグメント利益率(%)
パーソルHD:買収した事業のセグメントの推移
(百万円) セグメント売上高セグメント利益 備考
2015年3月期 60,9834,907 2014年4月の区分変更で「リクルーティング」を新設した
2016年3月期 70,8466,612
2017年3月期 65,5409,363
2018年3月期 71,95710,810 2018年3月期は海外事業を分離。2020年3月期からCareerセグメントへ
出所:テンプホールディングス/パーソルホールディングス 有価証券報告書 第6期〜第10期(セグメント情報、外部顧客への売上高およびセグメント利益)
出所:テンプホールディングス/パーソルホールディングス 有価証券報告書 第6期〜第10期(セグメント情報、外部顧客への売上高およびセグメント利益)

買収の条件

買収の条件
科目 概要 備考
被取得企業 株式会社インテリジェンスホールディングス 同社子会社18社を含む。求人メディア運営、人材紹介、人材派遣、アウトソーシング
取締役会の決議日 2013年3月26日 同日付で株式譲渡契約を締結している
株式を取得した相手 Intelligence Capital L.P. ほか インテリジェンス従業員持株会、インテリジェンスHD経営陣等12名
企業結合日 2013年4月26日 期首をみなし取得日とし、2013年4月1日から連結損益計算書に含めている
企業結合の法的形式 現金を対価とする株式取得 取得企業を決定した根拠も、現金を対価として株式を取得したこと
取得した株式数 23,639,900株 新株予約権1,506,600個の全部を併せて取得している
取得した議決権比率 100% 結合後の企業の名称は変更していない
取得原価 51,291百万円 対価は現金50,874百万円、取得に直接要したアドバイザリー費用等417百万円
新株予約権の取得額 2,670百万円 株式取得に合わせ、発行済の新株予約権の全部を取得した分
発生したのれん 56,300百万円 20年間の均等償却。原因は両社のインフラとブランド力の相互活用による超過収益力
受け入れた資産の額 32,790百万円 流動資産15,533百万円、固定資産17,257百万円
引き受けた負債の額 37,689百万円 流動負債15,153百万円、固定負債22,535百万円。ほかに少数株主持分109百万円
被取得企業の規模 連結総資産48,322百万円 2012年3月末。連結純資産11,389百万円、資本金328百万円
支払資金の調達方法 自己資金および銀行借入 テンプスタッフが三井住友銀行・三菱東京UFJ銀行から限度額350億円を4月19日に実行
通期換算した業績への影響 記載なし 期首をみなし取得日としているため該当事項なしとされている
出所:テンプホールディングス 有価証券報告書 第5期(2013年3月期)【経営上の重要な契約等】【重要な後発事象】・第6期(2014年3月期)【企業結合等関係】
出所:テンプホールディングス 有価証券報告書 第5期(2013年3月期)【経営上の重要な契約等】【重要な後発事象】・第6期(2014年3月期)【企業結合等関係】
参考文献

参考文献

参考
  • テンプホールディングス 有価証券報告書 第5期(2013年3月期)【経営上の重要な契約等】【重要な後発事象】
  • テンプホールディングス 有価証券報告書 第6期(2014年3月期)【企業結合等関係】
  • パーソルホールディングス 有価証券報告書 第10期(2018年3月期)/第12期(2020年3月期)
  • テンプホールディングス 有価証券報告書「第5期(2013年3月期)【経営上の重要な契約等】【重要な後発事象】」
  • テンプホールディングス 有価証券報告書「第6期(2014年3月期)【企業結合等関係】」
  • テンプホールディングス/パーソルホールディングス 有価証券報告書「第1期〜第10期(連結貸借対照表、主要な経営指標等の推移、セグメント情報)」
  • パーソルホールディングス 有価証券報告書「第12期(2020年3月期)」

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