システナカテナの吸収合併と「株式会社システナ」への商号変更
売上4倍を超える相手をなぜ飲み込んだか——携帯電話ソフトの専業が総合SIへ移るまで
- 概要
- 2009年12月14日、株式会社システムプロは持分法適用関連会社であったカテナ株式会社との合併契約を締結し、2010年4月1日に同社を吸収合併した。商号をいったんシスプロカテナへ改め、同年7月に株式会社システナへ変更した。
- 背景
- 上場後のシステムプロは携帯電話端末ソフトの受託に売上が集中し、総販売実績の2割超を1社が占める期が続いていた。2007年2月にカテナと資本・業務提携し、出資比率を段階的に35.97%まで引き上げていた。
- 内容
- システムプロを存続会社とする吸収合併で、カテナ株1株にシステムプロ株0.0048株を割り当てた。カテナの2009年3月期売上は372億1,100万円、システムプロの2009年10月期売上は81億6,100万円で、規模の小さい側が存続会社となった。
- 含意
- 合併で承継した不動産の売却により有利子負債を返済し、2011年3月期末には合併直後比43億8,900万円減の実質無借金となった。同期には総販売実績の10%以上を占める相手先が消え、顧客集中は解消した。
顧客をひとつ持つことの危うさ
この合併を、規模の小さい側が大きい側を飲み込んだ逆転劇として読むこともできる。ただ、開示された経緯をたどると、逆転そのものは目的ではなかったように見える。システムプロが抱えていた問題は成長率ではなく、売上の四分の一を一社に握られている構造にあった。技術者を増やせば売上が伸びる事業では、増員の速度を決めるのは自社の判断ではなく、発注元の開発計画になる。三年をかけて出資比率を引き上げ、最後に合併へ進んだ経緯は、その依存を解くための順序であったとみることができる。
もっとも、合併の理由として掲げられたエア・シンクライアント・サービスは、その後の事業の柱として語られなくなった。合併で実際に効いたのは、構想として説明された新事業ではなく、旧カテナが抱えていた金融系の顧客と、それを売り歩く営業の存在であった。掲げた名目と、後から振り返って効いたものが一致しない点に、この判断の性格がうかがえる。1社への集中を解いた会社が、2020年代に次世代モビリティという新しい集中先を選んでいることを思えば、専門特化と顧客分散のどちらに寄るかという問いは、この会社に繰り返し戻ってくる。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
背景
携帯電話ソフトに寄りかかった売上
2002年の上場後、システムプロの売上は携帯電話の世代交代とともに伸びた。2003年10月期の連結売上24億6,000万円は、2006年10月期に59億2,000万円、2007年10月期に79億3,000万円、2008年10月期には96億円へ拡大している。伸びを支えたのは、キャリアと端末メーカー向けの端末ソフト開発であった。通信規格が2Gから3Gへ移るたびに端末のソフトを作り直す需要が生まれ、その受託を重ねることが売上の増加に直結した[1]。
その裏側で、顧客の偏りは深まっていた。有価証券報告書が開示する総販売実績の10%以上を占める相手先には、第23期に日本電気13.2%とボーダフォン11.7%、第25期には株式会社KDDIテクノロジー17.3%が並ぶ。とりわけシャープビジネスコンピュータソフトウェア株式会社への集中は深く、第26期22.6%・第27期23.7%・変則5か月決算の第28期27.5%と、売上のおよそ四分の一を1社が占める期が続いた。合併直前の2009年10月期の単体売上は81億6,100万円であった[2][3]。
三年をかけたカテナとの接近
相手方のカテナは、1968年1月に設立された東証二部の上場会社で、資本金53億9,200万円、連結従業員1,681名を抱えていた。金融機関向けを中心とするシステム開発、システムの運用・保守とヘルプデスク、IT関連商品の販売を主業とし、主要取引先にはみずほ情報総研、富士通、株式会社NTTデータが並ぶ。2009年3月期の売上は372億1,100万円で、システムプロの4倍を超える。IT商品の卸から出発した会社が、金融系のシステム開発と運用へ業容を広げてきた経緯にあたる[4][5]。
両社の関係は一足飛びに合併へ進んだのではない。2007年2月28日に資本・業務提携を結び、システムプロのカテナへの出資比率は29.92%となった。事業上の相乗効果を早く出すため、同年11月29日にはカテナが実施した第三者割当増資を引き受けて出資比率を35.97%へ引き上げている。2009年4月17日からは両社共同でクラウドソリューションのサービス提供を始めた。合併契約の締結時点で、カテナの取締役9名のうち5名はシステムプロの取締役が兼務していた[6]。
決断
2009年12月14日の合併契約
2009年12月14日、両社は取締役会の決議に基づき合併契約を締結した。システムプロを存続会社とする吸収合併で、カテナは解散する。割当ての内容はカテナ株1株にシステムプロ株0.0048株で、システムプロが保有するカテナ株1,267万9,700株とカテナの自己株式273万1,570株には割当てを行わない。売上で4倍を超える相手を消滅会社に置く形をとったのは、システムプロがすでにカテナの議決権の39.86%を握っていたためであった[7][8]。
親会社に近い立場の会社が関連会社を取り込む合併であるため、比率の算定には手当てが置かれた。システムプロは大和証券エスエムビーシー、カテナはアビームM&Aコンサルティングをそれぞれ第三者算定機関に選び、市場株価法とディスカウンテッド・キャッシュフロー法で分析させている。合意した0.0048は、大和証券エスエムビーシーの市場株価法0.004679〜0.005262、DCF法0.003476〜0.005242の双方に収まる。ただし両社とも、比率の公正性についての意見書は取得していない。カテナ側では、システムプロの代表取締役会長と代表取締役社長を兼務する取締役ら計6名が審議と決議に加わらなかった[9][10]。
「携帯・金融・ポータル」という合併の理由
開示された合併の目的は、両社の顧客と営業力を一体にすることに置かれた。システムプロは、自社の情報システムサービス事業とカテナの金融を中心とするシステム開発事業を連携させ、そこへ移動体高速データ通信システム事業を重ねてエア・シンクライアント・サービスを立ち上げる構想を掲げている。その新しい事業を早く軌道に乗せるには「カテナの豊富な顧客基盤と強力な営業力を活用する必要性から」合併が得策であると判断した。カテナ側もIT総合商社を目指す立場からこれに賛同した[11][12]。
合併に先立ち、2010年1月に決算期を10月31日から3月31日へ変更したため、第28期は5か月の変則決算となった。カテナは2010年3月29日に上場を廃止し、4月1日の効力発生とともに解散、システムプロは商号をシスプロカテナ株式会社へ改めた。この商号は3か月しか使われていない。同年7月、本社を東京都港区海岸へ移すとともに商号を株式会社システナへ変更した。社名は社員からの公募で決めている[13][14]。
結果
承継した負債を、承継した不動産で返す
合併で引き継いだのは顧客と営業力だけではなかった。カテナから承継した資産は流動資産113億8,700万円・固定資産65億9,600万円、負債は流動負債93億7,900万円・固定負債32億3,700万円で、合計126億1,700万円に上る。総資産は2010年3月期末の84億1,400万円から2011年3月期末には244億5,300万円へ膨らんだ。株式会社システナは合併の直後から全社的な構造改革に入り、承継した不動産のうち事業戦略上不要な物件を売って有利子負債の返済に充てた[15][16]。
その結果、2011年3月期末の有利子負債残高は合併直後に比べて43億8,900万円減り、現預金が有利子負債を上回る実質無借金となった。事業の重複も整理された。2011年2月1日に金融機関向けシステム開発を手がける連結子会社を売却し、成長事業への転換が難しいと判断した金融機関向け基幹システム開発事業も2011年4月1日付で手放している。一方でスマートフォン向けゲームポータルの株式会社GaYaを2010年11月に設立し、無線デバイス開発の株式会社IDYを2011年4月に子会社化した[17][18]。
顧客集中の解消と、事業の三本立て
合併後最初の通期となった2011年3月期の連結売上は391億7,600万円、営業利益25億7,900万円、経常利益26億6,100万円、当期純利益29億5,700万円であった。事業別では、情報システム事業118億1,300万円、モバイル高速データ通信事業73億8,100万円、ITサービス事業55億6,600万円と、旧カテナ由来の金融系システム開発が最大の柱に立った。同期には、総販売実績の10%以上を占める相手先が一社も無くなっている。1社に売上の四分の一を握られる状態は、合併によって解消した[19][20]。
合併後に会社が自らへ課した課題は、規模の拡大ではなく商売の型の入れ替えであった。有価証券報告書の対処すべき課題は、旧カテナの販売チャネルと情報システムサービス事業の相乗効果を図り「単なる物販営業や受託専門の開発モデルから脱却し、高付加価値サービスを提供するシステムインテグレーター(総合SIベンダー)へと脱皮」することを最重要課題に挙げている。もっとも、合併の名目に据えられたエア・シンクライアント・サービスがその後の中核事業に育った形跡は、以後の開示には見あたらない[21]。
- 株式会社システムプロ「株式会社システムプロとカテナ株式会社の合併契約締結について」(2009年12月14日)
- 株式会社システムプロ 有価証券報告書(第28期・2010年3月期)
- 株式会社システナ 有価証券報告書(2011年3月期)
- 週刊BCN 2009年12月17日「システムプロとカテナ合併、カテナは上場廃止へ」
- 株式会社システナ 公式サイト「システナのあゆみ(沿革)」(https://www.systena.co.jp/about/history.html)