この判断で目を引くのは、引き上げの幅よりも、約束の置き方であるように思われる。1株いくらという絶対額ではなく、利益に対する比率で株主への配分を定めておくと、業績が悪化した年には配当も減る代わりに、伸びた年には自動的に増える。事業の規模が20年で10倍以上に動いた会社が、同じ一文を毎期の有価証券報告書に載せ続けられたのは、約束の形が比率であったためと思われる。創業者の逸見愛親氏が受注の7割を断って身の丈を選んだ会社が、株主との関係でも絶対額でなく比率を選んだ点は、どこか通じているようにも読める。
もっとも、利益の4割を先に外へ出す約束は、手元に残せる資金の上限を自ら定めることでもある。大型の買収や長期の自社商材開発に資金を厚く回そうとすれば、この約束が制約として効く。近年の配当性向が5割を超える期を含むことは、還元が利益の伸びに先行している状態を示している。成長分野への投資と40%以上の還元をどこまで両立させられるかという問いは、比率で約束を置いた時点から、この会社が抱え続けているものといえる。