2005年9月、丹下大氏は[1]東京都渋谷区に株式会社SHIFTを資本金700万円で設立した[2]。同志社大学工学部を1997年に卒業後はフリーターとなり[3]、2000年に京都大学大学院工学研究科を修了し[4]インクス(現SOLIZE)へ入社した。『プロセステクノロジー』の特許を取得し[5]、3人のチームを売上50億円・140名へ育て[6]、個人で2億円のコンサルフィーを稼いだ[7]。2004年、29歳で退職を決意[8]する。インクスで社長になるには早くても20年はかかると見立て[9]、20代の起業は経験知不足、40代以降は体力不足のリスク[10]があると考えた。辞めるとローンが組めないため在籍中に自宅マンションと高級外車を買い[11]、翌朝辞表を出した[12]。社名の『シフト』は日産のCMから思いつき[13]、就職氷河期の第二次ベビーブーム世代が価値観を動かす[14]意を込めた。創業時の主事業もインクスと同じ製造業向けコンサルティング[15]で、ソフトウェアテストとは無縁だった。
創業から4年余[16]、SHIFTは製造業の生産プロセス改善を主力としたが、事業は一つに定まらなかった[17]。創業2年目くらいから採用を始めた[18]丹下大社長は、コンサルティングと並行して携帯電話のGPS機能を使ったSNS事業やレンタル事業[19]を立ち上げたが、いずれも半年ほどで撤退した。BtoCは自社に向かないと判断してBtoBへ集中する過程で、18名まで増えていた社員は12名に減った[20]。転機は、ある大手ネット企業から請け負った社内テスト部隊[21]のコンサルだった。丹下大社長の目に、テストの現場はほぼ人力で効率化がまったくなされていない[22]ものと映った。仕組み化できれば確実に勝てると見て、2009年後半[23]に事業の柱をソフトウェアテストへ移し、同年11月にソフトウェアテスト事業部を設立した[24]。
最初の受注は2010年3月、東北地方に本社を置く[25]医療施設向けシステム会社の案件である。事業を始めるにあたっては、1人1時間あたり1,480円でテストすると書いたチラシを1,000枚ほど[26]配った。当初のテスト拠点は赤坂のマンションの一室[27]に置いた。丹下大社長は1人当たり250万円のフィーという従来のコンサル型[28]はこの市場に合わないと考え、テストの工程そのものを仕組み化・IT化し、業界を問わず格安で提供する[29]売り方を選んだ。SHIFTは2010年9月に北海道札幌市へ札幌テストセンター[30]を、2011年12月に福岡テストセンターを開設し[31]、首都圏の外にテスト人材を置いた。2010年11月にはソフトウェアテストの適性能力を測定する『CAT検定』をリリース[32]し、同じ『CAT』の名でテスト活動を統合するクラウドシステム[33]も自社開発した。
CAT検定の狙いは人材の標準化[34]にある。丹下氏はインクス時代、オペレーションを簡素化して標準化し、ツールを押せば誰でもコンサルティングできる仕組み[35]を作っていた。丹下大社長はその標準化をソフトウェアテストの人材に当てはめ[36]、適性能力を測る『CAT検定』を設けた[37]。新規採用したエンジニアを社内研修と検定を経て3カ月〜半年で現場に投入できる体制[38]は、テスト需要の急増に応じた人材供給を可能にし、その後の事業規模拡大の基盤となった。丹下大社長は2020年の取材で、本当にテストに必要なスキルを持つエンジニアが必要な時に必要な人数だけオンデマンドで供給される[39]体制を事業モデルの中核として語っている。連結従業員数はFY15の233名からFY20の2,958名へ5年で12.7倍に拡大した。FY25には連結11,688名(うち単体6,201名)に達し、創業20年で1万人企業の規模となった。
2012年9月にはシンガポール共和国にSHIFT GLOBAL PTE. LTD. を設立し[40]、初の海外拠点を開設した。同年3月には三井物産、NTTインベストメント・パートナーズなどから総額4億7,200万円の増資を受けた[41]。丹下大社長は2012年12月の取材で、スタッフ280名、サービス導入企業は約120社[42]、テスト拠点は東京・札幌・福岡とインドに広がった[43]と述べた。同じ取材で語った市場観は、国内のソフトウェアテスト市場4兆円のうち外部へ発注されて表に出ているのは1%の400億円[44]にすぎず、残る3兆9,600億円をこれから取りにいく[45]というものだった。FY13の連結売上高は13億円、経常利益は-78百万円の赤字だった。丹下大社長はこの事業モデルに行き着くまでに5年を費やした[46]とふり返っている。
2014年11月、SHIFTは東京証券取引所マザーズ市場に上場した[47]。創業から9年、ソフトウェアテストへ柱を移してから5年での上場[48]となる。上場時のFY14連結売上高は21.5億円、経常利益1.2億円で、連結従業員数は148名(うち単体130名)[49]だった。前期は経常損益が赤字で、上場は黒字へ転じた期に重なる。ソフトウェアテスト事業に着手した2010年のメンバーは12名だった[50]と丹下大社長は述べている。上場翌期のFY15には連結売上高32.8億円・営業利益3.1億円となり、売上高は1年で1.5倍に伸びた。
2014年1月、SHIFTは本社及び東京テストセンターを東京都港区麻布台に移転[51]した。2015年4月には株式会社SHIFT PLUSを設立[52]し、2016年3月にはベトナム社会主義共和国にSHIFT ASIA[53] CO., LTD. を設立してオフショアの開発・テスト拠点を置いた。同年6月には株式会社SHIFT SECURITYを設立[54]し、ソフトウェアテストの周辺にあるセキュリティ領域へ入った。人員は上場した2014年8月期の連結148名[55]から、5年後の2019年8月期には2,001名へ13.5倍[56]に増えた。単体でも130名から1,026名[57]となった。
創業10年目にあたる2015年8月期[58]の連結売上高は32.8億円、営業利益は3.1億円[59]だった。翌2016年8月期は売上55.1億円・営業利益5.2億円[60]、2017年8月期は売上81.7億円・営業利益3.9億円[61]、2018年8月期は売上127.9億円・営業利益12.0億円[62]となり、売上高は3年で約3.9倍に伸びた。SHIFTが他社を子会社にしたのは2016年9月のメソドロジックが最初[63]で、2015年8月期から2016年8月期への1.7倍[64]は買収を伴わない伸びである。子会社化はその後、2016年11月のALH、2018年4月のAiritech[65]と続いた。2017年8月期は売上が5割近く増える一方で、営業利益は前期を下回った[66]。
2016年9月、SHIFTは株式会社メソドロジック[67]を株式取得により連結子会社化した。同年11月にはALH株式会社[68]をも子会社化し、SES(システムエンジニアリングサービス)領域を取り込んでエンジニア基盤を拡大した。買収と並行して自前の拠点も増やし、2017年10月に名古屋事業所[69]、同年12月に大阪テストセンター[70]を開設した。連結売上高はFY16の55.1億円からFY17の81.7億円[71]へ増えた一方、営業利益は5.1億円から3.9億円へ減った[72]。のれん残高は2.0億円から7.3億円へ[73]増え、連結従業員数は483名[74]から966名へ倍増した[75]。
丹下大社長は2020年9月の取材で、M&Aを選ぶ理由の第一に時間を挙げた[76]。SHIFTの事業だけで売上を伸ばすなら『採用人数×単価』の掛け算になり、年間100億円ずつ伸ばせたとしても、1,000億円に届くのは2020年時点からさらに7年先[77]になる。企業をM&Aして時間を買うほうが効率的だ[78]、という説明である。2018年4月にはAiritech株式会社[79]、2019年3月には株式会社システムアイ[80]、2019年12月には株式会社分析屋[81]を連結子会社化し、データ分析領域・大手SES領域へ拡張した。2019年8月期(FY19)の連結売上高は195.3億円・営業利益15.4億円へ拡大し、M&A連鎖と本業成長の両輪で売上高は前期の127.9億円から1.5倍規模となった。
2019年7月、SHIFTは新株予約権の発行により総額51.97億円[82]の資金を調達した。同年10月には上場市場をマザーズから[83]東京証券取引所市場第一部へ変更した。2014年11月のマザーズ上場から5年[84]での市場変更である。2020年11月には海外募集による新株式の発行で97.98億円[85]を調達し、2度の調達で合わせて約150億円を集めた[86]。自己資本はFY19の86.5億円からFY21の223.9億円[87]へ2.6倍に増えた。連結売上高はFY20の287.1億円からFY21の460.0億円[88]へ、営業利益は23.5億円から39.9億円へ拡大した[89]。
2020年3月にナディア・xbs[90]、4月にエスエヌシー[91]、9月にCLUTCH・ホープス[92]と、SHIFTは1年間で5社を連結子会社化した[93]。丹下大社長が時間と優秀な人材の獲得をM&Aの狙いに挙げた[94]のは、この5社を取り込んだ直後の2020年9月である。2021年1月にはVISH[95]、7月にはDICO[96]を子会社化した。連結従業員数はFY20の2,958名[97]からFY21の4,440名[98]へ増え、うち単体は2,254名[99]で、半数近くを子会社が占めた。のれん残高は30.3億円から64.8億円[100]へ拡大した一方、有利子負債残高は45.9億円から42.2億円[101]へ減った。
2022年3月、SHIFTは連結子会社として[102]株式会社SHIFTグロース・キャピタルを設立した。翌4月には東京証券取引所の市場区分の見直しにより、市場第一部からプライム市場へ移行した[103]。2023年4月には連結子会社としてW&C株式会社[104]を設立し、同社は同年9月にBuild Plus株式会社へ社名を変更[105]した。翌5月にはEQIQ株式会社からバイリンガル人材紹介事業[106]を吸収分割により承継し、株式取得以外の手法でもグループを広げた。連結従業員数はFY22に6,208名[107]、うち単体は3,247名[108]となった。
2022年6月にDeMiA[109]、10月にクロノス[110]、2023年3月にキャリアシステムズ[111]、6月にクレイトソリューションズ・シムテック・ネットワークテクノス[112](1カ月で3社同時連結子会社化)、7月にトラストブレイン[113]と、SHIFTは年間複数件のM&Aを継続した。FY22の連結売上高648.7億円、営業利益69.1億円、FY23には売上高880.3億円・営業利益115.7億円と、過去最高業績を更新した。1年間のM&A成約はFY23で9件に達した[114]。
SHIFTはFY22からセグメント開示を組み替え[115]、ソフトウェアテスト関連サービス・ソフトウェア開発関連サービス・その他近接サービスの3区分とした。FY24の連結売上高1,106.3億円[116]のうち、ソフトウェアテスト関連サービスが711億円(64%)[117]、ソフトウェア開発関連サービスが323億円(29%)、その他近接サービスが72億円(6%)で、ソフトウェア開発領域の比重が3割近くまで拡大した。FY25には連結売上高1,298億円・営業利益156億円[118]に達した。連結従業員数は11,688名(うち単体6,201名)[119]で、創業時の一人から1.2万人規模へ拡大した[120]。
丹下大社長はM&Aのもう一つの狙いを『優秀な人材の獲得』[121]に挙げている。自社内で一から新しいことを生み出すのは難しく、買収であれば新規事業に参入できるうえ、その事業を立ち上げ育て上げてきた優秀な人材とともに仕事ができる[122]という。SHIFTは2016年9月のメソドロジック[123]を皮切りに、2023年7月のトラストブレイン[124]まで連結子会社化を重ね、SES・データ分析といった近接領域[125]をグループに取り込んだ。買収の積み上がりはのれん残高に表れ、FY16の2.0億円がFY24には92.6億円へ増え、買収由来の資産が連結貸借対照表の主要項目となった。
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| 2005〜2013年製造業コンサルから始まった4年の試行錯誤とソフトウェアテスト業態転換 | 丹下大 | 東京都渋谷区にて設立 | ★ | |
| 丹下大 | 製造業コンサルからソフトウェアテスト専業への業態転換 2009年、製造業向けコンサルとして創業したSHIFTが、丹下大社長の主導でソフトウェアテスト専業へ業態を転換し、テスト人材を標準化して大量に育てる事業モデルへ移した経営判断。 詳細を読む | ★★★ | ||
| 丹下大 | ソフトウェアテスト適性能力を測定する「CAT検定」を発売 | ★★ | ||
| 丹下大 | シンガポール共和国にSHIFT GLOBAL PTE. LTD. を設立 | ★ | ||
| 2014〜2022年連続M&Aによる事業領域拡張と「SHIFTグロース・キャピタル」構想 | 丹下大 | 東京証券取引所マザーズ市場に上場 | ★ | |
| 丹下大 | SHIFT PLUSを設立 | ★ | ||
| 丹下大 | ベトナム社会主義共和国にSHIFT ASIA CO., LTD. を設立 | ★ | ||
| 丹下大 | SHIFT SECURITY を設立 | ★ | ||
| 丹下大 | メソドロジックを子会社化 | ★ | ||
| 丹下大 | ALHを子会社化 | ★★ | ||
| 丹下大 | Airitechを子会社化 | ★ | ||
| 丹下大 | システムアイを子会社化 | ★ | ||
| 丹下大 | 海外募集による新株式の発行により資金調達を実施 | ★ | ||
| 丹下大 | 連続M&AとPMIの仕組み化(SHIFTグロース・キャピタル設立) 2022年3月、SHIFTがM&AとPMI(買収後の統合)を専門に担う投資子会社『SHIFTグロース・キャピタル』を設立し、それまで本体経営陣が個別に判断していた買収を、専門組織による継続実行体制へ移した経営判断。丹下大社長の主導で、ソフトウェアテストの周辺領域を取り込む連続M&Aを成長エンジンとして制度化した。 詳細を読む | ★★★ | ||
| 2023〜2026年コンサル領域への質的拡張と「SHIFT3000」3,000億円計画 | 丹下大 | EQIQからバイリンガル人材紹介事業を吸収分割により承継 | ★ | |
| 丹下大 | SHIFT Enterprise Consultingを設立 | ★★ | ||
| 丹下大 | ネットワールド・クラブネッツを子会社化 | ★ | ||
| 丹下大 | ライズ・コンサルティング・グループへの出資とコンサル領域への回帰 2025年4月、ソフトウェアの品質保証(テスト)を祖業に開発・SESへ広げてきたSHIFTが、東証グロース上場の総合コンサルティング会社ライズ・コンサルティング・グループへ約76億円を投じて議決権の33%を取得し、持分法適用会社化と資本業務提携に踏み切った経営判断。 詳細を読む | ★★★ | ||
| 丹下大 | ライズ・コンサルティング・グループの株式を取得 | ★★ |
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事実根拠:出所(SHIFT)