SHIFT ライズコンサルへの出資 資本を投じての事業領域の拡張と、かつて手がけた領域への回帰

更新:

時期 2025年4月
当時の社長 丹下大
論点 事業領域の拡張とコンサルティングへの回帰
何をなぜ決めたか
概要

2025年4月、ソフトウェアの品質保証(テスト)を祖業に開発・SESへ広げてきたSHIFTが、東証グロース上場の総合コンサルティング会社ライズ・コンサルティング・グループへ取得原価7,668百万円を投じて議決権の33%を取得し、持分法適用関連会社化と資本業務提携に踏み切った経営判断。

背景

国内のソフトウェアテスト市場の成長が緩やかになるなか、テスト・開発で築いた顧客基盤を戦略・ITの上流コンサルへ延ばし、案件単価とトップセールスの規模を引き上げる狙いがあった。2023年のコンサル子会社設立と本社移転で下地を作っていた。

内容

2025年2月28日の取締役会で前提条件を決議して決定を代表取締役に一任し、4月4日に株式譲渡契約と資本業務提携契約を締結。4月24日に議決権の33%を取得し、5月31日から持分法を適用した。完全子会社化ではなく資本業務提携とし、同じ4月には航空宇宙・防衛コンサルの新会社も設立した。

含意

創業時の製造業コンサルからテストへ転じて18年を経て、テスト専業から上流のコンサルを含む総合IT人材企業への質的転換を進める一手にあたる。取得原価のうち4,838百万円は顧客関連資産、4,121百万円はのれん相当として認識され、投資有価証券に積まれた。協業の成果は本稿の時点でなお途上にある。

いつ何が起きたか 8件
筆者の見解
筆者の見解

規模でなく、利益率の高い上流をどう取り込むか

この判断の核心は、下流のテストで築いた顧客基盤を、より利益率の高い上流のコンサルへどう接続するかにある。SHIFTは、対象を丸ごと買って標準化する従来のM&Aとは違い、上場を保つコンサル会社に33%だけ出資し、資本業務提携という緩い形で組んだ。上流の人材と案件へ手を伸ばしつつ、コンサルの自律性は損なわない——完全支配と純然たる提携の中間を選んだ点に、この案件の性格がうかがえる。

創業の製造業コンサルからテストへ移り、テストから開発、そして再びコンサルへ。SHIFTの20年は、下流と上流を往復する道のりとして読める。ライズとの協業がテスト・開発・コンサルの一体提供として定着するのか、それとも顧客紹介の域にとどまるのかは、共同サービスの成否にかかっている。祖業のテストで磨いた標準化の作法を、案件ごとに個別性の高い上流のコンサルへどこまで持ち込めるか。その問いに、本稿の時点で答えは出ていない。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

業績の推移
出資の条件

出資の条件

科目 概要 備考
被投資会社 ライズ・コンサルティング・グループ 事業の内容はコンサルティング事業。東証グロース市場の上場を保ったまま資本業務提携した
取締役会の決議 2025年2月28日 前提条件を決議し、あわせて本件の決定を代表取締役に一任することを決議した
契約の締結と決定 2025年4月4日 株式譲渡契約と資本業務提携契約を同日付で締結した
株式取得日 2025年4月24日
持分法適用開始日 2025年5月31日 連結財務諸表に含まれる業績の期間は2025年6月1日から8月31日まで
株式取得後の議決権比率 33% 完全子会社化ではなく普通株式の一部取得にとどめた
取得原価 7,668百万円 対価は現金7,618百万円、アドバイザー等への報酬・手数料等49百万円
のれん相当の金額 4,121百万円 投資有価証券に含めて計上し、10年間にわたり均等償却する
顧客関連資産 4,838百万円 のれん以外の無形固定資産への配分額。償却期間は11年から25年
のれん相当の発生原因 将来の事業展開によって期待される超過収益力

出所:SHIFT 有価証券報告書 第20期(2025年8月期)【追加情報】株式取得による持分法適用関連会社化・【重要な契約等】

のれん残高と総資産の推移

SHIFT:のれん残高と総資産の推移

(百万円) のれん総資産 備考
2020年8月期 3,02719,821
2021年8月期 6,48434,272
2022年8月期 6,48840,230 3月にSHIFTグロース・キャピタルを設立し連続M&Aを専門組織へ移した
2023年8月期 8,99749,530
2024年8月期 9,26262,717 のれん587百万円を減損損失に計上した
2025年8月期 7,86677,001 ライズ株式の取得等で投資有価証券が8,438百万円増えた
のれん残高
のれん(百万円)

出所:SHIFT 有価証券報告書 第15期〜第20期(連結貸借対照表、報告セグメントごとののれんの償却額及び未償却残高に関する情報)

同じ問いに直面した会社

同じ問いに直面した会社

資本提携と政策保有2018年ADEKA1928年に分離した相手を公開買付けと第三者割当増資で51%まで戻す資本の再結合上場子会社化と少数株主の利益
2008年野村不動産ホールディングスジオ・アカマツの全株式と65%の持分取得による商業・賃貸ビル事業の拡張事業ポートフォリオと賃貸資産の規模
2008年楽天グループ200億円の出資による銀行の取り込みと、金融事業の中核への据え直し金融事業の中核取り込みと経済圏の完成
2024年トーセイ創業者に代わる筆頭株主の登場と、資本の後ろ盾の入れ替え安定株主の確保と、首都圏の外への足がかり
2010年KDDI自社網の積み増しから327万世帯の顧客基盤の持分取得への転換固定通信と映像配信の顧客基盤の確保
隣接領域への展開2007年ユナイテッドアローズ自己株式162万株の譲渡による資本・業務両面での結び付き商品調達体制と業容拡大
2007年SBIホールディングス住友信託銀行との折半出資で銀行業へ入り、連結子会社にはしなかった選択総合金融圏の構築と業態の拡張
1970年山崎製パン日綿実業を加えた合弁によるビスケット事業への進出多角化と外部ブランドの活用
1953年三菱鉱業セメント石炭に代わる事業の選定と、系列各社の共同出資による別会社方式での参入石炭に代わる事業の選定と、参入形態の決定
1953年アズビル50対50の折半出資と、工業計器・空調制御機器・マイクロスイッチの包括的な技術導入技術導入と経営権
参考文献
出典・参考
  • SHIFT「株式会社ライズ・コンサルティング・グループの株式取得(持分法適用会社化)及び資本業務提携契約締結に関するお知らせ」(2025年4月4日)
  • SHIFT 有価証券報告書(2025年8月期)【沿革】
  • SHIFT 有価証券報告書(2024年8月期)(連結)
  • SHIFT 有価証券報告書「第20期(2025年8月期)【追加情報】株式取得による持分法適用関連会社化」
  • SHIFT 有価証券報告書「第20期(2025年8月期)【重要な契約等】」
  • SHIFT 有価証券報告書「第20期(2025年8月期)【持分法を適用した投資に関する事項】」
  • SHIFT 有価証券報告書「第20期(2025年8月期)監査上の主要な検討事項」

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