稼働率回復と採用投資による再建(2016年・ベイカレントの決断)

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論点 上場直後の受注制限をどう撤回するか
ベイカレント:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
受注制限の撤回と顧客の呼び戻し、単価引き上げによる成長モデル

何をなぜ決めたか:受注制限の撤回と顧客の呼び戻し、単価引き上げによる成長モデル

概要

2016年12月9日、東証マザーズ上場から3か月で萩平和巳氏が辞任したベイカレント・コンサルティングで、コンサルティング&IT事業本部長の阿部義之氏が社長に就き、前体制が進めた継続案件の受注制限を撤回して稼働率の回復を最優先に置いた経営判断である。採用で人員を積み、その上に単価の上昇を重ねる以後10年の成長は、この立て直しから始まった。

背景

2016年10月から高付加価値案件へ人員を振り向けるため安定案件の受注を制限した結果、待機コンサルタントが増え、90%超を保っていた稼働率は10月から11月に70%台へ落ちた。撤退交渉で長年の顧客の信頼を失い、社員の離反も招いていた。

2017年2月期の下半期は営業利益1,361百万円と前年同期を下回り、通期の営業利益は3,222百万円と前期比6百万円の増加にとどまった。

内容

阿部義之社長は12月中旬に受注制限の方針を改め、既存の顧客へ新体制の説明に回って関係を立て直した。失った顧客の約70%と再契約して受注が急増し、2017年2月に稼働率は90%近くへ戻り、平均受注単価は前年比9%上がった。

成長の計画については 『急激でリスクのある成長計画ではなく、足下の収益維持を大切にしつつも、着実に成長することを念頭に、コーポレート・ガバナンスを強化して経営を安定化させ、株主の皆様に安定的に還元していける体制を確立したい』 とし、翌期は稼働率90%前後を保ちながらコンサルタント数12%増と平均単価4%上昇を目標に置いた。

含意

人月を売る事業では増員が単価の下押しを招きやすい。同社は従業員数を2017年2月期の1,194人から2022年2月期の2,638人へ増やしながら、売上収益を17,188百万円から57,642百万円へ、営業利益を3,222百万円から21,518百万円へ伸ばした。稼働率を先に守り、人員と単価をその上に積む順序が、前体制の急いだ上流化を引き継ぐ形になった。

いつ何が起きたか 8件
考察:先に守る数字を入れ替えた再建
考察

考察:先に守る数字を入れ替えた再建

この判断の核心は、前体制と目標を変えずに順序を入れ替えた点にあると思われる。高付加価値化という方向は残し、まず稼働率を守る。人を売る商売では、待機の人数がそのまま粗利を削るため、単価を上げる前に人を案件に戻す必要がある。顧客の約70%を呼び戻して稼働率を2か月で戻したうえで、採用で人員を積み、単価の上昇をその上に重ねた。上場直後の混乱から始まった体制が、5年で売上収益を3.4倍、営業利益を6.7倍にした事実は、この順序が需要の伸びる局面で機能したことを示している。

もっとも、この循環はDX投資という追い風と、人月という単位が疑われないことを前提に組まれていた。稼働率を守る運営は、人数に比例して報酬を受け取る構造そのものの上に立っている。生成AIが設計や分析の工程を担うようになれば、守るべき数字が稼働率のままでよいのかが問い直されるかもしれない。再建で選んだ順序が次の10年でも保つのか、答えはまだ出ていない。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
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図と表

ベイカレント:売上収益と営業利益の推移

売上収益(百万円)営業利益率(%)
ベイカレント:売上収益と営業利益の推移
(百万円) 売上収益営業利益 備考
2015年2月期 5,565− 第1期。事業は2014年10月からの5か月分
2016年2月期 15,8343,215
2017年2月期 17,1883,222 12月に社長交代。下半期の営業利益は前年同期を下回る
2018年2月期 20,4384,150 期初予想は売上収益20,200・営業利益3,900
2019年2月期 24,2944,489
2020年2月期 32,9788,038
2021年2月期 42,87313,551
2022年2月期 57,64221,518
出所:ベイカレント・コンサルティング 有価証券報告書 第3期〜第8期(IFRS に基づく経営成績の分析)
出所:ベイカレント・コンサルティング 有価証券報告書 第3期〜第8期(IFRS に基づく経営成績の分析)

ベイカレント:従業員数の推移

従業員数(人)
ベイカレント:従業員数の推移
(人) 従業員数
2015年2月期 919
2016年2月期 1,096
2017年2月期 1,194
2018年2月期 1,358
2019年2月期 1,531
2020年2月期 1,839
2021年2月期 2,161
2022年2月期 2,638
出所:ベイカレント・コンサルティング 有価証券報告書 第3期・第8期【主要な経営指標等の推移】
出所:ベイカレント・コンサルティング 有価証券報告書 第3期・第8期【主要な経営指標等の推移】
参考文献

参考文献

参考

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