2000年に堀紘一はBGC(ボストン・コンサルティング・グループ)から独立して、ドリームインキュベータを設立した。
大企業に対するコンサルティング事業を運営することによってキャッシュを得つつ、そのキャッシュをベンチャー企業に対して自己資金で投資を行うことで、日本の産業を活性化させることを目的とした。
このため、堀紘一氏は創業時に「ホンダやソニーを100社育てる」という構想を掲げている。
2000年に堀紘一はBGC(ボストン・コンサルティング・グループ)から独立して、ドリームインキュベータを設立した。
大企業に対するコンサルティング事業を運営することによってキャッシュを得つつ、そのキャッシュをベンチャー企業に対して自己資金で投資を行うことで、日本の産業を活性化させることを目的とした。
このため、堀紘一氏は創業時に「ホンダやソニーを100社育てる」という構想を掲げている。
ドリームインキュベータは、2002年に東証マザーズに株式を上場した。
大企業向けのコンサルティングを主力とする企業が上場した例はなく、創業からわずか2年目の上場ということもあり、注目を集めた。
2008年にリーマンショックが発生し、投資事業による収益が悪化したことからドリームインキュベータの売上も激減した。
この時に、主力のコンサルティングがドリームインキュベータを支える事業となったが、有価証券報告書において全社売上高10%を超える顧客を2社開示した。
具体的な顧客名は「オリエンタルランド(売上比率10.2%、販売実績1.8億円、2008年3月期)」と「コーセー(売上比率13.1%、販売実績2.5億円、2007年3月期)」の2社であった。この開示により、ドリームインキュベータのコンサルティング事業が特定顧客に依存している実態が明らかになった。
なお、堀紘一氏(2011/6/25週刊東洋経済)によれば、2011年時点におけるコンサルティングの費用計算式は次の通りであったという。
「通常、月に2000万円から3000万円のコンサルティング料をいただく。その算出式は極めてシンプルで、コンサルタント1人の年間労働時間2080時間(1日8時間×週5日×52週)をベースに、時間単価、所要時間・人数、マルチプライヤー(乗数)を掛けてはじき出す」
また、有価証券報告書に記載された、販売先及び売掛金明細から判明している取引先は、下記の通りである(なお、ドリームインキュベータは流石にまずいと思ったのか、2012年3月期以降、売掛金の企業別の開示を停止した)。
2011年にドリームインキュベータは、ゴールドマンサックスが株式を保有していた「アイペット損害保険」の株式を81.2%(議決権ベース)を11.8億円で取得した。
アイペット保険の株式の過半数を取得したことによって、ドリームインキュベータは2012年3月期決算からアイペット保険の売上高を連結化した。これによってドリームインキュベータの売上高は、アイペット保険の事業成長に依存する形で増大した。
ドリームインキュベータの狙いは、収益の安定化にあった。従来の純投資における利益の形状は、株価の売却時に限られるため、継続的に事業利益を生み出すビジネスではなかった。
このため、ドリームインキュベータの収益が安定せず、上場会社として「利益がいつ計上されるかわからない」とう不確実性を抱えることになり、企業価値を毀損した。
そこで、事業投資への参入によって、別会社の株式の過半数を取得して「子会社」として運営する事業に乗り出すことで、リターンの創出を目論んだ。
2018年にアイペット損害保険は、東証マザーズに株式を上場を果たし、同社の時価総額は約200億円で推移した。
しかし、同じ時期にメルカリが株式上場によって数千億円の時価総額を記録したため、アイペット損害保険の上場は見劣りした。このため、ドリームインキュベータの株価は低迷し、創業者の堀社長も株価の低迷を問題視した。
なお、株式上場直前のドリームインキュベーターによるアイペット損害保険の株式保有比率は61%であり、上場にあたって株式の放出は実施せずに、引き続きアイペット損害保険を子会社として運営した。
この理由には、ドリームインキュベータが「少しでも高い価格で売却することを重視する」という方針を掲げていたためであるが、裏を返せばドリームインキュベータが株式の大半を市場に放出した場合、株価が下落して、時価総額が既存する恐れがあったためと推察される。
つまり、株式のブロックトレードにおける購入者が見当たらない問題があったとも推察される。機関投資家からの不人気は、アイペット損害保険における2016年の株式移転に垣間見ることができる。一部の株式がみずほ銀行系の投資会社から、秋元康兄弟(エンターテイメント業の従事者)に対して売却しており、機関投資家の買い手が見つからなかったことが推察される。
2020年3月期にドリームインキュベータは最終赤字に転落し、創業者の堀紘一は取締役ファウンダーを辞任することで要職から退いた。
また、株式上場以来、2005年をピークにドリームインキュベータの株式が低迷したため、堀紘一氏は株主総会で謝罪した。この場において、堀紘一は「現代だから切腹しないだけのことで、武士の社会であれば切腹ものです」と述べ、株主に対して頭を下げた。
2021年にドリームインキュベータは、電通と業務資本提携を締結した。電通がドリームインキュベータの株式20%を取得して、コンサルティングにおけるクロスセルなど、事業面の協業を図る目的が公表された。
ただし、この業務資本提携のもう一つの目的として、創業者である堀紘一氏が保有する株式の継承問題があったと思われる。電通が取得した20%の株式は、堀紘一氏の個人株式と、同氏の資産管理会社「ワイズマン」の株式を合わせて、電通に対して合計23億円で売却されるブロックトレードによって、市場取引の影響を受けずに異動された。
このため、電通との業務資本提携は、業務面での連携を行いつつも、創業家の株式(DIの株式は流動性が低く簡単に大量売却できない)を処分するために編み出されたスキームと推察される。
2022年頃から日本国内の投資ファンドがドリームインキュベータの株式の大量購入を開始した。
2022年に投資ファンドのヴァレックス・パートナーズ(安治郎・代表取締役)とユナイテッド・マネージャーズ・ジャパン(小柴正浩・代表取締役)は、それぞれ大量保有報告書を提出。2022年2月時点でヴァレックスはドリームインキュベータの株式を10.31%、ユナイテッドは同10.64%の株式を保有していることが判明した。
機関投資家によるドリームインキュベータの株式取得によって、同社の株式は高騰した。
なお、ヴァレックスパートナーは国内の中堅株にバリュー投資をする機関投資家であり、ドリームインキュベータの株式が割安と判断したものと推察される。