DCMホールディングス持分法適用関連会社ケーヨーの完全子会社化と、DCM株式会社への吸収合併

仕入の9割を供給する相手を、提携先のまま置くか、一つの会社にするか

時期 2023年9月
意思決定者(推定) 石黒靖規(代表取締役社長兼COO)・取締役会
論点 提携先の取り込みと店舗網の統合
概要
2024年1月、DCMホールディングスが公開買付けと株式等売渡請求により、持分法適用関連会社であった株式会社ケーヨーの全株式を取得して完全子会社とし、同年9月にDCM株式会社を存続会社として吸収合併した経営判断。取得原価は687億5,300万円であった。
背景
両社の関係は1990年代のジャスコを交えた3社共同仕入れと共同ブランドに始まる。2017年1月の資本業務提携で持分法適用関連会社となり、2019年にはケーヨーの仕入の92パーセントをDCMホールディングスが供給していた。
内容
2023年9月29日の取締役会で公開買付けを決議し、11月20日に90.70パーセントを取得して連結子会社化、2024年1月9日に完全子会社化。のれん263億3,400万円を20年で均等償却し、2024年9月の合併でケーヨーデイツーの店名を「DCM」へ統一した。
含意
商品供給で7年かけて実質的な一体化を進めてから資本を動かす手順をとった。連結売上高は5,361億円へ伸びた一方、従業員数の減少と20年にわたるのれんの償却負担が残る。同じ手順はエンチョー・ホームテックの子会社化にも続いた。
筆者の見解

92パーセントの供給先を、なぜ7年も外に置いたのか

ケーヨーの仕入の92パーセントをDCMホールディングスが供給していた2019年の時点で、商品の面では両社はほとんど一つの会社であった。それでも資本は20.1パーセントにとどまり、取締役会は二つに分かれたままであった。2023年に公開買付けへ動いた理由として有価証券報告書が挙げたのも、価格でも規模でもなく、協業上の制約を無くした意思決定の体制であった。商品で7年確かめてから資本を動かす順序に、この会社の買い方がうかがえる。

統合が数えられる形で効いたのは、いまのところ規模の側だけである。2025年2月期の売上高が前期比111.4パーセントとなったのはケーヨーの売上917億円を取り込んだ結果であり、既存の店が強くなったことの証明ではない。連結従業員数は4,955人から4,646人へ減り、当期純利益は段階取得に係る差益が消えて171億円へ落ちた。20年で償却するのれん233億円も残る。共同仕入れに始まった関係を一つの会社に畳み終えるには、まだ時間がかかるとみられる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

背景

共同仕入れで結ばれた1990年代

DCMホールディングスとケーヨーの関係は、資本ではなく商品の共同仕入れから始まった。1997年5月の証券アナリスト向け講演で、ケーヨー常務取締役の儘田公明氏は、粗利益率を26パーセント台へ引き上げる手立てとして、ジャスコ、北海道のホーマックと自社の3社による共同仕入れを挙げている。前期の実績は41億円、今期は100億円を目指すと述べた。ホーマックは、のちにDCMホールディングスを構成する3社の一つとなる会社であった[1]

共同仕入れは共同ブランドの開発にまで進んだ。翌1998年4月の講演で、専務取締役に就いていた儘田氏は、自社ブランド「得だね」が1,200アイテムで90億円、「なかよしクラブ」が15億円の売上をあげていることに続けて、新しくジャスコ・ホーマックとの共同ブランド「プライス・ファースト」を開発し、目下50億円の売上になっていると述べている。当時のケーヨーは売上1,531億円、店舗106店の規模であった[2]

資本でつなぎ直すまでの20年

共同仕入れの相手を資本で結び直すまでには、さらに20年近くを要した。DCMホールディングスは2016年4月5日の取締役会で、ケーヨーとの業務提携および将来的な経営統合に向けた協議について合意し、覚書を締結する。2017年1月5日には資本業務提携契約を結び、ケーヨーが実施する第三者割当増資を引き受けた。議決権の所有割合は20.1パーセントとなり、ケーヨーはDCMホールディングスの持分法適用関連会社になった[3]

提携の中身は、商品の供給に集中した。2018年2月期のケーヨーへの商品供給売上は36億3,400万円にとどまっていたが、2020年2月期上期にはプライベートブランドだけで56億6,800万円、前年同期比15億7,700万円増となり、ナショナルブランドを合わせた商品供給高は347億4,100万円に達した。ケーヨーの仕入の92パーセントをDCMホールディングスが供給する状態になっていた[4][5]

決断

商品は一つ、意思決定は二つ

2019年10月2日の決算説明会で、取締役の熊谷寿人氏は提携の効き方を数字で示した。ケーヨーに対する持分法投資損益は前年同期の6,400万円の損失から2億6,700万円の利益へ転じ、天候不順による営業減益を補って経常増益をもたらした。同じ説明会では、DCM側673店にケーヨーの175店を加えた848店の店舗網と、ケーヨーと合わせて5,500億円相当という売上規模も語られている[6][7]

商品と店舗が一体に近づくほど、資本と意思決定が二つに分かれていることの不便が目立った。2023年9月29日、DCMホールディングスは取締役会でケーヨー株式の公開買付けを決議する。有価証券報告書は理由を、両社にある協業上の制約を無くして機動的で統一感のある意思決定ができる体制を作ることがグループの総合力を高める、と記した。決めたのは、ホーマックの前身である石黒商店に1986年に入社した石黒靖規社長であった[8][9]

公開買付けから株式等売渡請求へ

取得は二段階で進んだ。2023年11月20日にDCMホールディングスはケーヨー株式の90.70パーセントを取得して連結子会社とし、みなし取得日を11月30日に置いた。企業結合の直前に保有していた議決権は31.87パーセントで、その株式の企業結合日時価241億5,500万円と、追加取得分の対価445億9,700万円を合わせた取得原価は687億5,300万円となった。アドバイザリー費用等は5億9,000万円であった[10]

残余の株式は株式等売渡請求で取得し、2024年1月9日にケーヨーは完全子会社となった。段階取得に係る差益76億9,400万円が2024年2月期に立ち、のれんは263億3,400万円を20年の均等償却とした。DCMホールディングスは2024年4月12日の取締役会でDCM株式会社を存続会社とする吸収合併を決議し、同年9月1日に実施する。ケーヨーデイツーの店舗名は、その日に「DCM○○店」へ改められた[11][12]

結果

統合初年度の数字

2024年2月期末の店舗数は、ケーヨーの店舗を加えて840店となった。連結売上高は2024年2月期の4,813億円から2025年2月期に5,361億円へ、前期比111.4パーセントとなり、営業利益は287億円から332億円へ、前期比115.8パーセントとなった。ケーヨーの連結子会社化により販売費及び一般管理費は190億1,400万円増えたが、DCMホールディングスは全体の管理でこれを吸収した[13]

動いたのは売上だけではない。連結従業員数は2023年2月期の4,102人から2024年2月期に4,955人へ増え、翌2025年2月期は4,646人へ減っている。平均臨時雇用者数は1万1,739人であった。親会社株主に帰属する当期純利益は、段階取得に係る差益が剥落した2025年2月期に171億4,400万円、前期比79.9パーセントとなる。合併直前のケーヨー単体は、2024年2月期に売上917億円、営業利益45億円をあげていた[14][15]

ケーヨーのあとに続いたもの

ケーヨーの取り込みは、そのあとの連続した買収の先例となった。DCMホールディングスは2025年9月に、静岡県を中心に店舗網を持つエンチョーを株式交換により完全子会社とし、同年12月には東京都・神奈川県・埼玉県でリフォーム業を営むホームテックの全株式を取得した。店舗網は全国918店に広がっている。商品で結んだ相手を資本で束ねるという順序が、次の相手にも繰り返された[16]

買収の代価は、のれんとして貸借対照表に残った。ケーヨーに係るのれんは2025年2月期末で246億8,800万円、2026年2月期末で233億7,200万円である。DCMホールディングスは、資本業務提携以来の経緯と2024年9月の合併により業績は安定しているとして、減損の兆候を認識していないと記した。中期経営計画は2029年2月期に売上高6,500億円、営業利益率6.5パーセント、自己資本利益率8.0パーセントを掲げる[17][18]

出典・参考
  • 証券アナリストジャーナル 1997年6月号 別冊付録「企業」ケーヨー(儘田公明・ケーヨー常務取締役、1997年5月8日講演)
  • 証券アナリストジャーナル 1998年5月号 別冊付録「企業」ケーヨー(儘田公明・ケーヨー専務取締役、1998年4月24日・28日講演)
  • DCMホールディングス 2020年2月期第2四半期決算説明会(2019年10月2日開催)
  • DCMホールディングス 有価証券報告書(2017年2月期・2018年2月期・2024年2月期・2025年2月期・2026年2月期)

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