オープンハウスグループ273億円でホーク・ワンを買収し戸建供給力を一段拡大
出店と採用で棟数を積むか、年間2,000棟を建てる同業をまとめて買うか
- 概要
- 2018年7月31日、オープンハウスは取締役会でホーク・ワンの株式取得と簡易株式交換による完全子会社化を決議した。買収額は273億円で、当時の同社にとって過去最大のM&Aとなった。
- 背景
- 上場した2013年9月期から2017年9月期まで毎期増収増益を続け、売上高は970億円から3,047億円へ3.1倍になっていた。狭小戸建の商品と源泉営業の仕組みは完成していたものの、出店エリアの拡大は人材の採用と教育の速度に縛られていた。
- 内容
- 発行済株式44,000株のうち26,224株を約200億円で取得して議決権の69.68%を押さえ、残りは株式交換比率1対119.0の簡易株式交換で取り込んだ。株式交換の効力発生日は2018年10月1日で、現金分の200億円は全額を借入金で賄った。
- 含意
- 首都圏の準都心部と名古屋地区で年間2,000棟を供給するホーク・ワンが加わり、両社を合わせた供給棟数は7,000棟規模となった。2018年9月期の戸建関連事業セグメント売上高は2,185億円へ伸び、翌2019年9月期には中期経営計画の売上高5,000億円を1年前倒しで超えた。
時間を買うことの値段
273億円という金額は、2018年9月期の営業利益473億円と並べれば飛び抜けて大きくはない。それでも過去最大のM&Aと呼ばれたのは、同社がそれまで自前の出店で伸びてきたからであろう。仕組みは完成しているが人が足りない、という制約に対して、営業所と社員と職人を一括して抱える会社をそのまま買う選択は、採用と教育に費やす年数を金額に置き換えた判断とみることができる。のれんが約23億円で済んだ点も、実体のある資産と稼ぐ力を素直な値段で買った取引だったことを示している。
もっとも、買った側が身につけたのは供給の厚みだけではない。都心部と準都心部という営業の住み分けを保ち、相手の社名と社長を残したまま棟数を足すという運び方は、以後の同社のM&Aの型となった。2020年のプレサンスコーポレーション、2023年の三栄建築設計と、規模も事情も異なる案件が続いたなかで、この型がどこまで通用するかは案件ごとに違った答えが出ている。時間を買う取引は速いが、買った時間の使い方までは値札に書かれていない。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
背景
上場後5年で売上3.1倍
2013年9月に東証一部へ上場したオープンハウスは、そこから毎期増収増益を続けた。連結売上高は2013年9月期の970億円から、2014年9月期1,121億円、2015年9月期1,793億円、2016年9月期2,472億円、2017年9月期3,047億円と4年で3.1倍になり、経常利益も92億円から361億円へ伸びた。荒井社長は上場直後の2014年に、建売の年間販売を3〜4倍へ増やす構想を語っている。棟数を積むことが経営目標として先に置かれていた[1][2]。
追い風は市況の側にもあった。東京都区部の新築マンション平均価格は2017年に7,000万円を超え、購入を検討していた層が戸建にも目を向けた。同社の建売価格は土地付きで平均4,400万円で、資材の価格交渉によって横ばいを保っていた。通勤時間を30分以内に抑えたい共働き世帯という買い手像は、都心部の狭小地に木造3階建ての3LDKを供給する商品と重なっていた[3]。
出店を縛っていたのは人だった
供給棟数を増やす経路は二つある。営業所を増やして自前で建てるか、すでに建てている会社を買うかである。前者について、企画本部長の若旅孝太郎取締役執行役員は2018年3月の時点で、戸建事業の仕組みの完成度は高く出店エリアを拡大すれば一定程度は勝てると述べつつ、人員に余裕があればもっと出せるものの人材の採用と教育が追いついていないと語っていた。仕組みではなく人が拡大の制約になっていた[4]。
後者については先例があった。2015年1月、オープンハウスは茨城県つくば市に本社を置く木造戸建分譲会社のアサカワホームを100%子会社化し、関東圏の供給戸数を広げている。同社の2015年9月期のセグメント売上高は213億円で、買収の効果はその期の数字に表れた。同社は2016年10月にオープンハウス・アーキテクトへ商号を改め、グループの建築機能として組み込まれた。買った会社を自社の建築部門として扱う型が、この時点でできていた[5][6]。
決断
現金200億円と株式交換の併用
2018年7月31日、オープンハウスは取締役会でホーク・ワンの株式取得と簡易株式交換の実施を決議した。ホーク・ワンの発行済株式44,000株のうち26,224株を取得し、議決権所有割合を69.68%とする。取得価額は約200億円であった。残る11,411株は株式交換で自社株式に振り替え、ホーク・ワンが保有する自己株式6,365株は同社が消却する段取りである。株式取得日は同年7月31日と9月28日、株式交換の効力発生日は10月1日と定められた[7][8]。
現金と株式交換を併せた総額は273億円で、内訳は現金200億円と簡易株式交換73億円相当である。オープンハウスにとって過去最大のM&Aとなり、現金分の200億円は全額を借入金で賄った。株式交換比率はオープンハウス1株に対しホーク・ワン119.0株で、非上場のホーク・ワンの1株価値は第三者算定機関の評価を踏まえ754,000円と決めている。株式交換を併用した理由について、同社は完全子会社化による価値の向上をホーク・ワンの既存株主にも受け取ってもらうためと説明した[9][10]。
都心部と準都心部を埋め合う
ホーク・ワンは1995年5月設立、東京都杉並区に本社を置き、首都圏と名古屋地区の準都心部のベッドタウンを中心に住宅分譲を手がける会社である。従業員は321名、2017年10月期の売上高は639億円、営業利益45億円で、年間2,000棟の供給が見込まれていた。オープンハウスは中期経営計画「Hop Step 5000」で戸建関連事業の競争力強化として事業展開エリアの拡大、開発及び建設機能の強化、グループ経営の促進を掲げており、都心部を中心に年間5,000棟の供給を予定していた[11][12]。
買う理由は棟数の足し算だけではなかった。オープンハウスは都心部、ホーク・ワンは準都心部という営業の重なりの薄さを挙げ、両社で首都圏の都心部から準都心部までを網羅できると説明している。合計の年間供給棟数は7,000棟規模となり、資材調達などで規模の利点が働く。ホーク・ワンの物件販売に自社グループの製販一体型の運営体制を組み合わせることも掲げられた。代表取締役社長の平塚寛之氏は統合後も社長を続ける予定と明記され、買った会社の経営陣をそのまま残す形が取られた[13][14]。
結果
1年前倒しで超えた5,000億円
決議から2カ月後の2018年10月1日、簡易株式交換の効力が発生し、ホーク・ワンは完全子会社となった。2018年9月期の戸建関連事業セグメントは売上高2,185億円・利益262億円、連結では売上高3,907億円・営業利益473億円・経常利益461億円・親会社株主に帰属する当期純利益318億円である。買収に伴うのれんは2018年9月末で約23億円にとどまり、10年間で均等償却する扱いとした。過去最大のM&Aにしては、貸借対照表に残った買収プレミアムは小さかった[15][16]。
2018年11月、オープンハウスは中期経営計画「Hop Step 5000(更新)」を公表した。2018年10月から2020年9月までの2年で売上高5,000億円・営業利益600億円を目指す内容で、前年の同名計画にホーク・ワンの寄与を織り込んだ上方修正にあたる。結果は2019年9月期の連結売上高5,403億円・営業利益578億円で、売上目標を1年前倒しで超えた。買収は棟数と売上を短期間で押し上げ、計画の時間軸そのものを縮めた[17][18]。
買った会社を建てる側として残す
ホーク・ワンはグループ入り後も社名と経営陣を保ち、準都心部の分譲会社として営業を続けた。オープンハウス側の営業所は都心部の駅前に集中しており、両社の顧客は所得と通勤圏の面で重なりが薄い。買収後の同社は関西や愛知への出店を自前で進めながら、供給の厚みは買った会社に担わせるという二本立てで棟数を伸ばした。2021年9月期には戸建棟数が1万棟を超え、2023年9月期に1.2万棟超を掲げるまでになる[19]。
買収の型もここで固まった。荒井社長は2021年1月の取材で、既存事業の積み上げだけで売上高1兆円には届くとしたうえで、エリアを補完できる同業のM&Aや、グループ外へ発注しているマンション建築を担えるゼネコンのM&Aに積極的に挑戦したいと述べている。ホーク・ワンで確かめた「エリア補完型の買収」は、2023年の三栄建築設計の取得へつながった[20]。
- オープンハウス「株式会社ホーク・ワンの株式取得及び簡易株式交換(完全子会社化)に関するお知らせ」(2018年7月31日)
- M&A Online 2018年11月20日「【オープンハウス】「都心戸建」で快進撃、M&Aで基盤固める」
- オープンハウスグループ 有価証券報告書【沿革】
- オープンハウスグループ 有価証券報告書(2017年9月期・連結)/(2018年9月期・連結)/(2019年9月期・連結)
- オープンハウスグループ 決算説明会 第22期(2018年9月期)
- 日刊工業新聞 2014年6月27日「インタビュー/オープンハウス社長・荒井正昭氏」
- 週刊東洋経済 2018年3月24日号「ニュース深掘り 株up&down 「東京に、家を持とう。」で躍進」
- 週刊東洋経済 2021年1月16日号「〔第1特集 激動 マンション・住宅〕PART2 販売最前線 住宅販売のリアル 戸建て編 “あの手この手”の総力戦」
- 週刊東洋経済 2022年9月10日号「〔特集 ゼネコン「両利きの経営」〕PART2 新時代の「両利きの経営」 オープンハウス関西猛攻 1.2兆円市場に食い込む営業力」