ホーク・ワンを買収(2018年・オープンハウスグループの決断)

更新:
論点 戸建の供給力を買収で拡大するか
オープンハウスグループ:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
準都心部の同業の子会社化による、首都圏での戸建の事業エリアの拡大

何をなぜ決めたか:準都心部の同業の子会社化による、首都圏での戸建の事業エリアの拡大

概要

2018年7月31日、オープンハウスの取締役会は、ホーク・ワンの発行済株式の一部を取得し、その後の簡易株式交換で完全子会社とすることを決議した。同日に議決権の42.0%を現金19,772百万円で取得し、8月7日には非支配株主から7,841百万円で株式を追加取得した。8月の取得分を含めた議決権の所有割合は69.7%となった。

残る株式30.3%は、2018年10月1日に効力が生じた株式交換で取得し、ホーク・ワンは完全子会社となった。買収額は273億円相当で、内訳は現金約200億円と簡易株式交換73億円相当、現金は全額を借入金で調達した。のれんは2,304百万円を計上し、10年で均等償却する。

背景

オープンハウスは1997年に不動産仲介から事業を始め、用地の仕入から建設・販売までをグループ内で完結する製販一体の体制を構築した。2017年11月には中期経営計画「Hop Step 5000」を策定し、売上高5,000億円を目標に置いた。戸建関連事業では事業展開エリアの拡大と開発・建設機能の強化を進め、都心部を中心に年間5,000棟の供給を予定していた。

成長は速かった。連結売上高は2014年9月期の112,145百万円から、2018年9月期には390,735百万円へ増えた。2018年9月期の戸建関連事業は売上高218,540百万円、営業利益26,276百万円である。ホーク・ワンの取得の主な理由は、戸建分譲での首都圏の事業拡大を加速することにあった。

内容

ホーク・ワンは1995年5月設立の東京都杉並区の住宅分譲会社で、首都圏と名古屋地区の準都心部を地盤に年間2,000棟の供給を見込んでいた。2017年10月期の売上高は63,901百万円、営業利益は4,517百万円である。営業拠点はオープンハウスの36に対しホーク・ワンが27で、平均価格は都心部の44百万円に対し準都心部は38百万円だった。

発行済株式44,000株のうち26,224株を株式取得、11,411株を株式交換で取得し、自己株式6,365株はホーク・ワンが消却する手順を取った。ホーク・ワンの1株価値は第三者機関の算定を踏まえて754,000円とし、ホーク・ワン株式1株にオープンハウス株式119.0株を割り当てた。交付した1,357,909株には自己株式を充てた。

含意

ホーク・ワンの損益が通期で加わった2019年9月期、戸建関連事業の売上高は340,528百万円(前期比55.8%増)、営業利益は32,620百万円となった。ホーク・ワン単体の売上高は82,453百万円、経常利益は5,508百万円である。連結売上高は540,376百万円に達し、「Hop Step 5000」は最終年度の2020年9月期に目標の5,000億円を大きく上回って終えた。

その後もホーク・ワンの売上高は増え、2021年9月期は105,329百万円、2025年9月期は163,982百万円となった。経常利益は2021年9月期の12,946百万円から2023年9月期に9,614百万円へ減り、2025年9月期は14,780百万円だった。この間、オープンハウスは2021年1月にプレサンスコーポレーション、2023年10月に三栄建築設計を連結子会社とした。

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考察:出店の年数を買った273億円
考察

考察:出店の年数を買った273億円

なぜ自前の出店ではなく買収だったのか。オープンハウスは都心部に営業センターを開設し、棟数を積み上げてきた。ところが、都心部に集中した体制のままでは準都心部の需要に届かない。ホーク・ワンはその準都心部に27の営業拠点を持ち、年間2,000棟を供給する見込みだった。同じ規模を自前で築くなら、用地の仕入と施工の人員を何年もかけて育てる必要があったはずである。273億円の買収は、その年数を金額に置き換える選択だったとみられる。のれんが2,304百万円にとどまった点からも、買ったのは主に土地と建物の在庫と販売の体制だったと読める。

もっとも、ホーク・ワンを吸収せず、社名と経営陣を残す方針を取ったことには裏側がある。都心部と準都心部で価格帯を分けたまま並べれば、両社の販売網は重ならない。引き継ぎの混乱も小さく済む。しかし統合の効果に挙げた仲介網を通じた販売は、両社の運営を近づけなければ成果が出にくい。別会社のまま残す方式は、摩擦を避ける代わりに、相乗効果を数字で確かめにくくする選択でもあったと思われる。棟数を足すことと、製販一体の体制に組み込むことは、同じではなかった。

数字を見ると、規模の拡大は当たった。ホーク・ワンの売上高は2019年9月期の82,453百万円から2025年9月期の163,982百万円へ約2倍になった。一方で、経常利益は2021年9月期の12,946百万円から2023年9月期に9,614百万円へ減り、売上高の伸びと利益が並んで動いたわけではない。この買収の後、オープンハウスはプレサンスコーポレーションと三栄建築設計を相次いで連結した。ホーク・ワンで試した、相手の会社を残して棟数を足す方式が通用するかは、利益率を保てるかで決まるのかもしれない。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
数字で見る 3表

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図と表

オープンハウスグループ:戸建関連事業セグメントの推移

売上高(百万円)セグメント利益率(%)
オープンハウスグループ:戸建関連事業セグメントの推移
(百万円) 売上高セグメント利益 備考
2017年9月期 187,94923,095 第22期が組み替えた比較情報。提出時は3区分に分かれていた
2018年9月期 218,54026,276 ホーク・ワンは期末の貸借対照表のみ連結し、損益は含まない
2019年9月期 340,52832,620 ホーク・ワンの損益が通期で加わった
2020年9月期 379,65640,677
2021年9月期 446,95962,294
2022年9月期 516,55463,014
2023年9月期 590,34263,178
出所:オープンハウスグループ 有価証券報告書 第22期〜第27期【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】【セグメント情報】
出所:オープンハウスグループ 有価証券報告書 第22期〜第27期【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】【セグメント情報】

オープンハウスグループ:ホーク・ワンの業績の推移

売上高(百万円)経常利益率(%)
オープンハウスグループ:ホーク・ワンの業績の推移
(百万円) 売上高経常利益当期純利益総資産 備考
2019年9月期 82,4535,5084,66864,390 連結売上高に占める割合が10%を超え、損益が開示された
2020年9月期 87,0946,6794,62471,093
2021年9月期 105,32912,9469,19478,565
2022年9月期 125,35213,2709,33288,783
2023年9月期 135,4399,6146,821105,546
出所:オープンハウスグループ 有価証券報告書 第23期〜第27期【関係会社の状況】(主要な損益情報等)
出所:オープンハウスグループ 有価証券報告書 第23期〜第27期【関係会社の状況】(主要な損益情報等)

買収の条件

買収の条件
科目 概要 備考
被取得企業 株式会社ホーク・ワン 建設工事施工・リフォーム工事施工、不動産の売買ならびに仲介等
企業結合を行った主な理由 戸建分譲に関する首都圏における事業拡大の加速 都心部のオープンハウスと準都心部のホーク・ワンで首都圏を網羅する
取得の法的形式 現金を対価とする株式取得 取得企業を決定した根拠も、現金を対価に議決権の42.0%を取得したこと
企業結合日 2018年7月31日 みなし取得日は2018年9月30日。当期は貸借対照表のみを連結した
取得した議決権比率 42.0% 株主総会でオープンハウスの議決権行使に同意した者の持分17.9%を外数
取得原価 19,772百万円 対価は全額現金。決算説明会資料では現金約200億円と表記している
非支配株主からの追加取得 7,841百万円 2018年8月7日に取得。資本剰余金が1,514百万円減り議決権は69.7%へ
取得のための支出 11,178百万円 取得価額から連結開始時の現金及び現金同等物8,594百万円を差し引いた額
のれん 2,304百万円 10年間の均等償却。将来の超過収益力から発生したものとしている
受け入れた資産合計 59,929百万円 流動資産57,743百万円、固定資産2,185百万円
引き受けた負債合計 37,034百万円 流動負債36,463百万円、固定負債570百万円
非支配株主持分 6,941百万円 連結開始時。株式交換を終える2018年10月1日まで残った
通期換算した売上高 69,841百万円 期首に結合したと仮定した場合の概算額。監査証明を受けていない
通期換算した純利益 1,919百万円 同じ概算で営業利益3,277百万円、経常利益3,007百万円
株式交換の効力発生日 2018年10月1日 残る30.3%を取得して完全子会社化。共通支配下の取引として処理した
株式交換比率 ホーク・ワン1株:オープンハウス119.0株 ホーク・ワンの1株価値は第三者算定を踏まえ754,000円で合意した
株式交換で交付した株式数 1,357,909株 保有する自己株式を割り当てた
株式交換の取得原価 7,356百万円 対価はオープンハウスの普通株式(自己株式)。資本剰余金は244百万円減
買収額の総額 273億円相当 決算説明会資料の表記。8月の追加取得を含まず、取得原価の合計は34,969
出所:オープンハウス 有価証券報告書 第22期(2018年9月期)・第23期(2019年9月期)【企業結合等関係】【連結キャッシュ・フロー計算書関係】
出所:オープンハウス 有価証券報告書 第22期(2018年9月期)・第23期(2019年9月期)【企業結合等関係】【連結キャッシュ・フロー計算書関係】
参考文献

参考文献

参考
  • オープンハウス 有価証券報告書 第22期(2018年9月期)【経営上の重要な契約等】
  • オープンハウス 有価証券報告書 第22期(2018年9月期)【注記事項】(企業結合等関係)
  • オープンハウス 有価証券報告書 第22期(2018年9月期)【沿革】
  • オープンハウス 有価証券報告書 第23期(2019年9月期)【注記事項】(企業結合等関係)
  • オープンハウス 有価証券報告書 第22期(2018年9月期)【主要な経営指標等の推移】
  • オープンハウス 有価証券報告書 第22期(2018年9月期)【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
  • オープンハウス 有価証券報告書 第23期(2019年9月期)【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
  • オープンハウス 有価証券報告書 第23期(2019年9月期)【関係会社の状況】
  • オープンハウスグループ 有価証券報告書 第27期(2023年9月期)【主要な経営指標等の推移】
  • オープンハウスグループ 有価証券報告書 第25期(2021年9月期)・第27期(2023年9月期)・第29期(2025年9月期)【関係会社の状況】
  • オープンハウスグループ 有価証券報告書 第27期(2023年9月期)【沿革】
  • オープンハウスグループ 有価証券報告書 第29期(2025年9月期)【関係会社の状況】
  • オープンハウスグループ 有価証券報告書 第22期〜第27期【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】【セグメント情報】
  • オープンハウスグループ 有価証券報告書 第23期〜第27期【関係会社の状況】(主要な損益情報等)
  • オープンハウス 適時開示「株式会社ホーク・ワンの株式取得及び簡易株式交換(完全子会社化)に関するお知らせ」
  • オープンハウス 決算説明会資料「2018年9月期 決算説明会」
  • オープンハウス 決算説明会資料「2019年9月期 決算説明会」
  • オープンハウス 有価証券報告書「第22期(2018年9月期)【経営上の重要な契約等】【注記事項】(企業結合等関係)【沿革】」
  • オープンハウス 有価証券報告書「第23期(2019年9月期)【注記事項】(企業結合等関係)【関係会社の状況】」
  • オープンハウス 有価証券報告書「第24期(2020年9月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】」
  • オープンハウスグループ 有価証券報告書「第25期〜第29期【関係会社の状況】【セグメント情報】【沿革】」

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