クリスタルグループ買収(2006年・グッドウィル・グループの決断)

更新:
論点売上3倍の相手を借入で買収するか
グッドウィル・グループ:業績の推移
売上高(億円)経常利益率(%)
事業領域の重なりを理由とした、売上が自社の3倍の請負最大手の借入による取り込み

何をなぜ決めたか:事業領域の重なりを理由とした、売上が自社の3倍の請負最大手の借入による取り込み

概要

2006年10月31日、グッドウィル・グループが業務請負最大手のクリスタルの議決権67%を取得し、連結子会社とした経営判断。取得原価は725億28百万円で、内訳は現金724億98百万円と取得に直接要した業務提供報酬30百万円である。同日にバンテクノの議決権100%も157億86百万円で取得した。

企業結合を行った理由に挙げたのは、自社グループとクリスタルグループの事業領域が大部分において重なっており、業務面でのシナジー効果が発揮されて収益拡大が見込めることであった。買収資金871億円は借入で調達している。

背景

買い手は2006年6月期の連結売上高1,859億48百万円・経常利益67億4百万円で、従業員は1万855人。1995年設立の軽作業請負を祖業とし、日雇い派遣と介護を両輪に2004年以降は買収を連ねていた。自己資本比率は35.4%、自己資本利益率は8.0%である。

相手は1974年に京都市で設立された業務請負の最大手で、オーナーの実質一人株主による未上場会社。約300社の子会社を抱え、企業結合日に受け入れた資産は流動資産1,488億30百万円・固定資産468億98百万円、引き受けた負債は流動負債1,019億91百万円・固定負債170億円に及んだ。買収と同じ2006年10月、中核子会社が大阪労働局から偽装請負を理由とする事業停止命令を受けている。

内容

連結に算入したプレミアグループの業績は2006年10月1日から2007年3月31日までの6か月分で、これにより売上高は前期比3,230億52百万円増の5,090億1百万円となった。増加分のうち2,472億31百万円はクリスタルの取得によって生じた。

営業利益も取得によって88億30百万円押し上げられたが、コムスンの営業利益が67億79百万円減少し、支払利息が19億91百万円増加したため、経常利益は67億94百万円と前期から89百万円の微増にとどまった。計上したのれんは221億73百万円で、今後の事業展開によって期待される将来の収益力を発生原因とし、20年間で均等償却する方針を採っている。

含意

2007年6月期の総資産は前期末比2,270億96百万円増の3,666億38百万円となり、のれんは642億47百万円へ倍増した。短期借入金は1,680億4百万円まで拡大し、少数株主持分は250億55百万円増加している。

一方で純資産は147億75百万円減の359億57百万円、自己資本比率は35.4%から2.6%へ低下した。当期純損益は減損損失312億13百万円などを計上して407億8百万円の損失となり、従業員数は1万855人から4万9,206人になった。

いつ何が起きたか9件
考察:借入金で買収した売上
考察

考察:借入金で買収した売上

取得原価725億28百万円に対し、買収資金871億円はそのまま借入であった。連結売上高は1,859億円から5,090億円へ3倍になったが、それを支える自己資本は増加せず、自己資本比率は35.4%から2.6%へ低下している。買ったのは売上の流れであって、資本ではなかった。議決権も67%にとどめており、残る3分の1は買収後も外に置かれたままである。規模だけが先に来たと推察される。

もっとも、買った事業そのものが不振だったわけではない。6か月の算入で営業利益は88億30百万円押し上げられている。それを打ち消したのは、同じ期にコムスンが失った67億79百万円の営業利益と、借入に伴う支払利息19億91百万円であった。介護と日雇い派遣という既存の両輪は、買収の前からすでに軋んでいた。売上3倍の会社を全額借入で抱えたことは、その軋みを吸収する余地を自ら消したということだったのかもしれない。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
数字で見る4表

数字で見る

図と表

グッドウィル・グループ:のれんと総資産の推移

のれん(百万円)のれん以外の無形固定資産(百万円)
グッドウィル・グループ:のれんと総資産の推移
(百万円)のれん無形固定資産総資産備考
2002年6月期−−28,314
2003年6月期−−38,485
2004年6月期−−88,666
2005年6月期32,26232,791125,459表示科目は連結調整勘定
2006年6月期32,97833,540139,541
2007年6月期64,24775,992366,638クリスタル買収でのれんが312億68百万円増加。買収分は221億73百万円
2008年6月期52,73164,448202,040のれんの減損71億31百万円を計上。連結子会社の廃業によるもの
2009年6月期34,49643,909110,354社名はラディアホールディングス
出所:グッドウィル・グループ 有価証券報告書 第12〜15期(連結貸借対照表)
出所:グッドウィル・グループ 有価証券報告書 第12〜15期(連結貸借対照表)

グッドウィル・グループ:連結業績の推移

売上高(百万円)経常損益率(%)
グッドウィル・グループ:連結業績の推移
(百万円)売上高経常損益当期純損益備考
2002年6月期47,2953,6572,401
2003年6月期62,2724,8142,548
2004年6月期93,0425,5392,704
2005年6月期142,1574,3201,463
2006年6月期185,9486,7043,429
2007年6月期509,0016,794△40,708売上高の増加3,230億52百万円のうち2,472億31百万円がクリスタルの取得による
2008年6月期584,322△12,702△27,416買収後はじめての通期寄与。経常損益が損失に転じた
2009年6月期312,638△5,117△16,586
出所:グッドウィル・グループ 有価証券報告書 第12〜15期(連結損益計算書)
出所:グッドウィル・グループ 有価証券報告書 第12〜15期(連結損益計算書)

グッドウィル・グループ:従業員数の推移

連結従業員数(人)
グッドウィル・グループ:従業員数の推移
(人)連結従業員数提出会社従業員数備考
2002年6月期2,408636
2003年6月期3,620749
2004年6月期5,6591,102
2005年6月期8,32189
2006年6月期10,85573
2007年6月期49,2061241年で3万8,351人増。持株会社の従業員は124人にとどまる
2008年6月期31,765109
2009年6月期17,944200
出所:グッドウィル・グループ 有価証券報告書 第12〜15期【従業員の状況】
出所:グッドウィル・グループ 有価証券報告書 第12〜15期【従業員の状況】

買収の条件

買収の条件
科目概要備考
被取得企業㈱クリスタル取得した事業の内容は人材派遣事業等。2007年5月1日付で㈱グッドウィル・プレミアへ商号変更した
企業結合の法的形式株式取得結合後企業の名称は㈱クリスタル
企業結合日2006年10月31日
取得した議決権比率67%同じ企業結合日に㈱バンテクノの議決権100%も現金157億86百万円で取得している
取得原価72,528百万円内訳は現金72,498百万円と取得に直接要した業務提供報酬30百万円。ほかに㈱バンテクノから1,058百万円の出資がある
買収資金の調達871億円財務活動によるキャッシュ・フローに計上した買収資金。短期借入金純増額は1,090億18百万円
のれん22,173百万円暫定的な会計処理の確定により修正した額。20年間で均等償却する
のれんの発生原因今後の事業展開によって期待される将来の収益力
受け入れた資産流動資産148,830百万円固定資産は46,898百万円。米国子会社9,955百万円・欧州子会社4,133百万円ののれんを含む
引き受けた負債流動負債101,991百万円固定負債は17,000百万円
連結に含めた業績の期間2006年10月1日から2007年3月31日まで6か月間。売上高は2,472億31百万円、営業利益は88億30百万円の増加要因となった
通期換算した影響額売上高266,796百万円経常利益は12,445百万円。期首から2006年9月30日までを合算した概算で、監査証明を受けていない
条件付取得対価最大1,936百万円米国子会社の買収契約の利益成果条項。ほかに長期インセンティブプランで最大1,068百万円
出所:グッドウィル・グループ 有価証券報告書 第13期(2007年6月期)【企業結合等関係】(㈱クリスタルの株式取得)・【業績等の概要】
出所:グッドウィル・グループ 有価証券報告書 第13期(2007年6月期)【企業結合等関係】(㈱クリスタルの株式取得)・【業績等の概要】
参考文献

参考文献

参考
  • 証券アナリストジャーナル 1999年8月号 別冊付録 グッドウィル・グループ(折口雅博会長講演、1999年7月15日)
  • グッドウィル・グループ 有価証券報告書「第13期(2007年6月期)【企業結合等関係】(㈱クリスタルの株式取得)」
  • グッドウィル・グループ 有価証券報告書「第13期(2007年6月期)【業績等の概要】【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】」
  • グッドウィル・グループ 有価証券報告書「第13期(2007年6月期)【主要な経営指標等の推移】」
  • グッドウィル・グループ 有価証券報告書「第14期(2008年6月期)【企業結合等関係】【減損損失】」
  • ラディアホールディングス 有価証券報告書「第15期(2009年6月期)」

次に読む決断

免責事項およびポリシー