人口1万人強の栗駒町で取れた採算が、47都道府県への均等配置という計算の根拠になった。制度が全国同日に始まり、初年度に約4兆円の予算が動く市場で、先に拠点を並べて社名と初期シェアを押さえる算段には、当時の材料では理由があった。厚生省認定のモデル事業と1時間3730円での採算も手元にあった。外れたのは、拠点ごとに顔ぶれの違う社会福祉協議会や地元業者による利用者確保の強さで、1町の検算では測れない変数である。
同じ誤算は、在宅介護に参入した民間業者に共通していた。単価は業界予想を3割以上下回り、全国展開で競合したニチイ学館も在宅介護で41億円の営業赤字を見込んでいた。制度が生んだ需要を民間が取りに行くという設計にも、収まりの悪さがあった。他方、2か月半で4割を閉じ、1週間で1100人の希望退職を集めた速さも、拡大を決めた折口会長自身の判断による。撤退する速さは損失を止めたが、置いた拠点が検証を経ていなかったことの裏返しでもある。