名刺管理サービスでCM放映(2013年・Sansanの決断)更新:2026/07/26論点赤字を許してテレビCMに投資するかSansan:業績の推移売上高(億円)経常利益率(%)黒字経営から赤字を許す先行投資への転換と、市場そのものの創出何をなぜ決めたか:黒字経営から赤字を許す先行投資への転換と、市場そのものの創出概要2013年、Sansan(当時の商号は三三株式会社)が自己資金で支出を抑える黒字経営をやめ、第三者割当増資で得た資金を、法人向けソフトウェアとしては異例のテレビCMへ投じた経営判断。同年8月1日にサービス名を"リンクナレッジ"から"Sansan"へ改め、8月4日から関東・関西エリアでCM第1弾"面識アリ"篇の放映を始めた。背景創業から6年間に集めた外部資金は5,000万円にとどまり、黒字を計上した時期はあっても成長は加速しなかった。企業が名刺をクラウドで共有するという行為には呼び名も予算科目もなく、法人向け有料名刺管理サービスの市場規模は2013年時点で約14億円にすぎなかった。内容2013年4月に約5億円を調達し、以後2018年12月までの5年間でおよそ100億円を外部資本から調達して費用に充てた。CMのコンセプトには"名刺管理"という語を据える一方、営業の現場ではその語を避けてCRMやSFAと言い換え、認知を得る言葉と稟議を通す言葉を別に用意している。含意市場規模は2013年の約14億円から2024年に約291億円へ拡大し、同社の売上シェアは85.8%に達した。一方で販売費及び一般管理費が売上を上回る赤字は上場前まで続き、2022年にはSansan事業のタグラインから"名刺管理"が外れている。いつ何が起きたか10件考察:呼び名を確立する費用は、誰が払うのか考察考察:呼び名を確立する費用は、誰が払うのか創業から6年で集めた外部資金は5,000万円、次の5年でおよそ100億円。桁が二つ動いた資金の相当部分が、製品ではなく呼び名に向かった。企業が名刺をクラウドで共有するという行為に名前がない以上、営業をいくら重ねても比較検討の土俵に上がらない。寺田親弘社長が選んだのは、需要を取りに行くことではなく、需要の輪郭を先に描くことであった。黒字を出せる会社が黒字をやめる判断は、伸びない理由を製品ではなく市場に見立てたときにだけ成り立つと推察される。ただ、この型を成功譚として一般化するのは難しい。テレビで区分の名を広めながら、商談ではその名を伏せてCRMやSFAと言い換えていた事実は、マス広告だけでは稟議が通らなかったことを示している。販管費が売上を上回る期間も長く、資金の出し手が続かなければ途中で止まっていた。作った言葉も永続しなかった。9年後には自らタグラインから外している。市場を作る費用は、作り終えたあとに会社を縛る資産にもなるとみられる。Yutaka Sugiura, 2026年7月参考文献参考文献参考Sansan IR Day 2025 質疑応答(2025年10月30日)Sansan 有価証券報告書(2025年5月期)【沿革】Sansan 有価証券報告書(2018年5月期・連結)Sansan 有価証券報告書(2020年5月期・連結)Sansan 有価証券報告書(2019年5月期)【主要な経営指標等の推移】次に読む決断同じ問い:プラットフォームの構築1988年太陽誘電太陽誘電CD-Rの世界初商品化That''sブランドによる消費財市場への参入と、追記型光記録メディア1988年2015年GMOペイメントゲートウェイGMOペイメントゲートウェイ三井住友FGとの資本提携約80億円の第三者割当増資による大手金融グループの資本受け入れ2015年2013年NTTドコモNTTドコモiPhoneの取り扱い開始自前の端末ラインアップで囲い込む方針を解き、AndroidとiOSの二本立てへ転じた2013年2011年ダイキンダイキン冷媒R32特許の無償開放独占を捨てて普及を優先する、微燃性冷媒をめぐる知財戦略2011年2017年任天堂任天堂Nintendo Switchの発売据置と携帯に分かれていた2つの製品ラインを1台へ集約する選択2017年×出所