東京都港区にCFO株式会社が資本金100万円で設立された[1]。会計士でもソフトウェア技術者でもない経歴から出発した会社である。東京証券取引所マザーズへ上場するまでに、この設立から7年5か月かかっている。
経理を自動化するという着想は、二つの経験から出ている。美容師は女性の仕事とされていた時代に男性美容師ばかりを集め、その構えが地域で受け入れられた店だった[2]。小さな事業者が新しい価値観を持ち込む姿を、佐々木氏は間近に見ている。もうひとつはALBERTでの経理担当役員の経験で、紙を前提にした処理の煩わしさをここで知った。グーグル日本法人で中小企業を顧客に持った四年間が、技術が経営の根幹まで届いていないという確信を加えている。全国に630万あるとされる個人事業主と中小企業[3]を、freeeは創業の時点で顧客に定めた。
2013年3月、クラウド会計ソフトfreeeが公開された[4]。設計の要は統合型という考え方にある。佐々木大輔CEOは後年、統合型のクラウド会計ソフトを日本で初めて投入したところ[5]からfreeeの歴史が始まったと振り返っている。請求書を発行し、入金を管理し、支払いをするという日々の業務をこなすだけで会計帳簿が自動でできあがり、そのまま経営の分析や決算書、確定申告につながる。銀行口座やクレジットカードと連携して明細を取り込み、仕訳を自動で当てる。従来の会計ソフトが貸方と借方に数字を打ち込む道具だったのに対し、freeeは記帳を業務の副産物として扱った。同年5月に札幌で開かれたインフィニティ・ベンチャーズ・サミットのローンチパッドでは、出場12社のなかで優勝した。
料金は6月まで無料とし、7月以降は青色申告に対応する個人事業主向けを月額980円、会社法に対応する法人向けを月額1,980円に設定した。もっとも、無料と告知していた期間の内実は違っていた。佐々木大輔CEOは後年、当時は課金の仕組みそのものが未完成で、無料期間と称しながら裏でその機能を作っていた[6]と明かしている。無料期間という告知は、課金の仕組みが仕上がるまでの猶予でもあった。同年7月、会社は商号をCFO株式会社からフリー株式会社へ改め[7]、製品名を社名にした。
2014年10月、クラウド給与計算ソフトfreeeが公開された[8]。会計に続く二本目の製品で、のちに人事労務freeeへ改称される。2015年5月には電子政府の窓口であるe-Gov APIを使い、労働保険の申告をソフトから行う機能を日本で初めて備えた[9]。同年6月に会社設立freee、9月にマイナンバー管理freee、12月に金融機関向けの製品[10]と、年に三本から四本の速さで対象業務を足した。会計ソフトの会社という枠は、創業から三年で自ら外した。2014年8月には本店を東京都港区から品川区へ移した[11]。
当時のベンチャーとしては異例の規模である。資金を必要としたのは収入の入り方が従来のソフトウェアと違うためで、利用料が積み上がる前に開発と営業の費用が先に出る。2016年6月期の単体決算は売上高5億6,880万円に対し経常損失21億2,991万円と、売上の四倍に近い赤字を計上した。数字だけを見れば失敗した事業に見える。しかし月額課金では解約されない限り翌月も同じ収入が立つため、獲得した事業所の数そのものが資産として残る。この構造が投資家に共有されるまでには、なお時間がかかった。
2016年10月、freeeはみずほ銀行とAPIで接続した。メガバンクとの接続は国内で初めてである[12]。地方銀行との関係はそれより早く、2015年末に北国銀行と業務提携を結んでいる。銀行の側から見れば、自行の外に口座の明細を渡す相手が現れた。
2017年3月、freeeはクラウド会計ソフトに上場会社の金融商品取引法監査へ対応するエンタープライズプランを加えた[13]。個人事業主と創業間もない企業に絞ってきた顧客層を、上場企業まで引き上げる決定である。小さな事業者向けに作った製品を大きな企業へ売れば、求められる機能は増え、価格も上がる。ただしfreeeはこの後も主戦場をスモールビジネスに置き続けており、エンタープライズ対応は市場の乗り換えではなく、同じ製品で扱える企業規模の上限を広げる作業である。同年8月にはクラウド給与計算ソフトfreeeを人事労務freeeへ改称し[14]、給与計算だけの製品から労務管理までを含む製品へ作り直した。
競合との距離が最も近づいたのも同じ時期である。freeeは2016年10月21日、マネーフォワードのMFクラウド会計が自社の特許を侵害しているとして、差止めを求める訴訟を東京地方裁判所に起こした[15]。争点は、freeeの特許が定める対応テーブルを用いる方式と、マネーフォワードが使う機械学習で生成したアルゴリズムが同じ技術かどうかにあった。2017年7月27日、東京地裁はfreeeの請求を棄却した[16]。
2019年1月、freeeは外部の開発者が作ったアプリケーションを載せるfreeeアプリストアを開いた[17]。630万の事業者には630万通りの業務の組み方があり、自社で作れる機能には限りがあるという判断による。同年6月には、蓄積した会計データから資金繰りを予測して調達手段を示す資金繰り改善ナビを、前年10月に設立した子会社フリーファイナンスラボから公開した[18]。2019年6月期の連結決算は売上高45億円、営業損失28億円だった。
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| 2012〜2015年経理を自動化する着想から統合型クラウド会計が生まれ、無料公開から課金へ移るまで | 佐々木大輔 | CFOを設立 | ★★ | |
| 佐々木大輔 | 課金機能が未完成のままの会計ソフトfreeeの投入と、「無料期間」としての先行公開 2013年3月、CFO株式会社(現・フリー株式会社)が全自動クラウド型会計ソフト『freee』をリリースした。佐々木大輔社長は後年、この時点で製品に課金機能がなく、公には『今は無料期間中です』と告知しながら裏側で課金機能を作っていたと明かしている。 詳細を読む | ★★★ | ||
| 佐々木大輔 | 商号をCFOからフリーに変更 | ★ | ||
| 佐々木大輔 | 「クラウド給与計算ソフトfreee」を発売 | ★ | ||
| 2016〜2019年銀行とつながり上場企業にも売り、費用先行のまま株式市場へ出るまでの四年 | 佐々木大輔 | みずほ銀行との国内初のメガバンクAPI連携と、北国銀行への会計データの開放 2016年10月17日、freeeがみずほ銀行の法人向けインターネットバンキング『みずほビジネスWEB』と公式にAPI連携すると発表した経営判断。クラウド会計ソフトとメガバンクのAPI連携は国内初であった。翌2017年3月には、北国銀行と共同で会計データを銀行側が読む『リアルタイム経営シグナル』の提供を発表している。 詳細を読む | ★★★ | |
| 佐々木大輔 | 「クラウド会計ソフトfreee」にエンタープライズプランを発売 | ★ | ||
| 佐々木大輔 | アプリケーションプラットフォーム「freeeアプリストア」を発売 | ★ | ||
| 佐々木大輔 | 東京証券取引所マザーズに上場 | ★ | ||
| 2020〜2025年350億円を調達して買収を重ね、13期目に初めて営業黒字へ届くまで | 佐々木大輔 | 海外市場での一般募集により約353億円を調達 | ★★ | |
| 佐々木大輔 | 「NINJA SIGN」を提供するサイトビジットを子会社化 | ★ | ||
| 佐々木大輔 | 「freeeカード Unlimited」を発売。会計データを与信に用いる金融サービスを本格化 | ★★ | ||
| 佐々木大輔 | 業績不振によらない全固定資産の一括減損と、開発費の全額費用計上への切り替え 2022年8月12日、freeeが2022年6月期決算とあわせて、ソフトウェア資産およびM&Aに伴うのれんを含む全固定資産を一括して減損し、92億2,130万円の減損損失を特別損失に計上した経営判断。個別事業の実績不振によるものではなく、投資を加速する中長期戦略を前提とした処理であった。以後の開発費は資産に振り替えず、全額を費用として計上する方針に切り替えた。 詳細を読む | ★★★ | ||
| 佐々木大輔 | 開発費を全額費用計上に変更 | ★ | ||
| 佐々木大輔 | 「freee販売」を発売。会計・人事労務に続き販売管理まで統合領域を広げる | ★ | ||
| 佐々木大輔 | 2025年6月期に通期の営業損益が創業以来初の黒字 | ★★ |
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事実根拠:出所(freee)