2012年〜 個人の家計簿から出発し法人向けクラウド会計へ広げた創業からの5年
- 2012年東京都新宿区高田馬場においてマネーブック株式会社設立
- 2012年株式会社マネーフォワードに商号変更し、お金の見える化サービス『マネーフォワード』(現『マネーフォワード ME』)をリリース
- 2013年『マネーフォワード For BUSINESS』(現『マネーフォワード クラウド会計・確定申告』)リリース
- 2013年お金のウェブメディア『マネトク』(現くらしの経済メディア『MONEY PLUS』)リリース
- 2014年『MFクラウド請求書』(現『マネーフォワード クラウド請求書』)リリース
- 2015年金融機関利用者向け『マネーフォワード』(マネーフォワードfor◯◯)リリース
- 2015年『MFクラウド給与』(現『マネーフォワード クラウド給与』)リリース
マネーフォワードの業績推移:単体
出所:有価証券報告書等
マネックス証券から独立した辻庸介氏が始めたマネーブック
マネーフォワードは、2012年5月に東京都新宿区高田馬場でマネーブック株式会社として設立された。創業者の辻庸介氏は1976年生まれ、2001年に京都大学農学部を卒業してソニーに入社し、父と同じ経理畑に配属された。2004年に出資先のマネックス証券へ出向し、同社の留学制度第1号として米ペンシルベニア大学ウォートン校に学び、2011年にMBAを修了している。起業の動機について辻氏は「政府や金融機関が『貯蓄から投資へ』と盛んに言っていますが、日本人にとって投資までのハードルはまだ高いのが現状」と語り、投資の前段階にある家計の悩みを解こうとした。設立時の年齢は35歳で、すでに家庭も築いていた。 [1][2][3][4]
- マネーフォワード 有価証券報告書【沿革】
- [1]2012年5月に東京都新宿区高田馬場でマネーブック株式会社を設立
- 週刊東洋経済 2021年8月7日号「話題の本 著者に聞く」
- [2]辻庸介氏は1976年生まれ、2001年京都大学農学部卒業後にソニー入社、2004年マネックス証券へ出向、同社の留学制度第1号で米ペンシルベニア大学ウォートン校MBAを2011年に修了
- 週刊東洋経済 2018年5月26日号「起業家の子ども時代 出る杭を育てる」
- [3]ソニーでは父と同じ経理畑に進み、出資先のマネックス証券を経てマネーフォワードを起業した
- [4]辻氏は35歳で起業し、当時すでに家庭を築いていた
経営者を志した原点は母方の祖父にあった。祖父はシャープの2代目社長で中興の祖といわれた佐伯旭氏で、辻氏は月に一度の親戚の集まりで祖父が配る手書きの経済リポートを聞いて育った。アジアの工場で働く従業員の写真を見せながら「貧しい地域に雇用を生むと、こんなにも感謝される」と語る祖父の姿に、将来は社長になって雇用を生みたいという思いを抱いたという。父は化学メーカーの経理担当として従業員2万人を超える会社の役員まで務め、母は父の給料だけで家計をやり繰りする堅実な人だった。おカネの大切さを身近に見て育った生い立ちが、家計を扱う事業の選択に重なっている。 [5][6]
- 週刊東洋経済 2018年5月26日号「起業家の子ども時代 出る杭を育てる」
- [5]辻氏の母方の祖父はシャープ2代目社長で中興の祖といわれた佐伯旭氏
- [6]辻氏の父は化学メーカーの経理担当として従業員2万人を超える会社の役員まで務めた
設立時に出したサービスは、家計簿ではなかった。他人の資産運用を参考にしながら家計を管理するソーシャルトレーディング型のサービスで、米国で浸透していた仕組みをそのまま持ち込んだものである。ところが日本では資産や家計の内訳を見せ合うことに抵抗があり、友人などを除けば50人も使わなかった。辻氏はこの初代プロダクトを2〜3か月で閉じる決断をしている。会社は2012年12月に商号を株式会社マネーフォワードへ変更し、同じ月にお金の見える化サービス『マネーフォワード』(現『マネーフォワード ME』)をリリースした。設立から半年での方向転換が、その後の事業の骨格を決めることになる。 [7][8]
- 週刊東洋経済 2021年8月7日号「話題の本 著者に聞く」
- [7]設立時の初代プロダクトは他人の資産運用を参考に家計管理を行うソーシャルトレーディング型サービスで、友人などを除けば50人も使わず2〜3か月で閉じた
- マネーフォワード 有価証券報告書【沿革】
- [8]2012年12月に株式会社マネーフォワードへ商号変更し、お金の見える化サービス『マネーフォワード』(現『マネーフォワード ME』)をリリース
- マネーフォワード 有価証券報告書【沿革】
- [1]2012年5月に東京都新宿区高田馬場でマネーブック株式会社を設立
- [8]2012年12月に株式会社マネーフォワードへ商号変更し、お金の見える化サービス『マネーフォワード』(現『マネーフォワード ME』)をリリース
- 週刊東洋経済 2021年8月7日号「話題の本 著者に聞く」
- [2]辻庸介氏は1976年生まれ、2001年京都大学農学部卒業後にソニー入社、2004年マネックス証券へ出向、同社の留学制度第1号で米ペンシルベニア大学ウォートン校MBAを2011年に修了
- [7]設立時の初代プロダクトは他人の資産運用を参考に家計管理を行うソーシャルトレーディング型サービスで、友人などを除けば50人も使わず2〜3か月で閉じた
- 週刊東洋経済 2018年5月26日号「起業家の子ども時代 出る杭を育てる」
- [3]ソニーでは父と同じ経理畑に進み、出資先のマネックス証券を経てマネーフォワードを起業した
- [4]辻氏は35歳で起業し、当時すでに家庭を築いていた
- [5]辻氏の母方の祖父はシャープ2代目社長で中興の祖といわれた佐伯旭氏
- [6]辻氏の父は化学メーカーの経理担当として従業員2万人を超える会社の役員まで務めた
アカウントアグリゲーションの自前開発と利用者500万人への拡大
家計簿サービスの中核は、利用者に代わって銀行や証券会社、カード会社などへ定期的にログインし、最新の残高と明細を取ってくるアカウントアグリゲーション機能だった。同社はこの機能を自前で開発し、支出を住居費や食費などへ自動で分類して家計簿を組み立てた。2013年時点で社員は10人ほど、そのほとんどが金融機関やシステム会社のセキュリティ担当出身で、アルバイトは雇わなかった。利用者の名前や住所、取引に必要なパスワードは預からず、データはすべて暗号化して保管する設計をとっている。他人のおカネの情報をまとめて預かる事業は、最初から信用の設計が事業設計そのものだった。 [9][10]
- 週刊東洋経済 2013年6月15日号「特集 起業100のアイデア」
- [9]利用者に代わって金融機関へ定期的にログインし最新情報を取得するアカウントアグリゲーション機能を自前開発し、支出を住居費・公共料金・食費などへ自動分類した
- [10]2013年時点で社員は10人、ほとんどが金融機関やシステム会社のセキュリティ担当出身でアルバイトは雇っていなかった
接続先の金融機関との関係づくりには時間がかかった。サーバーの負担が急に増えたことで怒鳴られることもあったが、利用者にとっての利点を地道に説明して納得を得ていったと辻氏は振り返る。個人向けサービスの利用者数は2016年2月に350万人、2017年4月に500万人を超え、家計簿アプリの利用シェアで首位に立った。2021年時点では1200万人以上が使うサービスに育っている。一方で会社の売上高は、2013年11月期が355万円、2014年11月期が7613万円という水準にすぎない。無料で使える個人向けサービスの利用者を積み上げる段階であり、収益はまだ後から追いかけてくるものだった。 [11][12]
- [11]個人向けサービスの利用者数は2016年2月に350万人、2017年4月に500万人を突破し、家計簿アプリ利用シェアで首位となった
- 週刊東洋経済 2021年8月7日号「話題の本 著者に聞く」
- [12]2021年時点で『マネーフォワード ME』の利用者は1200万人以上
- 週刊東洋経済 2013年6月15日号「特集 起業100のアイデア」
- [9]利用者に代わって金融機関へ定期的にログインし最新情報を取得するアカウントアグリゲーション機能を自前開発し、支出を住居費・公共料金・食費などへ自動分類した
- [10]2013年時点で社員は10人、ほとんどが金融機関やシステム会社のセキュリティ担当出身でアルバイトは雇っていなかった
- [11]個人向けサービスの利用者数は2016年2月に350万人、2017年4月に500万人を突破し、家計簿アプリ利用シェアで首位となった
- 週刊東洋経済 2021年8月7日号「話題の本 著者に聞く」
- [12]2021年時点で『マネーフォワード ME』の利用者は1200万人以上
クラウド会計への進出がつくった二本目の柱
二本目の柱は法人向けだった。2013年11月に『マネーフォワード For BUSINESS』(現『マネーフォワード クラウド会計・確定申告』)をリリースし、明細データの取得と仕訳の入力を自動で行うクラウド会計へ進出する。以後、2014年5月に請求書、2015年3月に給与、2015年8月にマイナンバー、2016年1月に経費と、バックオフィス業務のプロダクトをほぼ毎年積み増していった。個人の家計を扱うために作った金融機関との接続と自動分類の技術が、そのまま企業の経理を扱う道具になった格好である。売上高は2015年11月期の4億4170万円から2016年11月期に15億4218万円へ伸び、法人向けが会社の成長を牽引する構図が見え始めた。 [13][14]
- マネーフォワード 有価証券報告書【沿革】
- [13]2013年11月に『マネーフォワード For BUSINESS』(現『マネーフォワード クラウド会計・確定申告』)をリリース
- [14]2014年5月に請求書、2015年3月に給与、2015年8月にマイナンバー、2016年1月に経費の各クラウドサービスをリリース
金融機関との関係は、接続先から提携先へ変わっていく。2016年3月には住信SBIネット銀行と、日本の銀行では初めてとなるAPI連携を開始した。利用者が銀行のIDとパスワードを同社に預けることなく残高や入出金明細を照会できる仕組みで、同行の円山法昭社長は「銀行は金融業のプロであってもテクノロジー企業ではない」と語り、開発コストの節約と安全確保を両立できたと評価している。2015年11月には金融機関の利用者向けに提供する『マネーフォワード for ◯◯』を投入し、自社サービスを金融機関のチャネルに載せる形も整えた。2017年3月時点で、個人向けと法人向けを合わせて17の金融機関と協業する規模になっていた。 [15][16][17][18]
- 週刊東洋経済 2017年3月25日号「第1特集 銀行マンの運命」
- [15]2016年3月に住信SBIネット銀行と日本の銀行では初めてのAPI連携を開始した
- [16]住信SBIネット銀行の円山法昭社長は、API連携により安全確保とサービス開発コストの節約を両立できたと述べた
- [18]2017年3月時点で家計簿アプリとクラウド会計の両事業を合わせて17の金融機関と協業していた
- マネーフォワード 有価証券報告書【沿革】
- [17]2015年11月に金融機関利用者向け『マネーフォワード』(マネーフォワード for ◯◯)をリリース
蓄積した企業の財務データは、融資の領域にも向かった。2017年1月に中小企業向けの資金調達支援サービス『MFクラウドファイナンス』の提供を始め、企業は従来銀行へ提出していた書類の準備なしに資金調達できるようになる。辻氏は「企業と銀行が財務諸表を常時共有できるのは効率的。企業の小粒な現金需要にも応えられる」と、その意義を語った。同年3月には銀行のAPI開放を実質義務化する改正銀行法案が閣議決定され、フィンテック企業と組むことが銀行にとって預金者をつなぎ留める手段になる流れが強まる。会社の外側で、事業の追い風となる制度が整いつつあった。 [19][20]
- 週刊東洋経済 2017年3月25日号「第1特集 銀行マンの運命」
- [19]2017年1月に中小企業向け資金調達支援サービス『MFクラウドファイナンス』の提供を開始した
- [20]2017年3月3日に銀行のAPI開放を実質義務化する改正銀行法案が閣議決定された
- マネーフォワード 有価証券報告書【沿革】
- [13]2013年11月に『マネーフォワード For BUSINESS』(現『マネーフォワード クラウド会計・確定申告』)をリリース
- [14]2014年5月に請求書、2015年3月に給与、2015年8月にマイナンバー、2016年1月に経費の各クラウドサービスをリリース
- [17]2015年11月に金融機関利用者向け『マネーフォワード』(マネーフォワード for ◯◯)をリリース
- 週刊東洋経済 2017年3月25日号「第1特集 銀行マンの運命」
- [15]2016年3月に住信SBIネット銀行と日本の銀行では初めてのAPI連携を開始した
- [16]住信SBIネット銀行の円山法昭社長は、API連携により安全確保とサービス開発コストの節約を両立できたと述べた
- [18]2017年3月時点で家計簿アプリとクラウド会計の両事業を合わせて17の金融機関と協業していた
- [19]2017年1月に中小企業向け資金調達支援サービス『MFクラウドファイナンス』の提供を開始した
- [20]2017年3月3日に銀行のAPI開放を実質義務化する改正銀行法案が閣議決定された