NTTドコモiPhoneの取り扱い開始——自前の端末ラインアップで囲い込む方針を解いた転換
- 概要
- 2013年9月、NTTドコモはiPhone 5s及び5cを端末ラインナップに加え、Android端末とiOS端末の双方を取り扱う体制へ転じた。国内メーカーの端末をそろえて自社仕様のサービスで顧客を囲い込むという、iモード以来の端末戦略を改めた判断である。加藤薰社長のもとで、5期続いた契約数シェアの低下と番号持ち運び制度による転出に歯止めをかけにいった。
- 背景
- 契約数シェアは2009年3月期の50.8%から2013年3月期の45.2%へ5期続けて下がり、解約率も同じ期間に0.50%から0.82%へ上がっていた。番号持ち運び制度による転出と新規事業者の参入が重なり、訴求力のある端末を展開できるかどうかが、契約の獲得と維持を左右していた。2013年4月には、ラインナップの絞り込みによって主力機種へ資源を集中する方針を先に掲げていた。
- 内容
- 2013年9月にiPhone 5s及び5cを発売し、Android端末とiOS端末の双方を扱う品揃えへ組み替えた。ドコモメールをはじめとする自社サービスをiOS端末でも提供する仕組みを併せて用意し、学生向けの利用料金割引と組み合わせ、10〜20歳代の転入を増やした。2014年3月期の端末機器販売収入は前期比15.0%増の8,720億円となり、端末機器原価が端末機器販売収入を上回る構造的な状態は解消した。
- 含意
- 2014年3月期の純増数は156.9万契約と期初計画の185万契約に届かず、解約率は5期連続で上がって0.87%となった。それでも下期の純増数は前年下期比77.9%増と伸び、番号持ち運びによる転出は通期で1割以上改善している。加藤薰社長は 『高い人気を誇るiPhoneの導入です。ドコモからのiPhone発売を長い間待っていてくださったお客様にようやくお応えすることができ、iPhoneを起爆剤として回線契約の純増数も改善しています』 と、この年の3つの成果の筆頭に挙げた。翌2015年3月期に解約率は0.71%へ下がり、2016年3月期には契約数シェアが7期ぶりに上向いた。
筆者の見解
主導権を手放して顧客をつなぎ止めた判断
この判断が手放したのは端末の品揃えではなく、端末とサービスを自社が一体で提供するという形そのものだったとみることができる。iモード以来、ドコモは仕様を主導した端末に自社サービスを載せて顧客基盤を築いてきた。その形を保ったまま5期を過ごすあいだに契約数シェアは50.8%から45.2%へ落ち、解約率は0.82%まで上がっている。他社が扱う端末を自社も扱うという選択は、商品戦略の修正ではなく、囲い込みの前提を降ろす決定であった。
もっとも、この転換が効いたのは端末そのものの力だけではないだろう。iOS端末でもドコモメールをはじめとする自社サービスを提供する仕組みを併せて用意したことで、他社と同じ端末を扱いながら自社の顧客基盤へつなぎ留める余地を残している。2014年3月期の純増数は期初計画に届かず解約率も上がったが、翌期に解約率は0.71%へ下がり、2016年3月期にはシェアが7期ぶりに上向いた。主導権を手放したのちに何を残すかで、転換の帰趨が分かれたといえる。
Yutaka Sugiura, 2026年9月
NTTドコモ:契約数シェアと解約率の推移
| (%) | 契約数シェア | 解約率 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2009年3月期 | 50.8 | 0.5 | シェアは5割を超え、解約率は0.50% |
| 2010年3月期 | 50 | 0.46 | |
| 2011年3月期 | 48.5 | 0.47 | |
| 2012年3月期 | 46.9 | 0.6 | 番号持ち運びによる転出が拡大し、解約率が0.60%へ上昇 |
| 2013年3月期 | 45.2 | 0.82 | 純増数の獲得競争が激しくなり、解約率は0.82% |
| 2014年3月期 | 43.8 | 0.87 | 9月にiPhoneを追加。解約率は5期連続で上がり0.87% |
| 2015年3月期 | 43.6 | 0.71 | 解約率が低下に転じる。翌期の算定方法変更後は0.61%と再掲 |
| 2016年3月期 | 45.3 | 0.62 | シェアが7期ぶりに上昇。解約率は算定方法の変更後の値 |
| 2017年3月期 | 46 | 0.59 | |
| 2018年3月期 | 45.3 | 0.65 | |
| 2019年3月期 | − | 0.57 | 契約数シェアは有価証券報告書の事業データから外れた |
契約数シェア
契約数シェア(%)
出所:NTTドコモ 有価証券報告書 第18期〜第28期(2009年3月期〜2019年3月期)【業績等の概要】主要な事業データ
NTTドコモ:端末機器販売収入の推移
| (億円) | 端末機器販売収入 | 備考 |
|---|---|---|
| 2009年3月期 | 6,069 | |
| 2010年3月期 | 5,075 | 端末販売台数の減少により16.4%減 |
| 2011年3月期 | 4,774 | 卸売単価の低下により5.9%減 |
| 2012年3月期 | 4,989 | |
| 2013年3月期 | 7,581 | スマートフォンの販売数が増え、前期比52.0%増 |
| 2014年3月期 | 8,720 | iPhoneの販売開始などで15.0%増。原価が収入を上回る状態は解消 |
| 2015年3月期 | 9,041 | この期が最も多い |
| 2016年3月期 | 8,605 | |
| 2017年3月期 | 7,192 | |
| 2018年3月期 | 7,551 | |
| 2019年3月期 | − | 国際会計基準へ移行し、この科目の逐語を照合できていない |
端末機器販売収入
端末機器販売収入(億円)
出所:NTTドコモ 有価証券報告書 第18期〜第27期(2009年3月期〜2018年3月期)【業績等の概要】
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