バンダイナムコHD「IP軸戦略」への転換
- 概要
- 2010年、バンダイナムコホールディングスは石川祝男社長のもとで『IP軸戦略』を掲げた。一つのキャラクター(IP)を玩具・ゲーム・映像・ライブへ横断展開する仕組みへ経営を組み替え、主要IPごとに担当役員を置いて全社で盛り上げる体制へ転換した経営判断。
- 背景
- 2005年のバンダイとナムコの経営統合は相乗効果を狙ったものだったが、統合後に組織の縦割りが進み、両社の縄張り意識が解消されなかった。事業間の連携も生まれず、2007年3月期から3期連続の減収減益に陥り、2010年3月期には赤字へ転落した。
- 内容
- 石川祝男社長は主要IPごとに担当役員をつけ、四半期に一度『コンテンツビジネス戦略会議』を開いて各事業の展開時期をすり合わせる体制を敷いた。社内の否定論を押し切ってモバイルゲームにも参入し、2010年末に『ガンダムロワイヤル』を投入した。
- 含意
- ドラゴンボールやガンダムがIP軸で復活し、2017年3月期には売上高6200億円・営業利益632億円の当時の過去最高を記録した。IP軸戦略はその後の海外展開とグループ拡大の土台となり、田口三昭社長・川口勝社長へと引き継がれた。
筆者の見解
筆者見解
IP軸戦略の要点は、新しい事業を足すことよりも、すでに持っていた玩具・ゲーム・映像を一つのキャラクターの下で編み直したところにあったといえる。統合が生んだ縦割りは、二つの会社を並べたことの副作用であった。石川祝男社長が担当役員制と戦略会議で試みたのは、組織を再編するより先に、IPという共通言語で部門をつなぎ替えることであったとみられる。ドラゴンボールの復活は、その仕組みが具体的な数字に転じた象徴的な事例といえる。
一方で、成長の中心が定番の大型IPに依存する構図は、この戦略の裏面でもある。ガンダムやドラゴンボールという強力な資産があってこそ横断展開は回るが、次の柱となる新規IPを同じ密度で生み出せるかは別の課題として残る。田口三昭社長・川口社長がそろって新規IPの創出を最重要に挙げ続けている事実は、IP軸戦略が到達点ではなく、絶えず苗木を植え替えねば維持できない仕組みであることを示しているとみることができる。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
- バンダイナムコホールディングス 有価証券報告書(2010年3月期・連結)
- バンダイナムコホールディングス 有価証券報告書(2011年3月期・連結)
- バンダイナムコホールディングス 有価証券報告書(2017年3月期・連結)