この統合の特徴は、規模を合算する守りより、重ならぬ事業を組み合わせて質を変える攻めに力点があった点にあるといえる。少子化という共通の逆風を前に、多くの同業が同種の事業を寄せ集める"足し算"へ向かうなか、バンダイとナムコはガンダムの共同開発で確かめた補完性を土台に"掛け算"を選んだ。ただし掛け算は、事業と組織の融合が進むまで成果が見えにくい。統合直後の減益と株価急落は、その時間差が市場の失望として表れた場面であっただろう。
もう一つ見逃せないのは、80歳の創業者が世襲でなく統合を選び、自らは最高顧問へ退いて資本と経営を分けた点である。オーナー企業が多い玩具・ゲーム業界で、創業者の引き際が再編の引き金になる構図を、中村会長の身の処し方が体現した。統合が長期の成長へ結実した一因は、この創業者の退場が新しい経営陣に判断の余地を残したことにあったとみられる。掛け算が数字になるまでの20年を、後任の経営者たちがどう埋めたかは、なお通史として検証に値する。