この判断が難しかったのは、置き換える相手が失敗作ではなく、十年以上会社を支えた成功作だった点にある。CPシリーズは速度で世界を取り、その成功が社内に復活への期待を残していた。小原正義社長が述べたとおり、ほかに対策は用意されておらず、反対と厳しい意見に押し切られる余地は十分にあった。押し返したのが経営の論理ではなく若手技術者の熱意だったと社史が書き残している点は、この会社の意思決定の作法を示している。
完成から20年余りを経て、モジュールという考え方は製品系列に残った。反対を受けた設計思想が、その後の主力機の前提になっている。2026年3月期のロボットソリューション事業は売上高1,687億3,700万円・セグメント利益336億2,300万円で、NXTを完成させた2004年3月期の連結売上高611億円と比べると、装置一系列の設計思想が会社の規模をどこまで引き上げたかが読み取れる。