ギル&ダファスの損失処理(2001年・マルハの決断)

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マルハ:業績の推移
売上高(億円)経常利益率(%)

何をなぜ決めたか:キューバ向け前渡金の回収繰り延べと貸倒引当金の積み増し

概要
概要

マルハが1989年10月に資本参加したスイス・ジュネーブの砂糖商社ギルアンドダファス(Gill & Duffus S.A.)は、粗糖を買い付けるためキューバ砂糖公団に前渡金を渡していた。2000年12月、同社はこの債権の回収についてキューバ砂糖公団とリスケジュールすることで基本合意し、マルハも同社に対する自社の債権を、この合意に準じてリスケジュールした。合意の後も回収は進まず、2002年3月期にはギル&ダファス関連の貸倒引当金102億円を特別損失に計上した。

背景
背景

ギル&ダファスは1981年9月の設立で、資本金は1,205万スイスフラン、砂糖ほかの商品の売買を業としていた。マルハは2000年7月から常務取締役の今坂誠氏に同社の取締役会長を兼務させ、2001年3月期には同社を連結子会社としていた。国内では1999年2月に砂糖事業部門の営業をパールエースへ譲渡している。2002年3月末の時点で、マルハ本体がギル&ダファスに貸し付けていた長期資金は374億円に上る。

内容
内容

リスケジュールで合意した2001年3月期、連結の貸倒引当金繰入額は194億円にのぼった。同じ期に土地売却益185億円を中心とする固定資産売却益を計上し、当期純利益は83億円を確保している。

ところが米国同時多発テロでキューバの観光収入が激減し、数十年ぶりのハリケーンの被害も重なって、リスケジュールによる回収も難しくなった。2002年2月15日の取締役会で貸倒引当金の積み増しを決め、約100億円の特別損失を見込んだ。

沿革:意思決定前後の出来事9件
考察:確定を先へ延ばした合意
考察

考察:確定を先へ延ばした合意

この判断を、焦げ付いた取引の損失処理と読むのは正確ではない。2000年12月の合意は損失を確定させる手続きではなく、回収の期限を先へ延ばす取り決めであった。前渡金を不良債権として落とす代わりに、相手の支払い能力が戻ることに期待して帳簿に残す選択だったとみられる。同じ期には土地の売却益を計上して最終黒字を保っており、損失を一度に表へ出すだけの余力は乏しかったのではないか。マルハ本体から同社への長期貸付金が374億円に達していたことも、一括で確定させにくい事情になったと思われる。

もっとも、繰り延べの前提は相手国の外貨収入であり、マルハで動かせるものではなかった。観光収入の激減とハリケーンの被害で前提が崩れると、翌期には102億円の引当を積み増すことになる。債権の一部が戻ったのは2005年で、戻入額は19億円にとどまり、同じ年のうちにギル&ダファスは解散を決めた。合意は損失を消したのではなく、確定の時期を後ろへずらしたにすぎない。相手の回復に委ねて債権を抱え続けることの重さを示した事例といえるだろう。

Yutaka Sugiura, 2026年8月
参考文献

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