筆者の見解
量から質への転換をどう評価するか
この決断の核心は、財務危機への対応ではなく、平成不況という緩やかな逆風のなかで、創業者の代からの遺産をどう手仕舞うかという判断にあったのだろう。戸建住宅事業は赤字が急拡大していたわけではないが、住宅市場の長期低迷のもとでは撤退の決断を先延ばしにするほど傷が深くなる構図にあった。牧野明次氏(社長)が就任からわずか2年で清算に踏み切ったのは、量から質へという方針を掛け声だけに終わらせない実行力を示したものといえる。
もっとも、水素供給ステーションの実証開始は、燃料電池車がほぼ存在しない時期の先行投資であり、当時それが経営判断として正しかったかどうかは、20年以上を経た今日でもなお評価が分かれるところであろう。乗用車の燃料電池車普及は当初の想定ほど進まなかった一方、商用車向けの需要や液化水素製造の規模拡大は続いている。周辺事業の整理で生まれた余力を水素へ振り向けた選択は、量的拡大より自社の強みをどこに置くかを問い直した経営判断として、今日に長い影を落としている。
Yutaka Sugiura, 2026年7月