富士通エレクトロニクス買収(2018年・加賀電子の決断)

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論点 業界再編下で同業の買収に出るか
加賀電子:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
取得原価154億円で引き受けた株式70%と、売上5,000億円級グループへの規模拡大

何をなぜ決めたか:取得原価154億円で引き受けた株式70%と、売上5,000億円級グループへの規模拡大

概要

2018年9月10日、加賀電子は富士通エレクトロニクスの株式70%を取得すると発表した。企業結合日は2019年1月1日、取得原価は現金15,410百万円で、アドバイザリーに対する報酬・手数料等185百万円を要した。受け入れた資産93,177百万円に対して引き受けた負債は68,071百万円で、時価純資産が取得原価を上回ったため負ののれん発生益2,164百万円を計上した。

背景

買収で受け入れた資産は93,177百万円で、当時の加賀電子の連結総資産128,755百万円の7割を超える規模であった。半導体・デバイスメーカーの再編統合や代理店政策の見直しが進むなか、加賀電子は2015年11月公表の中期経営計画2018で利益重視経営の確立を最重要課題に位置付け、この買収で売上高5,000億円級の企業グループを形成すると有価証券報告書に記した。

内容

株式は3段階で取得した。2019年1月1日に70.0%、2020年12月28日に15%を追加して85%、2021年12月28日にさらに15%を追加して100%である。追加取得の支出は3,441百万円と3,811百万円であった。資金の手当ては借入で行われ、短期借入金は2018年3月期末の4,117百万円から2019年3月期末に29,376百万円へ増え、有利子負債は325億円となった。

含意

連結売上高は2019年3月期の2,928億円から通期で連結した2020年3月期に4,436億円へ伸び、2023年3月期には6,081億円に達した。一方、買った会社の単体売上高は2020年3月期の1,536億円から2021年3月期には899億円へ落ち、経常損益も738百万円の損失に転じている。仕入先と顧客をつなぎ直す作業が、統合後の主な仕事となった。

いつ何が起きたか 6件
考察:値札に書かれていなかったもの
考察

考察:値札に書かれていなかったもの

154億円という取得原価は、受け入れた資産93,177百万円に対して低い。時価純資産が取得原価を上回り、その差額2,164百万円が負ののれん発生益として利益に立った。帳簿の上では、買った瞬間に利益が出る値段で株式を引き受けたことになる。値づけが映していたのは、買われる側の収益力の弱さである。加賀電子が獲得したのは利益ではなく、旧富士通系の販売チャネルと顧客基盤であった。中期経営計画で掲げたわが国業界No.1という言葉を、自力の営業ではなく他社の顧客名簿で実現しようとした選択といえる。

実際に手に入ったものは、想定より小さかった。通期で連結した2020年3月期に1,536億円あった単体売上高は、翌2021年3月期に899億円まで落ち、経常損益も738百万円の損失に転じている。仕入先の商権は買収契約で保証される種類の資産ではなく、元の親会社の構造改革も止められない。加賀FEIの単体売上高が2023年3月期に1,457億円、経常利益5,136百万円まで戻り、連結売上高が6,081億円へ届くまでには、買収から4年がかかった。154億円の値札に、その4年間の手間は含まれていなかった。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
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図と表

加賀電子:加賀FEI(旧富士通エレクトロニクス)単体の売上高と経常損益

売上高(百万円)経常損益率(%)
加賀電子:加賀FEI(旧富士通エレクトロニクス)単体の売上高と経常損益
(百万円) 売上高経常損益 備考
2019年3月期 45,981△120 連結は2019年1月から。売上高は3か月分
2020年3月期 153,5891,385 通期で連結した最初の期
2021年3月期 89,888△738 2020年12月29日付で加賀FEI株式会社へ商号変更
2022年3月期 106,1651,851
2023年3月期 145,6515,136
2024年3月期 132,3211,670
2025年3月期 138,8811,195
出所:加賀電子 有価証券報告書 第51〜57期【関係会社の状況】(主要な損益情報等)
出所:加賀電子 有価証券報告書 第51〜57期【関係会社の状況】(主要な損益情報等)

加賀電子:連結売上高と経常利益の推移

売上高(百万円)経常利益率(%)
加賀電子:連結売上高と経常利益の推移
(百万円) 売上高経常利益 備考
2015年3月期 255,1437,664
2016年3月期 245,3877,908
2017年3月期 227,2097,343
2018年3月期 235,9218,740
2019年3月期 292,7797,859 富士通エレクトロニクスの3か月分が加わった期
2020年3月期 443,61510,137 通期で連結した最初の期。売上高は前期比51.5%増
2021年3月期 422,36511,241
2022年3月期 495,82721,456
2023年3月期 608,06432,739
2024年3月期 542,69725,976
2025年3月期 547,77922,593
出所:加賀電子 有価証券報告書 第51期・第56期・第57期【主要な経営指標等の推移】
出所:加賀電子 有価証券報告書 第51期・第56期・第57期【主要な経営指標等の推移】

買収の条件

買収の条件
科目 概要 備考
被取得企業 富士通エレクトロニクス株式会社 電子部品・電子機器等の販売。富士通セミコンダクターの子会社
企業結合を行った理由 電子部品・半導体ビジネスのシェア拡大 EMSビジネスの事業規模拡大、両社事業協業に伴う経営効率の更なる向上
目指した規模 売上高5,000億円級の企業グループ
企業結合日 2019年1月1日 連結損益に取り込んだのは2019年1月1日から3月31日までの3か月
企業結合の法的形式 現金を対価とする株式取得
取得した議決権比率 70.0% 2020年12月28日に85%、2021年12月28日に100%へ引き上げた
取得原価 15,410百万円 全額現金。議決権比率70.0%分の対価
取得関連費用 185百万円 アドバイザリーに対する報酬・手数料等
取得のための正味支出 286百万円 取得価額から被取得企業の現金及び現金同等物15,123百万円を差し引いた額
受け入れた資産 93,177百万円 流動資産89,442百万円、固定資産3,735百万円
引き受けた負債 68,071百万円 流動負債66,864百万円、固定負債1,206百万円
負ののれん発生益 2,164百万円 時価純資産が取得原価を上回った差額。電子部品事業に計上した
非支配株主持分 7,531百万円 取得しなかった30%分。連結貸借対照表に計上した
業績に与える影響(通期換算) 記載なし 概算額の算定が困難であるとして有価証券報告書に記載されていない
第2段階の追加取得 2020年12月28日に15% 連結の範囲の変更を伴わない子会社株式の取得による支出は3,441百万円
第3段階の追加取得 2021年12月28日に15% 同支出は3,811百万円。この取得で持株比率100%となった
出所:加賀電子 有価証券報告書 第51期(2019年3月期)【企業結合等関係】【連結キャッシュ・フロー計算書関係】・第53期(2021年3月期)・第54期(2022年3月期)【連結キャッシュ・フロー計算書】
出所:加賀電子 有価証券報告書 第51期(2019年3月期)【企業結合等関係】【連結キャッシュ・フロー計算書関係】・第53期(2021年3月期)・第54期(2022年3月期)【連結キャッシュ・フロー計算書】
参考文献

参考文献

参考
  • 加賀電子「富士通エレクトロニクス株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ」(2018年9月10日)
  • 加賀電子 統合報告書2025
  • 加賀電子 有価証券報告書(連結・2015年3月期〜2025年3月期)
  • 加賀電子 有価証券報告書「第51期(2019年3月期)【企業結合等関係】【連結キャッシュ・フロー計算書関係】」
  • 加賀電子 有価証券報告書「第51期(2019年3月期)【借入金等明細表】」
  • 加賀電子 有価証券報告書「第53期(2021年3月期)・第54期(2022年3月期)【関係会社の状況】【連結キャッシュ・フロー計算書】」
  • 加賀電子 有価証券報告書「第51〜57期【関係会社の状況】」
  • 加賀電子 有価証券報告書「第51期・第56期・第57期【主要な経営指標等の推移】」

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