ピーエス三菱をTOBで買収(2023年・大成建設の決断)

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論点 上場を残して過半を取得するか
大成建設:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
上場を残した過半取得と負ののれん

何をなぜ決めたか:上場を残した過半取得と負ののれん

概要

2023年11月9日の取締役会で、プレストレスト・コンクリート(PC)工事大手のピーエス三菱を連結子会社とするため、東京証券取引所プライム市場に上場する同社株式を公開買付けにより取得することを決議した経営判断。買付けは11月10日から12月11日まで実施し、12月18日付で議決権の50.20%を取得して連結子会社とした。

取得原価は24,028百万円で対価は全額現金。みなし取得日を2023年12月31日とし、連結財務諸表に含めた被取得企業の業績は2024年1月1日から3月31日までの3か月分にとどまる。

背景

中期経営計画(2021-2023)では、国内土木事業における強固な事業基盤確立のための体制整備と、国内建築事業における競争優位性の確立を重点課題に掲げていた。高速道路リニューアル分野やプレストレスト・コンクリート、プレキャスト・コンクリートの分野で高い技術力を持つ相手と資本関係を築き、新たな取り組みを実践することが、その重点課題への対応になると位置づけた。

内容

企業結合日に受け入れた資産は114,919百万円(流動89,146・固定25,772)、引き受けた負債は64,873百万円(流動48,647・固定16,225)。取得原価24,028百万円は企業結合時の時価純資産額を下回り、その差額1,094百万円を負ののれん発生益として土木・建築の両セグメントに計上した。取得関連費用はアドバイザリー費用等605百万円。

取得は過半にとどめ、残る24,923百万円は非支配株主持分として連結貸借対照表に立った。受け入れた現金及び現金同等物9,229百万円を差し引いた取得のための支出は14,798百万円で、支払った現金の6割強は手元に戻っている。

含意

期首に結合したと仮定した概算では、売上高が90,068百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が1,753百万円増える。実際に連結できたのは3か月分だが、翌2025年3月期には通年で寄与し、土木事業の売上高は6,306億円、セグメント利益は875億円へ伸びた。

土木事業の従業員数は2023年3月期の4,268人から2024年3月期に5,472人へ増え、担い手の確保という狙いは人員の面で先に形になっている。被取得企業は2024年7月1日付でピーエス・コンストラクションへ商号を変更し、2026年3月期末時点でも議決権比率は50.2%で上場を保っている。

いつ何が起きたか 6件
当時の取締役 12名

当時の取締役(2023年6月株主総会決議)

考察:安く買収することと、働かせること
考察

考察:安く買収することと、働かせること

この買収で払った24,028百万円は、受け入れた純資産50,046百万円の半分にも満たない。過半の議決権だけを押さえ、残る24,923百万円は非支配株主持分として外に置いたまま、差額の1,094百万円は負ののれん発生益として利益に計上された。上場を残したのは、買収資金を抑えながら高速道路リニューアルの技術と人を手元に引き寄せるための組み立てだったとみられる。同じ会社が2年後に東洋建設へ払った1,316億円と、そこで生じた735億円ののれんに比べると、この案件の設計は対照的である。

もっとも、安く買えたことと、買ったものが働くことは別である。連結できたのは3か月分にすぎず、通期換算の純利益の押し上げは1,753百万円にとどまった。目に見えて動いたのは人の数で、土木事業の従業員は1,204人増えている。技術者の確保が狙いなら、その一点ではすでに成果が出ている。ただし非支配株主が残る以上、資源の移し替えには相手方の少数株主への配慮がついて回る。上場を残す選択の代価は、これから効いてくるのかもしれない。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
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図と表

大成建設:土木事業セグメントの推移

土木事業の売上高(百万円)土木事業のセグメント利益率(%)
大成建設:土木事業セグメントの推移
(百万円) 土木事業の売上高土木事業のセグメント利益 備考
2019年3月期 439,10953,097
2020年3月期 459,10971,379
2021年3月期 420,54956,073
2022年3月期 414,56047,907
2023年3月期 423,16347,834
2024年3月期 505,50461,454 ピーエス三菱の連結は2024年1月から。業績は3か月分にとどまる
2025年3月期 630,62787,580 通年で寄与した最初の期
2026年3月期 679,74095,557 東洋建設の連結が2025年10月から加わっている
出所:大成建設 有価証券報告書 第159期〜第166期(セグメント情報、報告セグメントごとの外部顧客への売上高・利益)
出所:大成建設 有価証券報告書 第159期〜第166期(セグメント情報、報告セグメントごとの外部顧客への売上高・利益)

大成建設:土木・建築事業の従業員数の推移

大成建設:土木・建築事業の従業員数の推移
(人) 土木事業の従業員数建築事業の従業員数 備考
2019年3月期 4,1088,123
2020年3月期 4,1618,163
2021年3月期 4,2578,160
2022年3月期 4,2638,103
2023年3月期 4,2688,133
2024年3月期 5,4728,804 土木は1,204人、建築は671人増えた。ピーエス三菱は両セグメントに含まれる
2025年3月期 5,4189,001
2026年3月期 6,6489,898 東洋建設の連結による増加を含む
出所:大成建設 有価証券報告書 第159期〜第166期(従業員の状況・連結会社の状況。就業人員数で、臨時従業員は含まない)
出所:大成建設 有価証券報告書 第159期〜第166期(従業員の状況・連結会社の状況。就業人員数で、臨時従業員は含まない)

買収の条件

買収の条件
科目 概要 備考
被取得企業 株式会社ピーエス三菱 PC工事の請負と企画・設計・施工監理、土木建築構造物の維持補修、PC製品の製造販売
取得の法的形式 現金を対価とする株式取得 取得企業を決定するに至った根拠も、現金を対価として株式を取得したこと
取締役会の決議日 2023年11月9日 上場を維持したまま連結子会社とすることを目的とした公開買付けの決議
公開買付期間 2023年11月10日〜12月11日 買付価格・買付予定数の記載は会社の公表資料のうち有価証券報告書にはない
企業結合日 2023年12月18日 みなし取得日は2023年12月31日。連結した業績は2024年1月1日から3月31日まで
取得した議決権比率 50.20% 企業結合日直前に所有していた議決権比率は-%。2026年3月期末も50.2%のまま
取得原価 24,028百万円 対価は全額現金
取得関連費用 605百万円 アドバイザリー費用等
負ののれん発生益 1,094百万円 取得原価が企業結合時の時価純資産額を下回った差額。土木・建築の両セグメントに計上
受け入れた資産合計 114,919百万円 流動資産89,146百万円、固定資産25,772百万円
引き受けた負債合計 64,873百万円 流動負債48,647百万円、固定負債16,225百万円
非支配株主持分 24,923百万円 連結開始時。上場を維持したため過半を超える部分は取得していない
取得のための支出 14,798百万円 株式の取得価額24,028百万円から受け入れた現金及び現金同等物9,229百万円を控除した額
通期換算した売上高の増加 90,068百万円 期首に結合したと仮定した場合の概算額。監査証明を受けていない
通期換算した純利益の増加 1,753百万円 同じ概算で営業利益5,336、経常利益5,245百万円。監査証明を受けていない
結合後企業の商号 ピーエス・コンストラクション株式会社 2024年7月1日付で商号変更。定時株主総会の承認を条件としていた
結合の理由 高速道路リニューアル分野の技術力 PC・プレキャストコンクリート分野で高い技術力を持つ相手との資本関係の構築
出所:大成建設 有価証券報告書 第164期(2024年3月期)【企業結合等関係】【経営上の重要な契約等】【連結キャッシュ・フロー計算書関係】
出所:大成建設 有価証券報告書 第164期(2024年3月期)【企業結合等関係】【経営上の重要な契約等】【連結キャッシュ・フロー計算書関係】
当時の取締役 12名

当時の取締役(2023年6月株主総会決議)

参考文献

参考文献

参考
  • 大成建設 有価証券報告書「第164期(2024年3月期)【企業結合等関係】【経営上の重要な契約等】【連結キャッシュ・フロー計算書関係】」
  • 大成建設 有価証券報告書「第165期(2025年3月期)【セグメント情報】」
  • 大成建設 有価証券報告書「第159期〜第166期(従業員の状況、セグメント情報)」
  • 大成建設 決算説明会 質疑応答「2025年3月期 第2四半期 決算説明会(質疑応答)」
  • 大成建設 決算説明会 質疑応答「2025年3月期 決算説明会(質疑応答)」

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