リニア談合事件で起訴(2018年・大成建設の決断)

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論点 談合容疑を認めるか法廷で争うか
大成建設:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
公訴事実は独占禁止法違反に当たらないとして争う道の選択

何をなぜ決めたか:公訴事実は独占禁止法違反に当たらないとして争う道の選択

概要

2018年3月23日、公正取引委員会の刑事告発を受けて、同日、東京地方検察庁が大成建設と同社の顧問の公訴を提起した。容疑は独占禁止法違反(不当な取引制限)で、対象は東海旅客鉄道が発注する品川駅・名古屋駅間の中央新幹線に係る地下開削工法によるターミナル駅新設工事である。

会社は事態を厳粛に受け止めるとしながら、この公訴事実は独占禁止法違反に該当しないものと考えるとして、訴訟の場で主張を行う方針を掲げた。早期に決着させて幕を引くのではなく、法廷で争い続けると決めた不祥事対応の判断である。

背景

起訴を受けた2018年3月期は、売上高1兆5,854億円・営業利益1,818億円・親会社株主に帰属する当期純利益1,267億円と、いずれも前期を大きく上回る好決算だった。営業利益は前期比29.1%増で、土木事業の受注高(提出会社)も3,915億円と前期の3,153億円から24%伸びている。

一方でグループにとって独占禁止法違反は初めてではない。前期の2017年3月期には、連結子会社の大成ロテックがアスファルト合材の販売をめぐる独占禁止法に基づく課徴金等の支払見込額を独占禁止法関連損失として計上していた。同社は2019年7月30日付で公正取引委員会から排除措置命令および課徴金納付命令を受けている。

内容

起訴後の経緯は長い。2019年2月に東京地方裁判所で公判手続が始まり、2020年12月には公正取引委員会から独占禁止法違反として排除措置命令を受けた。2021年3月、東京地方裁判所は会社に有罪判決、同社の顧問に執行猶予付き有罪判決を言い渡す。

会社は同月に東京高等裁判所へ控訴するとともに、排除措置命令の取消訴訟を東京地方裁判所へ提起した。2023年3月に控訴審も同じ内容の有罪判決を出し、会社は最高裁判所へ上告。取消訴訟は2024年6月に東京地方裁判所、2025年5月に東京高等裁判所がいずれも請求を退け、会社は同月に最高裁判所へ上告および上告受理の申立てを行っている。

含意

影響は土木に集中して表れた。提出会社の土木事業の受注高は2018年3月期の3,915億円から2019年3月期に2,719億円へ30%減った。同じ期の建築事業の受注高は1兆49億円から1兆334億円へ増えており、減ったのは土木だけである。連結の土木セグメント利益も715億円から531億円へ減少した。

再発防止として掲げたのは、入札業務の適正確認手続きに関する社内規程と社内通報制度の整備、違反者の懲戒処分規定に基づく厳正な処分である。2020年3月期からは独占禁止法違反リスクを【事業等のリスク】の独立した項目として記載するようになった。

いつ何が起きたか 8件
当時の取締役 10名

当時の取締役(2017年6月株主総会決議)

  • 山内隆司:会長
  • 數土文夫:取締役
  • 台和彦:代表取締役
  • 村田誉之:社長
  • 桜井滋之:代表取締役
  • 堺政博:取締役
  • 田中茂義:取締役
  • 吉成泰:取締役
  • 矢口則彦:取締役
  • 西村篤子:取締役
考察:違法の線引きを法廷で確かめる
考察

考察:違法の線引きを法廷で確かめる

この判断の芯は、不祥事をどう収めるかではなく、どこからが違法な取引制限なのかという線引きを法廷で確かめにいった点にあるだろう。会社が一貫して掲げたのは、事態を厳粛に受け止めるという姿勢と、公訴事実は独占禁止法違反に該当しないという法解釈の二つで、この二つは矛盾しない。刑事で二度の有罪判決を受けてなお上告し、排除措置命令の取消訴訟も三審まで運んだ経緯は、争う姿勢が一時の反発ではなく、方針として据えられていたことを示している。

もっとも、その選択に値札がなかったわけではない。提出会社の土木事業の受注高は起訴の翌期に3割減り、同じ期の建築事業がむしろ伸びていることを思えば、減少は事件の後始末そのものだった。争う限り決着は先へ延び、その間は説明の材料も裁判手続の中にとどまる。再発防止として示されたのが入札業務の確認手続きと通報制度という実務の整備であり、外部の第三者による検証ではなかったことも、この会社が選んだ収め方をよく表しているのではないか。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
数字で見る 3表

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図と表

大成建設:土木・建築事業の受注高(提出会社)

土木事業の受注高(百万円)建築事業の受注高(百万円)
大成建設:土木・建築事業の受注高(提出会社)
(百万円) 土木事業の受注高建築事業の受注高 備考
2013年3月期 263,909773,966
2014年3月期 360,230861,588
2015年3月期 448,234945,480
2016年3月期 323,8811,006,974
2017年3月期 315,2911,008,847
2018年3月期 391,5341,004,938 3月23日に起訴。土木の受注高は前期比24%増で着地した
2019年3月期 271,8921,033,442 土木の受注高が30%減。建築は増えており減少は土木に集中した
2020年3月期 301,7101,012,479
2021年3月期 326,578956,893 2020年12月に排除措置命令、2021年3月に第一審の有罪判決
2022年3月期 307,569926,458
2023年3月期 395,5651,051,446 2023年3月に控訴審判決を受け最高裁判所へ上告
出所:大成建設 有価証券報告書 第153〜163期(受注高、売上高、繰越高及び施工高・提出会社)
出所:大成建設 有価証券報告書 第153〜163期(受注高、売上高、繰越高及び施工高・提出会社)

大成建設:土木セグメントの売上高と利益(連結)

土木事業の売上高(百万円)土木事業のセグメント利益率(%)
大成建設:土木セグメントの売上高と利益(連結)
(百万円) 土木事業の売上高土木事業のセグメント利益 備考
2013年3月期 358,3279,681
2014年3月期 418,52632,567
2015年3月期 448,72733,128
2016年3月期 433,92450,717
2017年3月期 422,84755,199
2018年3月期 441,26971,518 セグメント利益は過去最高。起訴は業績に表れていない
2019年3月期 439,10953,097 セグメント利益が715億円から531億円へ
2020年3月期 459,10971,379
2021年3月期 420,54956,073
2022年3月期 414,56047,907
2023年3月期 423,16347,834
出所:大成建設 有価証券報告書 第153〜163期【セグメント情報等】(連結・報告セグメント)
出所:大成建設 有価証券報告書 第153〜163期【セグメント情報等】(連結・報告セグメント)

経緯と対応

経緯と対応
科目 概要 備考
対象の工事 中央新幹線ターミナル駅新設工事 東海旅客鉄道が発注する品川駅・名古屋駅間の地下開削工法による工事
容疑 独占禁止法違反(不当な取引制限) 法人としての大成建設と、同社の顧問1名の双方が対象になった
公正取引委員会の刑事告発 2018年3月23日 同日、東京地方検察庁が大成建設および同社の顧問の公訴を提起した
会社の立場 公訴事実は独占禁止法違反に該当しない 事態は厳粛に受け止めるとしたうえで、訴訟の場で主張を行うとした
公判手続の開始 2019年2月 東京地方裁判所
行政処分 2020年12月 排除措置命令 公正取引委員会による。課徴金納付命令は受けていない
第一審判決 2021年3月 有罪 東京地方裁判所。同社の顧問には執行猶予付きの有罪判決
控訴と取消訴訟の提起 2021年3月 東京高等裁判所へ控訴し、排除措置命令の取消訴訟を東京地方裁判所へ提起
控訴審判決 2023年3月 有罪 東京高等裁判所。同社の顧問には執行猶予付きの有罪判決
上告 2023年3月 最高裁判所。独占禁止法違反がなかったことを主張するとした
取消訴訟の第一審 2024年6月 請求棄却 東京地方裁判所
取消訴訟の控訴審 2025年5月 控訴棄却 東京高等裁判所。同月に最高裁判所へ上告および上告受理の申立て
再発防止の体制 入札業務の適正確認手続きに関する社内規程 社内通報制度と併せて整備し、違反行為の抑止に充てる
違反者の処分 懲戒処分規定に基づく厳正な処分 弁護士等の専門家の助言を仰ぎながら再発防止策を策定し周知する
リスク開示の変更 独占禁止法違反リスクの単独項目化 2020年3月期から【事業等のリスク】に独立した項目として記載
出所:大成建設 有価証券報告書 第158期(2018年3月期)〜第165期(2025年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】【事業等のリスク】
出所:大成建設 有価証券報告書 第158期(2018年3月期)〜第165期(2025年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】【事業等のリスク】
当時の取締役 10名

当時の取締役(2017年6月株主総会決議)

  • 山内隆司:会長
  • 數土文夫:取締役
  • 台和彦:代表取締役
  • 村田誉之:社長
  • 桜井滋之:代表取締役
  • 堺政博:取締役
  • 田中茂義:取締役
  • 吉成泰:取締役
  • 矢口則彦:取締役
  • 西村篤子:取締役
参考文献

参考文献

参考
  • 大成建設 有価証券報告書「第158期(2018年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】」
  • 大成建設 有価証券報告書「第159期(2019年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】」
  • 大成建設 有価証券報告書「第161期(2021年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】」
  • 大成建設 有価証券報告書「第163期(2023年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】」
  • 大成建設 有価証券報告書「第165期(2025年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】」
  • 大成建設 有価証券報告書「第160期(2020年3月期)【事業等のリスク】」
  • 大成建設 有価証券報告書「第158期(2018年3月期)【生産、受注及び販売の状況】【セグメント情報等】」

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