全国保証地方金融機関系の信用保証会社の連続取得によるグループ化
提携先を一つずつ開拓するか、保証会社ごと買うか——縮む住宅ローン市場で残高をどう積むか
- 概要
- 2020年2月、全国保証が東和銀行から東和信用保証の全株式を取得して子会社化し、以後2026年まで地方金融機関系の信用保証会社を相次いで傘下に収めた経営判断。未提携の金融機関を一つずつ開拓する自前の営業に、保証契約を抱えた会社ごと取得する方法を並べた。
- 背景
- 全国保証の収益は保証債務残高でほぼ決まるが、人口減少により住宅市場と民間住宅ローン市場は中長期的に縮む見通しにあった。他方で地域金融機関は、系列の保証子会社を抱え続ける効率と資本の負担を見直し、売り手側に回っていた。
- 内容
- 2018年12月に債権回収会社を取得したのち、2020年2月に東和信用保証、2021年3月に筑波信用保証を56億5,000万円で取得。2023年4月の東日本保証サービス、2024年7月のちば興銀カード、2025年2月の三重総合信用・東北保証サービスと続けた。
- 含意
- 買収の目的は各案件で共通し、保証債務残高の増加と、取得先のノウハウを使った経営管理の展開に置かれた。三重総合信用のように新規の保証受付を止めた会社も対象で、買っているのは将来の営業力よりも既に結ばれた保証契約の束であった。
契約の束を買うという商売
三重総合信用は、買われる3年半前の2021年5月に新規の保証受付を止めていた。営業をやめた会社に18億9,400万円を払う取引が成り立つ理由は、買う対象が将来の営業力ではない点にある。全国保証が引き取っていたのは、過去に結ばれた保証契約の束と、それが生む残高であった。提携先を一つずつ開拓して利用率を上げる作業と、この取引は目的が同じで、時間の使い方だけが違う。市場が縮むと決まっている商売で残高を積むには、他人が積んだ分を引き取るほうが速いという判断であったとみられる。
ただし、速さの代償もある。売り手が手放す会社は、その売り手にとって伸びしろの乏しい会社でもあり、三重総合信用のように残高が減っていく先も含まれていた。2024年3月期の営業利益が前期を下回ったのは、取得を重ねた時期と重なっている。四国総合信用とは2022年の資本業務提携から完全子会社化へ進んでおらず、中日本総合信用も23.0%にとどまる。地方の保証網は、金額を積めば買い切れるものではなく、相手の株主構成と地元の事情に応じて組み方を変えざるをえない領域であるといえる。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
背景
自前の営業で積む残高の頭打ち
全国保証の収益は、引き受けた保証がどれだけ残高として積み上がっているかでほぼ決まる。残高を増やす道は長く二つであった。まだ契約のない金融機関と新たに保証基本契約を結ぶことと、既に組んでいる相手のなかで自社保証の利用率を上げることである。2012年3月末の提携先は672機関に達し、銀行63・信用金庫250・信用組合104・農協231という業態横断の網ができあがっていた[1][2]。
ただし、その網を細かくしていく作業には天井があった。会社自身が上場前から見込んでいたとおり、少子高齢化を要因として住宅市場は中長期的に縮小へ向かい、年18兆円規模の民間住宅ローン市場も新規貸出額が細る見通しにあった。市場全体が縮むなかで営業だけを頼りに残高を伸ばすには、提携先の数と利用率を同時に押し上げ続けなければならなかった[3]。
保証子会社を手放す側に回った地域金融機関
縮んでいたのは市場だけではなかった。地域金融機関にとって、自前の保証子会社を抱え続ける意味も薄れていた。筑波銀行は、子会社の筑波信用保証と全国保証の二社で対応していた保証業務を一本化して効率を上げるとして、2021年に筑波信用保証を手放した。売却額は56億5,000万円で、同行は2021年3月期の単体決算に42億円程度の特別利益を見込んだ[4]。
同じ動機は他の地域でも働いた。三十三フィナンシャルグループは2024年12月、連結子会社の業務効率化を理由に、三重県松阪市の三重総合信用の全株式を全国保証へ譲渡すると発表した。三重総合信用は2021年5月以降、新規の保証受付を止めており、残っていたのは過去に引き受けた保証の残高と、その管理業務であった[5][6]。
決断
会社ごと取得するという方法
転換の助走は2018年12月にあった。全国保証はYUTORI債権回収の株式を取得して子会社化し、代位弁済したあとの求償債権を回収する機能をグループの内側に置いた。続く2020年2月7日、東和銀行から東和信用保証の株式を取得して子会社にすると公表し、同月28日に譲渡を実行した。掲げた狙いは、グループの保証債務残高を増やすことと、取得先のノウハウを使って経営管理を広げることであった[7][8]。
方針は同じ年の暮れに当事者の言葉で対外化された。2020年12月18日の決算説明で、石川英治社長は収益源の広げ方について、保証会社からの保証債務の引き受けや再保証、場合によっては保証会社そのものを買収していくと述べた。あわせて、傘下のサービサーと保証子会社を使って収益源を広げる考えも示した。同年9月末の保証債務残高は13兆9,684億円に達していた[9]。
買っているのは契約と残高である
2021年2月19日、全国保証は筑波銀行の子会社である筑波信用保証の全株式を取得すると公表した。取得価額は56億5,000万円、実行は同年3月31日である。筑波銀行は既に全国保証と住宅ローンと無担保ローンの保証基本契約を結んでおり、売り手と買い手はもともと同じ取引の両端にいた。取得によって、その一方の窓口が全国保証の側へ寄せられた[10][11]。
買収の対象に、新規営業をやめた会社が含まれていた点にこの方法の性格が表れている。2024年12月25日に公表した三重総合信用の取得は、80,000株を18億9,400万円で買い、2025年2月28日に実行する内容であった。全国保証は取得の理由を、保証債務残高の増加すなわち基幹事業の拡大につながり、取得先のノウハウを使った経営管理を広げられるためと説明した[12]。
結果
六系統の取り込みと、買った会社同士の整理
取得は毎年のように続いた。東和信用保証は現みのり信用保証となり、2021年3月に筑波信用保証、2023年4月に東日本保証サービス、2024年7月にちば興銀カード(現なのはな信用保証)、2025年2月に三重総合信用と東北保証サービスが加わった。2023年12月18日には、買った会社同士を組み替える手も打ち、筑波信用保証を存続会社として東日本保証サービスを吸収合併させると公表した。効力発生は2024年3月1日である[13][14]。
残高は伸びた。2021年9月に15兆円、2025年12月に20兆円へ達し、2026年3月期の営業収益は587億円、経常利益は466億円となった。もっとも、買収が損益をただちに押し上げたわけではない。2024年3月期の営業利益は391億円と前期の399億円を下回っており、取得した会社の管理費用と、新規受付を止めた先の残高減少が同時に効いていた[15][16]。
完全子会社化に限らない組み方
相手のすべてを買い取る形だけを採ったわけでもない。2022年6月には四国総合信用と資本業務提携契約を結び、株式の一部保有と業務の連携にとどめた。全部を取るか諦めるかの二択にしなければ、株主構成や地元の事情から売却に応じない相手とも組める。取得と提携の二本立てが、地方の保証網へ手を伸ばす際の実務的な選択肢となった[17]。
2026年6月8日には、名古屋市に本店を置く中日本総合信用について、既存株主から議決権19.4%を取得し、子会社保有分3.6%と合わせてグループで23.0%を持つ持分法適用関連会社にすると公表した。株式取得日は同月15日を予定していた。中日本総合信用は中部地方を地盤に住宅ローンや消費者ローンの信用保証を手がけており、ここでも狙いは残高の増加と経営管理の展開に置かれた[18]。
- 全国保証 新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)(2012年)
- 全国保証 有価証券報告書(2014年3月期)
- 全国保証 有価証券報告書(2020年3月期・単体)
- 全国保証 有価証券報告書(2026年3月期・連結)
- 全国保証 公式サイト「会社沿革」
- 日本M&Aセンター M&Aニュース 2020年2月7日「全国保証(7164)、群馬の東和信用保証の株式取得、子会社化」
- 日本M&Aセンター M&Aニュース 2021年2月19日「全国保証、筑波銀行の子会社である筑波信用保証の全株式取得、子会社化へ」
- 日本M&Aセンター M&Aニュース 2023年12月18日「全国保証、子会社の筑波信用保証と東日本保証サービスを合併へ」
- 日本M&Aセンター M&Aニュース 2024年12月25日「全国保証、三重総合信用を買収」
- 日本M&Aセンター M&Aニュース 2024年12月25日「三十三FG、傘下の三重総合信用を全国保証に譲渡へ」
- 日本M&Aセンター M&Aニュース 2026年6月8日「全国保証が中日本総合信用を持分法適用関連会社化へ」
- 日本経済新聞 2021年2月15日「筑波銀行、住宅ローン信用保証の子会社売却 全国保証に」
- ログミーファイナンス 2020年12月18日「全国保証/保証債務残高・保有契約件数は堅調に推移」