1951年5月、岡本虎二郎が東京で月賦百貨店『株式会社緑屋』を設立[1]した[2]。月賦百貨店は戦後の耐久消費財普及を下支えする業態で、月賦で家電・家具・洋服などを販売し、丸井・丸興・緑屋・キング商会が全国各地で店を構えた。顧客は手形・月賦契約で商品を受け取り、毎月の返済を店頭で支払う仕組みで、小売と消費者金融が一体化した業態である。岡本は1963年に『当社がここまで伸びたのも、いろいろ批判してくれたお客様に育てられたと思っています』[引用元](マネービル 1963/07)と30歳前後以下の若年層中心の顧客基盤を説明した。緑屋は1963年7月に東京証券取引所市場第二部に上場[3]、1968年6月には市場第一部に指定され[4]、高度成長期の消費者信用ビジネスの担い手として規模を拡大した。1970年9月には株式会社西武情報センター[5](現・セゾンテクノロジー)を設立し、カード処理システムを内製化する体制を整えた。
月賦販売そのものは、緑屋の創業より前から戦後の消費を支えていた。1949年10月には、インフレが物々交換を生み金詰まりが月賦を生んだとして、ミシンやラジオといった家庭がぜひ欲しい器具の月賦販売が再び増えている実情が紙面で取り上げられ、必需品以外に手を出すのは避けたほうがよいという注意も添えられた[6]。信用の裏付けが乏しい時代の割賦は、売る側にとっても買う側にとっても危うい取引だった。1957年には、渋谷駅前の月賦販売店で洋服三点の契約を結んだ翌日、自宅の周辺一帯が支払不良の地域にあたるという理由だけで契約を取り消され、払った代金を返された女性の憤りが投書欄に載っている[7]。個人の返済能力ではなく居住地で与信を切る運用がまかり通っていたわけで、緑屋が広げていったのはこうした荒削りな消費者信用の市場である。
1970年代半ば、月賦百貨店という業態はショッピングセンター・総合量販店の台頭に押されて頭打ちに近づいた。1976年3月、緑屋は株式会社西武百貨店と資本提携し[8]、セゾングループの傘下に組み込まれた。丸井が月賦百貨店から独自にクレジットカード会社へ転身したのとは対照的に、緑屋は堤清二が率いる西武セゾングループのクレジット・ファイナンス基幹会社という役割を担った。1979年11月にはミドリヤファイナンス株式会社(旧アトリウム)を設立し[9]、不動産ファイナンス事業の源流が形づくられた。月賦百貨店を母体にセゾン流通グループの金融中核という性格の輪郭が見えた。
1955年から1965年ごろにかけて、緑屋は丸井を上回る日本一の月賦百貨店だった[10]。両社を分けたのは店舗の打ち方である。丸井が大型店による総合月賦百貨店化を掲げて中央線沿線に密度の高い網を敷いたのに対し、緑屋は全国チェーン化を目指して関東一円へ小型店を配置した[11]。扱う商品でも差がついた。丸井は1970年から貴金属やスポーツ用品など利益率の高い品目を増やして若年層向けの路線を打ち出したが、緑屋はホテルの室内装飾工事、ボウリング、住宅の仲介斡旋へと多角化を進めた[12]。出店と品揃えの両方で読みを外し、さらに焦付き債権が丸井の二倍に膨らんで財務を圧迫した[13]。
1969年に42店舗まで広げた店舗網は、不採算店の閉鎖によって1976年には30店舗まで絞られ、衣笠や茂原を畳む一方で八戸や千葉には投じるという入れ替えが続いていた[14]。西武百貨店との資本提携が伝えられた当時、丸井は長く競ってきた緑屋の地盤沈下を惜しみつつ、西武流通グループの総合力で立ち直ってくれればこちらの励みにもなると余裕をもって受け止めている[15]。月賦販売は傍目に見えるほど容易な商売ではなく、西武といえども簡単に扱えるものではないという見方も強かった[16]。
1980年8月、緑屋は株式会社西武クレジットへと商号変更[17]し、同時に株式会社志澤と合併した。月賦百貨店時代の看板を外し、1981年6月にセゾングループのクレジット・ファイナンス基幹会社として再スタートしたことで、会社の主戦場は月賦販売からクレジットカードへと移った。[18]1982年8月には西武カード(現・セゾンカード)の発行[19]を始め、西武百貨店・PARCO・LIBRO・ロフトといったセゾン流通グループの店舗に併設したセゾンカウンターで即時発行するモデルを全国へ広げた。当時のカード会員募集は郵送による審査・郵送による発行が一般的で、申込から手元に届くまで数週間を要するのが業界の常識であり、百貨店・流通各社の発行するハウスカードもおおむね同じ運用だった。
セゾンカウンターはこの常識を覆した。駅や店舗に併設した拠点でその場で審査し、カードを即時発行するモデルは業界で異例の手法であり、流通系カードとしての会員基盤を短期で広げる仕組みとして働いた。西武百貨店・PARCOといったセゾングループ店舗の来店客を、その流れのままカード会員へ取り込む導線が定着し、1984年2月には株式会社西武抵当証券(現・セゾンファンデックス)を設立して不動産担保ローン事業にも進出した。[20]月賦百貨店から始まった会社は、この数年で流通密着型カード会社という独自のポジションを自前の仕組みで築いた。ハウスカードを配るだけの流通系の立ち位置を抜け出し、発行スピードと店頭導線を武器にする新しい型のカード会社の輪郭が、ここで固まった。
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|---|---|---|---|---|
| 1951〜1987年月賦百貨店「緑屋」から流通系カード会社セゾンへの転換 | 緑屋を設立 | ★ | ||
| 東京証券取引所市場第二部に上場 | ★ | |||
| 東京証券取引所市場第一部に指定 | ★ | |||
| 西武情報センターを設立 | ★ | |||
| 緑屋の西武百貨店との資本提携と西武流通グループ入り 1976年、月賦百貨店業界2位の緑屋が西武百貨店と資本提携し、堤清二氏が率いる西武流通グループ(後のセゾングループ)の傘下に入った経営判断。同年4月28日の株主総会・取締役会で創業者の岡本虎二郎氏が代表権のない会長へ退き、西武百貨店副社長の坂倉芳明氏が新社長に就いた。 詳細を読む | ★★★ | |||
| ミドリヤファイナンスを設立 | ★ | |||
| 西武クレジットに商号変更、志澤と合併 | ★★ | |||
| セゾングループのクレジット・ファイナンス基幹会社として発足 | ★ | |||
| 西武カード発行、セゾンカウンターの全国展開を開始 | ★★ | |||
| 1988〜2013年国際ブランド搭載とUCカード統合による業界再編の主導 | セゾンVISA・MasterCardインターナショナルカード発行 | ★★ | ||
| クレディセゾンに商号変更 | ★ | |||
| アフィニティ(提携)カード事業に参入 | ★ | |||
| セゾンJCBインターナショナルカード発行 | ★ | |||
| セゾン・アメリカン・エキスプレス・カードの発行と4大国際ブランド体制の完成 1997年秋、クレディセゾンがアメリカン・エキスプレス(アメックス)と提携し、『セゾン・アメリカン・エキスプレス・カード』を発行した経営判断。すでにVISA・MasterCard・JCBと提携済みだったクレディセゾンは、アメックスを加えて4大国際ブランドをすべて自社会員に提供する体制を整えた。 詳細を読む | ★★★ | |||
| 林野宏 | 髙島屋とのカード事業提携と「系列を超えた等距離政策」 2004年、流通系カード首位のクレディセゾンと百貨店最大手の髙島屋がカード事業で資本・業務提携した経営判断。クレディセゾンは髙島屋の全額出資カード子会社・髙島屋クレジットの株式10%を取得し、髙島屋はクレディセゾン株の一部を保有した。旧西武百貨店のライバルと組む『脱セゾン』の一手であった。 詳細を読む | ★★★ | ||
| 林野宏 | みずほとの提携を資本非関与に留めた独立路線の堅持 2004年8月、クレディセゾンはみずほフィナンシャルグループおよびUCカードとカード分野で戦略的業務提携を結んだ。ただし資本関係を一切含めず、後年のみずほによる連結子会社化の打診も林野宏社長は固辞した。メガバンク傘下入りを避け、独立系カード会社として自らの意思で進む路線を堅持した経営判断。 詳細を読む | ★★★ | ||
| 林野宏 | ユーシーカード(UC会員事業会社)を吸収合併 | ★★ | ||
| 林野宏 | セゾン投信を設立 | ★ | ||
| 林野宏 | 連結純損失▲555億円に転落 | ★★ | ||
| 林野宏 | セブンCSカードサービスを設立 | ★ | ||
| 2014〜2022年海外レンディング事業と独自経済圏戦略への軸足移動 | 林野宏 | Credit Saison Asia Pacific Pte. Ltd.を設立 | ★ | |
| 林野宏 | HD Financeに資本参加 | ★ | ||
| 林野宏 | Kisetsu Saison Finance (India) Pvt. Ltd.(Credit Saison India)を設立 | ★ | ||
| 山下昌宏 | 林野宏社長から山下昌宏COO体制へ移行 | ★ | ||
| 水野克己 | 水野克己が代表取締役社長執行役員COOに就任 | ★ | ||
| 水野克己 | スルガ銀行に資本参加(持分法適用会社化) | ★★ | ||
| 水野克己 | 新中期経営計画(FY24-26)を発表、連結事業利益FY26目標1,000億円 | ★ | ||
| 水野克己 | 連結事業利益936億円・過去最高益を更新 | ★ |
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事実根拠:出所(クレディセゾン)