筆者の見解
ブランドを借りて品揃えを完成させるということ
この判断の要は、自前で国際ブランドを立ち上げるのではなく、方針を転換した相手の資産を借りて品揃えを完成させた点にあるだろう。アメックスが自社発行に固執し続けていれば、クレディセゾンが4大ブランドを揃える道はなかった。相手が戦略を切り替えたときを逃さず、ビザ・マスターとの対立の間隙に第一号として滑り込んだ機動力に、流通系カード会社ならではの身の軽さがうかがえる。自社の色に固執せず、使える資産は外から借りるという構えは、その後の同社が提携を多用していく手法とも重なる。
もっとも、アメックスの色を借りて品揃えを整えるやり方は、ブランドの主導権が最終的には相手側にあることの裏返しでもあった。第4のカードとして裾野を広げた一方で、プレミアム領域の価値づけはアメックス本体のブランド力に依存する。借りたブランドでどこまで自社の顧客との関係を深められるかは、後年の独自経済圏づくりへと持ち越された課題であったとみられる。1997年のこの一手は、外部の資産を機敏に取り込む同社の強みと、借り物ゆえの限界とを、同時に映し出していた。
Yutaka Sugiura, 2026年7月