1954年6月、函館出身の伊部政治郎氏・山根要氏・渡辺達也氏の3名は、東京で先行する日本信販のクーポン式分割払いの成功例を範として、函館市にデパート信用販売株式会社を設立した[1]。資本金は330万円、地元の有力百貨店[2]である棒二森屋を最初の加盟店として確保し、函館市民への分割払いサービスの提供から事業を開始した。地元財界での信用を補強するため函館ドックの元常務を役員に迎え、地方都市の零細信販企業として全国大手の日本信販の事業手法を北海道に持ち込む形で出発した。同社の出発点は、創業者3名が東京の成功事例を北海道で再現する地方ベンチャーであり、信用情報基盤も加盟店ネットワークも持たないなかで、地縁と百貨店の集客力を借りた信用販売事業の試行だった。
1957年4月に仙台支店を開設して東北圏へ事業を広げ[3]、1959年7月には商号を北日本信用販売株式会社へ変更した[4]。社名から『デパート』を外したのは、当時施行された百貨店法の制約下で百貨店以外の加盟店開拓を本格化する判断による。函館本店と仙台支店の体制で北海道・東北を地盤に事業の足場を築いた1960年代前半は、東京進出を控えて先発の日本信販との直接競合を避ける棲み分けの時期だった。1965年6月には大手書籍出版販売会社と提携して個品割賦方式(個品あっせん)の取扱を開始し[5]、商品単位での分割払いというクーポン方式とは別系統の信販手法を獲得した。地方都市発の信販企業として全国大手と競合しない領域から事業を組み立てる戦略は、信用情報基盤を持たない後発の生き残り策となった。
1969年、北日本信用販売はソニー製品を販売するソニー商事と業務資本提携を結び[6]、ソニー製カラーテレビの分割払いの取扱を始めた。地方の信販会社がメーカー系商社と直接資本関係を結ぶことで、家電量販ルートでの分割払いに固定的な販売枠を獲得する仕組みである。トヨタや日産といった大手自動車メーカーが自社系列のローン会社を持つなかで、家電メーカーの販売金融事業を肩代わりするポジションを確保し、高額家電の信用販売に特色を持つ会社として業界で知られた。
1973年4月に札幌証券取引所に株式を上場し[7]、同年からはオイルショック後の自動車ローン市場に新規参入した。1974年に大手損保と提携して自動車ローン事業を開始し[8]、トヨタ・日産の系列ローン会社と棲み分けるため外国輸入車と中古車に的を絞った加盟店開拓に進んだ。輸入車ディーラーや中古車販売店は系列大手ローン会社の取引対象外であり、北日本信用販売はこの空白に自社の販売金融サービスを送り込む格好で全国展開を始めた。函館発の信販企業が大手と正面衝突を避けながらニッチを拡張する経営手法は、後年のオートローン特化戦略の出発点となり、輸入車向けローンの基盤づくりに関与した経歴は、現社長の村上亮氏の経営方針にも影響を残している[9]。
1975年8月に本部機能を函館から東京に移転し[10]、1976年4月に合併によって商号を株式会社ジャックスへ変更した[11]。ジャックスはJapan Consumer Credit Serviceの略称で、北日本という社名から全国規模の信販企業を表す呼称への切り替えである。同年9月、創業者の伊部政治郎氏が病気により社長を退任し、三菱銀行から派遣された河村友三氏が代表取締役社長に就任した。地方発ベンチャーから全国信販企業への変貌と並行して、創業者経営から銀行出身者経営への移行も1976年に進んだ。1976年11月に東証2部、1978[12]年9月に東証1部へ指定替えとなり、上場後の筆頭株主にはソニー商事が9.3%で名を連ね[13]、家電分割払いでの結節点となる資本関係が公開市場に示された。
1980年に北日本信販を巡る業界順位は売上で2位から4位へ転落したが[14]、ジャックスの経営陣は売上競争への参戦を断った。代わりに同年10月、オーディオ機器メーカーのパイオニアの金融子会社であるパイオニアクレジット株式会社を吸収合併し[15]、高額オーディオ機器の分割払いを取り込んだ。パイオニアクレジットは財務体質の優良な会社で、合併はジャックスの堅実経営を象徴する案件として業界に受け止められた。1989年4月には共同創業者の山根要氏が代表取締役社長に就任し、同月に国際ブランドのジャックスマスターカード・ジャックス[16]VISAカードの発行を始めた。1989年7月、創立35周年を記念して函館市[17]の歴史的景観条例指定建築物である本社社屋を市に寄贈し、本店を函館市若松町へ移転した。地方発の信販企業として函館への帰属意識を残しつつ、本部は東京、決済機能は国際ブランド対応へと事業基盤の刷新が進んだ。
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|---|---|---|---|---|
| 1954〜1989年函館発の信販ベンチャーから東京進出と全国化まで | デパート信用販売を設立 | ★ | ||
| 社名を北日本信用販売へ変更 | ★ | |||
| 融資保証業務(消費者金融)・損保代理店業務を開始 | ★★ | |||
| 本社を移転 | ★ | |||
| 大手書籍出版販売会社と提携し個品割賦方式(個品あっせん)の取扱を開始 | ★★ | |||
| メーカークレジット会社と提携し個品割賦の保証・集金業務を開始 | ★ | |||
| クーポン・信販小切手に替えてクレジットカード方式を採用 | ★★ | |||
| 損害保険会社との提携により住宅ローン業務を開始 | ★★ | |||
| 札幌証券取引所に株式を上場 | ★ | |||
| 合併により社名をジャックス(JACCS CO.,LTD.)とし株式額面を50円に変更 | ★ | |||
| パイオニアクレジットを吸収合併 | ★ | |||
| 金融機関と提携しカードローンの保証業務を開始 | ★★ | |||
| ジェー・ティー・エスを設立 | ★ | |||
| 国際カード「ジャックスマスターカード」・「ジャックスVISAカード」の発行を開始 | ★ | |||
| JACCS International(U.S.A.)Inc.を設立 | ★ | |||
| 1990〜2009年リボ金利16.8%引下げと不動産非保有が支えた競合倒産期の独立経営 | ジェーシービーと提携しジャックスJCBカードの発行を開始 | ★ | ||
| ジャックスカーリースを設立 | ★ | |||
| JACCS INTERNATIONAL(SINGAPORE)PTE LTD.を設立 | ★ | |||
| JACCS INTERNATIONAL(Hong Kong)Co., Ltd.を設立 | ★ | |||
| リボ払い金利を業界最低の16.8%へ——利息制限法を自ら割った先回りの値下げ 1997年2月と1998年2月の二度にわたり、ジャックスは主力カードのリボ払い金利を24.36%から18%、さらに16.8%へ引き下げ、利息制限法の上限18%を下回る業界最低の水準に置いた経営判断。小島賢蔵社長が調達コストの低い時期を選び、銀行系カードへの分割払い解禁を先読みして踏み切った。 詳細を読む | ★★★ | |||
| ジャックス債権回収サービスを設立し同年9月にサービサー許可取得 | ★ | |||
| 杉本直栄 | JACCS International(U.S.A.)Inc.を清算 | ★ | ||
| 杉本直栄 | JACCS INTERNATIONAL(SINGAPORE)PTE LTD.を清算 | ★ | ||
| 杉本直栄 | ケー・ジェー・オイルを清算 | ★ | ||
| 杉本直栄 | 三菱UFJの系列入り——20%出資の受け入れと、日本信販の個品割賦承継 2008年2月25日、三菱東京UFJ銀行はジャックスの第三者割当増資を全額引き受け、出資比率を4.66%から20.00%へ引き上げて持分法適用関連会社とした。引受は普通株式2,821万株・1株318円のおよそ90億円。翌4月にはジャックスが三菱UFJニコスの個品割賦事業を承継し、業界2位だった日本信販の顧客基盤を引き継いだ。 詳細を読む | ★★★ | ||
| 杉本直栄 | 三菱UFJニコスの個品割賦事業を分社化したJNS管理サービスの全株式を取得 | ★ | ||
| 2010〜2026年三菱UFJ傘下とASEAN二輪・自動車ローンによる構造再編 | 春野伸治 | JACCS International Vietnam Finance Co.,Ltd.を設立 | ★ | |
| 板垣康義 | MMPC Auto Financial Services Corporationを合弁で設立 | ★ | ||
| 板垣康義 | PT Mitra Pinasthika Mustika Financeの株式を追加取得し連結子会社に | ★★ | ||
| 板垣康義 | JACCS FINANCE(CAMBODIA)PLC.(現 JACCS MICROFINANCE(CAMBODIA)PLC.)を設立 | ★ | ||
| 山﨑徹 | ジェーシービーの信用保証事業を会社分割(簡易吸収分割)により承継 | ★ | ||
| 山﨑徹 | プライム市場に移行 | ★ | ||
| 村上亮 | JACCS FINANCE(CAMBODIA)PLC.をJACCS MICROFINANCE(CAMBODIA)PLC.に商号変更 | ★ | ||
| 村上亮 | ジャックスリースが三菱オートリースと資本業務提携を締結 | ★ | ||
| 村上亮 | ジャックス・ペイメント・ソリューションズを吸収合併 | ★ |
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事実根拠:出所(ジャックス)