ジャックス 三菱UFJの系列入り 20%出資の受け入れと、三菱UFJニコスの個品割賦承継

更新:

時期 2008年2月
当時の社長 杉本直栄
論点 メガバンク系列入りと個品割賦事業の承継
何をなぜ決めたか
概要

2008年3月17日、三菱東京UFJ銀行を割当先とする第三者割当増資の払い込みが完了し、ジャックスは同行の持分法適用関連会社となった。発行したのは普通株式28,215,000株、発行価格は1株318円、資本組入額は1株159円で、調達した8,972百万円は資本金と資本準備金へ4,486百万円ずつ組み入れられた。

発行済株式総数は147,180,808株から175,395,808株へ増え、同行の持株比率は前期末の4.66%から20.00%へ上がって大株主第1位となった。同日、主要株主の異動として臨時報告書が提出されている。

背景

2006年12月に改正貸金業法が成立し、グレーゾーン金利の撤廃と過払い利息の返還請求が信販と消費者金融の収益を崩した。ジャックスは利息制限法で定められた上限金利の範囲内で貸出金利を運営してきたため、過払い利息返還や既存金利引下げ等の負荷がなく、前向きな戦略に特化できる状況にあった。

縮小傾向とはいえ約10兆円の規模を保つ個品割賦市場では、優良マーケットでのシェア拡大とコスト競争力の確保、そして割賦販売法の改正を見据えたコンプライアンス態勢の強化を的確に実施できることが、リーディングカンパニーに必須の条件であった。

内容

2007年9月20日の取締役会で三菱UFJニコス・MUFG・三菱東京UFJ銀行との業務・資本提携基本合意書の締結を決議し、同年10月31日には個品割賦事業の承継に係る株式売買契約を締結した。基本合意には、三菱東京UFJ銀行が2007年度中に議決権所有比率を20%まで引き上げて持分法適用関連会社とすることが盛り込まれていた。

2008年4月1日、三菱UFJニコスはショッピングクレジット・オートローン・オートリースの各事業を新設の完全子会社へ吸収分割で移し、ジャックスがJNS管理サービスの全株式20株を20百万円で取得した。承継した従業員は335名、拠点は5。同日2,100億円を借り入れ、承継した借入金を借り換えている。

含意

出資は20%にとどまり、ジャックスは上場を保ったまま経営の独立を続けた。三菱東京UFJ銀行との関係内容は資金の借入れおよび保証業務提携等で、2009年3月末の被所有割合は同行20.11%、MUFGグループ全体では22.01%、その全額が間接所有だった。

関係が動いたのは17年後で、2025年3月14日の資本業務提携契約により9,980,831株を1株3,916円・総額39,084,934,196円で追加発行し、払い込みは2025年9月12日に完了した。同行が指名する2名を取締役候補者とすることも定められ、2026年3月末の被所有割合は40.1%となっている。

いつ何が起きたか 9件
筆者の見解
筆者の見解

20%で止めた提携の意味

この提携は、資本の受け入れというより、負っていない傷を値打ちに変える取引だったとみられる。改正貸金業法は信販と消費者金融を等しく襲ったが、ジャックスは利息制限法の上限金利の範囲内で運営してきたため過払い利息返還の負荷がなく、「前向きな戦略に特化できる」側に立っていた。だからこそ、沈む側の営業基盤だけを従業員335名・5拠点という最小の受け入れで引き取り、同時に8,972百万円の資本を招き入れることができた。持分は20.00%で止まり、上場も経営の独立も手放していない。

もっとも、その提携が業績を押し上げたとは言いにくい。連結取扱高は2007年3月期の2兆5,626億円が天井で、承継を経た2013年3月期でも2兆4,804億円にとどまり、受け皿のJNS管理サービスは初年度の経常利益4億71百万円を最後に赤字が続いて2013年4月に吸収合併された。効いたのは資本のほうで、自己資本比率は3.6%から4.3%へ厚みを増した。そして17年後の2025年、同じ相手からの追加出資で被所有割合は40.1%へ上がり、取締役2名の指名も受け入れた。20%で止めた間合いは、独立を守る答えではなく、答えを先送りにする置き方だったのかもしれない。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

業績の推移
資本業務提携と事業承継の条件

資本業務提携と事業承継の条件

科目 概要 備考
基本合意の決議 2007年9月20日 取締役会で三菱UFJニコス・MUFG・三菱東京UFJ銀行との業務・資本提携基本合意書の締結を決議
最終契約の決議 2007年10月31日 取締役会で三菱UFJニコスとの個品割賦事業の承継に係る株式売買契約の締結を決議
出資の形態 第三者割当 割当先は三菱東京UFJ銀行。有価証券届出書は2008年2月25日に提出した
発行株式数 28,215,000株 発行済株式総数は147,180,808株から175,395,808株へ増加した
発行価額 1株318円 資本組入額は1株159円
出資額 8,972百万円 資本金・資本準備金にそれぞれ4,486百万円を組み入れ、資本金残高は16,138百万円となった
払込日 2008年3月17日 同日、主要株主の異動として臨時報告書を提出。資本提携はこの日をもって完了した
議決権所有割合 20.00% 2008年3月末の大株主第1位。前期末は6,864千株・4.66%だった
会計上の取扱い 三菱東京UFJ銀行の持分法適用関連会社 2009年3月末の被所有割合は同行20.11%、MUFGグループ全体では22.01%で全額が間接所有
役員の兼任 なし 関係内容は資金の借入れおよび保証業務提携等。2025年の提携拡充で同行が指名する2名を取締役候補者とした
業務提携の対象 クレジットカード・個品割賦・決済・住宅関連ローン プロセシングとアクワイアリングの共同化、加盟店の紹介、EC決済と集金代行の相互提供
承継した事業 ショッピングクレジット・オートローン・オートリース いずれも信用保証を含む。三菱UFJニコスおよびその連結子会社が営む個品割賦事業
事業承継の方法 吸収分割で新設子会社へ移し、その全株式を譲受 受け皿はJNS管理サービス。取得株式数20株・取得金額20百万円で持株比率100%
承継日 2008年4月1日 承継従業員数335名、承継拠点5。三菱UFJニコス側の譲渡損失は120億円
承継に伴う資金調達 2,100億円 2008年4月1日にジャックスが借り入れ。子会社取得に伴い承継した借入金の借換を目的とする

出所:ジャックス 有価証券報告書 第77期(2008年3月期)【経営上の重要な契約等】【発行済株式総数、資本金等の推移】【大株主の状況】【重要な後発事象】、第78期(2009年3月期)【関係会社の状況】

資本構成と財務基盤の推移

ジャックス:資本構成と財務基盤の推移

(百万円) 資本金資本準備金純資産額総資産額 備考
2003年3月期 11,65125,98280,0382,802,731
2004年3月期 11,65125,98288,0252,787,350
2005年3月期 11,65125,98294,5272,812,645
2006年3月期 11,65125,982107,3002,797,953 自己資本比率は3.8%
2007年3月期 11,65125,982105,3472,833,124 三菱東京UFJ銀行は6,864千株・4.66%を保有する第3位株主
2008年3月期 16,13830,46899,5382,788,607 第三者割当増資で資本金・資本準備金が各4,486増加。自己資本比率は3.6%
2009年3月期 16,13830,46897,8493,024,588 JNS管理サービスの連結で割賦売掛金と有利子負債が増え、自己資本比率は3.2%
2010年3月期 16,13830,468103,2732,827,806
2011年3月期 16,13830,468105,2612,786,288
2012年3月期 16,13830,468111,3482,725,816
2013年3月期 16,13830,468117,4862,718,518 自己資本比率は4.3%まで回復
資本金と資本準備金
資本金(百万円)資本準備金(百万円)純資産額率(%)

出所:ジャックス 有価証券報告書 第75期・第79期・第82期【主要な経営指標等の推移】、第76期・第77期・第82期【発行済株式総数、資本金等の推移】

連結取扱高と業績の推移

ジャックス:連結取扱高と業績の推移

(百万円) 連結取扱高営業収益経常利益 備考
2003年3月期 −143,5568,258 取扱高は手元の有報で逐語を確認できていない
2004年3月期 −145,81111,443 取扱高は手元の有報で逐語を確認できていない
2005年3月期 −144,90513,421 取扱高は手元の有報で逐語を確認できていない
2006年3月期 2,431,700149,70015,185 取扱高は億円単位までの開示
2007年3月期 2,562,672154,9035,272
2008年3月期 2,448,288139,912△8,400 上場以来初の経常損失。営業収益の計上基準の見直しも減収に効いた
2009年3月期 2,412,646142,0396,278 承継した加盟店が寄与。JNS管理サービスを連結し、貸倒関連費用の削減で黒字化
2010年3月期 2,316,012127,10110,433
2011年3月期 2,328,294116,2415,479
2012年3月期 2,387,501107,38413,271
2013年3月期 2,480,470102,95011,750 取扱高は提携前の2007年3月期に届かないまま推移
連結取扱高と経常利益率
連結取扱高(百万円)経常利益率(%)

出所:ジャックス 有価証券報告書 第75〜82期【主要な経営指標等の推移】【業績等の概要】

承継の受け皿となったJNS管理サービスの業績

ジャックス:承継の受け皿となったJNS管理サービスの業績

(百万円) 営業収益経常損益当期純損益 備考
2009年3月期 11,301471△946 連結初年度。想定を上回る貸倒関連費用と一部有税引当で最終赤字
2010年3月期 5,433△1,093△1,275
2011年3月期 2,304△1,633△1,657
2012年3月期 875△1,149△1,150
2013年3月期 268△2,064△2,069 営業債権残高の減少に伴い、2013年4月1日付でジャックスへ吸収合併し解散
JNS管理サービスの営業収益
営業収益(百万円)経常損益率(%)

出所:ジャックス 有価証券報告書 第77〜82期【業績等の概要】【重要な後発事象】

同じ問いに直面した会社
参考文献
出典・参考
  • 三菱UFJフィナンシャル・グループ ニュースリリース(2008年2月25日)「株式会社ジャックスとの資本提携に関するお知らせ」
  • 三菱UFJニコス ニュースリリース(2008年4月1日)「個品割賦事業の承継及び運用に関するお知らせ」
  • 三菱UFJ銀行 ニュースリリース(2025年3月14日)「株式会社三菱UFJ銀行と株式会社ジャックスによる業務・資本提携の拡充について」
  • ジャックス 有価証券報告書「第77期(2008年3月期)【経営上の重要な契約等】」
  • ジャックス 有価証券報告書「第77期(2008年3月期)【発行済株式総数、資本金等の推移】【大株主の状況】」
  • ジャックス 有価証券報告書「第77期(2008年3月期)【重要な後発事象】」
  • ジャックス 有価証券報告書「第78期(2009年3月期)【関係会社の状況】【業績等の概要】」
  • ジャックス 有価証券報告書「第75期・第79期・第82期(2006年・2010年・2013年3月期)【主要な経営指標等の推移】」
  • ジャックス 有価証券報告書「第94期(2025年3月期)【重要な契約等】」
  • ジャックス 有価証券報告書「第95期(2026年3月期)【追加情報】【関係会社の状況】」

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