DCMホールディングスホームセンター事業会社5社の吸収合併によるDCM株式会社の発足と、店名の「DCM」への統一

地域で親しまれた屋号を残すか、一つの会社に束ねるか——持株会社15年目に踏んだ法人格の統一

時期 2019年12月
意思決定者(推定) 久田宗弘(社長)・石黒靖規 社長
論点 グループ経営体制と屋号
概要
2021年3月1日、DCMホールディングスはホームセンター事業を承継させた分割準備会社を存続会社とし、DCMカーマ・DCMダイキ・DCMホーマック・DCMサンワ・DCMくろがねやの5社を吸収合併し、DCM株式会社が発足した。
背景
2015年にサンワドー、2016年にくろがねやを株式交換で迎えて事業会社は5社になり、規模も収益力も屋号もそろわないまま並んでいた。既存店売上高は2018年2月期上期に5.1%減、2020年2月期上期に2.9%減と落ち込んでいた。
内容
店舗業務システムを2019年9月に完全統一し、事業会社間で店舗運営部長・エリアマネージャー・店長を入れ替える実験と人事制度の仮貼り付けを済ませたうえで、2020年4月に分割準備会社を設立し、翌年3月に5社を吸収合併した。
含意
法人格の統一は、システム・店舗運営・人事をそろえ終えた後に置かれた最後の手続きであった。店名の「DCM」への統一は合併から1年後の2022年3月に公表され、看板の掛け替えにさらに2年を見込んだ。
筆者の見解

合併の日には、変えるものが残っていなかった

久田宗弘社長が2019年10月の説明会で挙げたのは、店舗運営部長・エリアマネージャー・店長を事業会社の間で入れ替えても「今現在なんの問題もなく回る」という確認であった。合併の1年5カ月前に、店舗業務システムも店舗運営の手順も人事制度もそろえ終えていた。2021年3月1日に行われたのは、その下ごしらえを登記が追認する手続きに近い。中身を変え終えた後に法人格が追いつく、という順序であった。

ただ、統合が既存店の売上を戻したわけではない。2018年2月期上期の5.1%減、2020年2月期上期の2.9%減という落ち込みは、法人格をそろえても解けない問題であり、利益を支えたのはPB構成比を16.8%から22.1%へ引き上げた粗利の改善であった。店名の統一に至っては合併の1年後に発表され、看板の掛け替えにさらに2年を見込んでいる。一つの会社になることと、一つの店に見えることの間には、なお隔たりが残っていた。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

背景

3社で始めた持株会社が5社になるまで

DCMホールディングスは、カーマ・ダイキ・ホーマックの3社が共同株式移転で2006年9月に設立した持株会社である。2015年3月に3社の商号をDCMカーマ・DCMダイキ・DCMホーマックへ改め、同年7月には青森のサンワドーを株式交換で完全子会社としてDCMサンワに、2016年12月には甲府のくろがねやを同じ方式で迎えてDCMくろがねやとした。刈谷・松山・札幌・青森・甲府の5社が、地域を分けて店を持つ形になった[1]

5社の規模はそろっていなかった。2018年2月期のセグメント売上高はDCMホーマックが1,819億円、DCMカーマが1,290億円、DCMダイキが918億円で、最大と最小に倍の開きがあった。報告セグメントに載らないDCMサンワとDCMくろがねやはさらに小さく、収益力の差も大きかった。2018年2月期上期のDCMサンワの営業利益は2億6,000万円、DCMくろがねやは6,400万円の赤字であった[2][3]

既存店が戻らず、粗利で利益を確保していた

店の側の数字は伸びていなかった。2018年2月期上期の既存店売上高は前年同期比5.1%減で、当初計画のマイナス2.1%を3ポイント下回った。来店客数も5.6%減った。2020年2月期上期も、プラス0.7%の計画に対して実績は2.9%減となり、天候不順と長梅雨で7月の夏物商戦を落とした。同社は説明会のたびに、既存店の改革が最大の課題であると述べていた[4][5]

それでも利益は落ちなかった。プライベートブランド商品の売上構成比を2018年2月期上期末の16.8%から2020年2月期上期末の22.1%へ引き上げ、値入率も36.7%から37.4%へ改めて、粗利の厚みで減収を埋めた。買収した2社の立て直しも進み、DCMサンワは全面改装で粗利率を20.8%から25.6%へ上げて黒字に戻り、DCMくろがねやのDCM流への改装効果は1年を過ぎても続いた[6][7]

決断

一つの会社として回るかを、先に試した

法人格を一つにする前に、中身をそろえる作業が先行した。店舗業務のシステムは2019年9月に完全統一を終え、並行して動いていた旧システムを順に止めた。店舗運営の手順もほぼ合わせ終え、事業会社をまたいで店舗運営部長を1名ずつ、エリアマネージャーを2名ずつ、店長を4名ずつ入れ替えて配置する実験を行った。久田宗弘社長は、それで「今現在なんの問題もなく回る」ことを確かめたと述べている[8]

人事制度も2021年3月の完全統一を前提に仮貼り付けし、旧事業会社の社員を同じ制度へ載せた。久田社長は、これで各事業会社に偏っている人材を適材適所へ動かせるようになると説明した。組織では在庫管理部を新設し、季節商品は夏物・冬物とも約1,000アイテムを本部から一斉に送り込む方式へ切り替えた。そのうえで、次の中期計画に向けて「1つの会社として運営ができる体制を作り上げます」と語った[9][10]

統合の発表と、実行役の交代

統合の発表は2019年12月10日であった。DCMホールディングスは事業会社5社を2021年3月をめどに統合すると公表し、同時に2020年3月1日付の人事を示した。2007年5月から社長を務めた久田宗弘氏が会長兼CEOへ退き、DCMホーマック創業家出身の石黒靖規副社長が社長兼COOへ昇格するという内容であった。石黒氏は1991年に石黒ホーマへ入社し、2011年からホーマックの社長を務めていた[11][12][13]

手順は分社と合併の二段構えを取った。2020年4月10日の取締役会で完全子会社のDCM分割準備株式会社を設立し、持株会社が営むホームセンター事業を承継させる吸収分割契約を同日締結した。2021年3月1日、その分割準備会社へ事業を移したうえで、同社を存続会社として事業会社5社を吸収合併し、商号をDCM株式会社へ改めた。同じ日にDCMダイキがホームセンターサンコーを吸収合併し、傘下の法人も整理した[14][15]

結果

4,000人を一つの法人へ集めた

合併直前の2021年2月期は、営業収益4,712億円、経常利益296億円、親会社株主に帰属する当期純利益186億円で、経常利益は前期の201億円から大きく増えた。連結従業員4,059人のうち、DCMカーマ965人、DCMダイキ914人、DCMホーマック1,631人が事業会社に属し、持株会社に籍を置く従業員は256人にとどまっていた。合併は、この4,000人規模の人員を一つの法人へ集める作業でもあった[16][17]

一社になった効果は、開示の形にも表れた。2021年2月期まで、有価証券報告書はDCMカーマ・DCMダイキ・DCMホーマックの3社を報告セグメントとし、会社ごとに売上高と営業利益を並べていた。合併後の2022年2月期からは「ホームセンター事業」の一本になり、営業収益4,445億円・セグメント利益304億円がまとめて示された。地域の会社別に損益を見る形が消え、事業単位で見る形へ替わった[18]

最後に残った看板

残っていたのが店の看板であった。法人格が一つになった後も、店名はDCMカーマ・DCMダイキ・DCMホーマック・DCMサンワ・DCMくろがねやのまま置かれていた。DCM株式会社が店舗ロゴマークの変更と店名統一を公表したのは、合併から1年後の2022年3月1日である。ホダカとホーマックニコットを除く全国約510店の看板・サインを、2022年3月からの2年間で順次「DCM」へ改めるという内容であった[19]

発表文は、店名がそれぞれの地域で長く親しまれてきた事業会社の屋号であったことを認めたうえで、今回の変更を「完全統合の集大成」と呼んでいる。新しいロゴは2022年3月17日に開いた大垣鶴見店から使い始めた。2015年に5社へ増えた屋号は、7年を経て一つに畳まれた。地域名で呼ばれてきた店を全国共通の名前へ替える判断が、5社の統合の最後に残った部分であった[20]

出典・参考

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