ツルハホールディングス グループシナジー路線へ転換 グループ共通のプライベートブランドと商品調達の統合による、事業会社の強みとの両立
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何をなぜ決めたか
- 概要
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2020年6月、鶴羽順氏が代表取締役社長兼社長執行役員に就任した。前任の堀川政司氏は同年6月2日付で取締役を退任している。退任の理由は公表されていない。
鶴羽順氏は1998年4月に株式会社ツルハへ入社した生え抜きで、2014年8月から同社の代表取締役社長、2018年8月からは持株会社の代表取締役専務兼専務執行役員として営業統括とグループ店舗運営部門を担っていた。取締役会長鶴羽樹氏の子にあたる。
- 背景
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就任の直前、2020年5月28日にJR九州ドラッグイレブンを株式取得で子会社化し、出店地域は40都道府県へ広がった。2020年5月期の売上高は841,036百万円、期末の直営店舗数は2,150店舗に達している。
規模は業界最大になった一方、売上総利益率は2016年5月期の28.3%から2020年5月期の29.0%まで、4期で0.7ポイントしか動いていない。買収した各社の店舗名と営業施策をそのまま残す運営は、出店の速さには効いても、グループを一体で稼ぐ力には届いていなかった。
- 内容
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就任から20日後、2020年6月22日の2020年5月期決算説明会で示したのは、2024年5月期に売上高1兆円・店舗数3,000店舗という中期目標と、それを支える4つの基本戦略だった。うち「グループの組織力と収益力強化」は、商品調達やコスト面で統合効果を出しつつ、店舗名・営業施策は引き継いで各社の地元での強みを維持するという、両立の形をとった。
その中核に据えたのがグループ共通のプライベートブランド「くらしリズム」で、2021年5月期末に700SKU、旧ブランドのエムズワンと合わせて売上高400億円を目標に置いた。グループ全店での販売と商品開発・ブランディングの推進が、統合効果を測る物差しになった。
- 含意
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くらしリズムは2021年5月期末に740SKUと目標を超え、プライベートブランド全体の売上構成比は8.3%、2024年5月期には10.5%へ上がった。連結の売上総利益率も2020年5月期の29.0%から2024年5月期の30.4%へ1.4ポイント動いている。
もっとも、プライベートブランドの売上総利益率は2021年5月期の43.7%から2024年5月期の41.8%へ下がっており、構成比の上昇がそのまま粗利の厚みになるわけではない。2024年2月28日に締結したイオン・ウエルシアホールディングスとの資本業務提携は、この一体運営の課題を桁違いの規模へ持ち越した。
いつ何が起きたか 7件
筆者の見解
拡大した規模を、どう一体で収益に変えるか
この判断の芯は、外へ広げる成長を否定せずに、その中身を入れ替えた点にある。掲げたのは「事業会社の強みとグループシナジーの両立」であって、買収した各社を一色に染めることではない。店舗名も営業施策も各社に残したまま、商品調達と共通プライベートブランドという、店頭から見えにくいところだけを集約する。20年かけて磨いた買収の型はそのままに、統括する層を一段だけ足す——創業家出身の社長が最初に手を入れたのが、自分の家業が積み上げてきた成功の型の、その裏側だったことは示唆的だと思われる。
もっとも、構成比の上昇がそのまま利益の質になるわけではない。プライベートブランドの売上構成比は2020年5月期の7.8%から2024年5月期の10.5%へ伸びたが、同じ期間にプライベートブランドの売上総利益率は下がっている。共通ブランドは売場を押さえる力にはなっても、値づけの自由をもたらすとは限らない。連結の売上総利益率が29.0%から30.4%へ動いたのは、調剤や化粧品を含めた品揃え全体の組み替えの結果でもあった。2024年2月のイオン・ウエルシアホールディングスとの提携は、この問いを自力で解く道を選ばなかったという答えにも読めるのではないか。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
業績の推移
社長交代と方針の提示
社長交代と方針の提示
| 科目 | 概要 | 備考 |
|---|---|---|
| 前社長の退任 | 2020年6月2日 | 堀川政司氏が取締役を退任。2014年8月から代表取締役社長兼社長執行役員を務めた |
| 退任の理由 | 会社の公表資料に記載なし | 有価証券報告書は退任の事実だけを記し、理由には触れていない |
| 新社長の就任 | 2020年6月 | 鶴羽順氏が代表取締役社長兼社長執行役員に就任。日付までは開示されていない |
| 新社長の経歴 | 1998年4月に株式会社ツルハ入社 | 2014年8月に同社代表取締役社長、2018年8月に当社代表取締役専務兼専務執行役員 |
| 創業家との関係 | 取締役会長鶴羽樹氏の子 | 2005年の持株会社移行後、創業家出身の社長は鶴羽樹氏に次いで2人目 |
| 取締役の任期 | 1年 | 取締役の使命と責任をより明確にするため1年としている |
| 方針の提示 | 2020年6月22日の2020年5月期決算説明会 | 中期目標と、それを支える4つの基本戦略を提示した |
| 中期目標 | 2024年5月期に売上高1兆円・3,000店舗 | 2020年5月期の実績は売上高841,036百万円、期末の直営店舗数2,150店舗 |
| グループ運営の方針 | 事業会社の強みとグループシナジーの両立 | 商品調達・コスト面の統合効果を出しつつ、店舗名・営業施策は各社に残す |
| プライベートブランドの目標 | くらしリズムを2021年5月期末に700SKU | 前期末比197SKU増。エムズワンとの合算売上高は400億円、前期比107.7% |
| 統治機構の変更 | 2021年8月10日に監査等委員会設置会社へ移行 | 定時株主総会の定款変更決議により、監査役会設置会社から移行した |
出所:ツルハホールディングス 有価証券報告書 第58期(2020年5月期)・第59期(2021年5月期)【役員の状況】【コーポレート・ガバナンスの状況等】、2020年5月期決算説明会資料
売上高と売上総利益率の推移
ツルハホールディングス:売上高と売上総利益率の推移
| (百万円) | 売上高 | 売上総利益 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2016年5月期 | 527,508 | 149,412 | |
| 2017年5月期 | 577,088 | 165,451 | |
| 2018年5月期 | 673,238 | 192,835 | |
| 2019年5月期 | 782,447 | 223,782 | |
| 2020年5月期 | 841,036 | 244,262 | 5月28日にJR九州ドラッグイレブンを子会社化。期末の直営店舗数は2,150店舗 |
| 2021年5月期 | 919,303 | 266,721 | 鶴羽順氏の社長就任後の初年度。JR九州ドラッグイレブンが通期で加わった |
| 2022年5月期 | 915,700 | 271,483 | 収益認識に関する会計基準を適用した期 |
| 2023年5月期 | 970,079 | 293,361 | |
| 2024年5月期 | 1,027,462 | 312,276 | 売上高が初めて1兆円を超えた。中期目標の1兆円は達成期に届いた |
| 2025年2月期 | 845,603 | 257,540 | 決算期変更により2024年5月16日から2025年2月28日までの9か月半 |
| 2026年2月期 | 1,450,585 | 443,989 | 12月1日からウエルシアホールディングスを連結。取り込みは3か月分 |
出所:ツルハホールディングス 有価証券報告書 第54〜64期(連結損益計算書)
プライベートブランドの売上高と構成比
ツルハホールディングス:プライベートブランドの売上高と構成比
| (百万円) | くらしリズムシリーズ | 全PB売上高 | PB売上構成比(%) | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 2020年5月期 | 15,266 | 60,117 | 7.8 | くらしリズムへの切り替えが進んだ期。エムズワン・メディズワンは21,864 |
| 2021年5月期 | 24,484 | 63,991 | 8.3 | くらしリズムは期末740SKUで700SKUの目標を達成。PB粗利率は43.7% |
| 2024年5月期 | 49,649 | 94,324 | 10.5 | PB粗利率は41.8%で前年同期比1.7ポイント低下。構成比は0.9ポイント上昇 |
出所:ツルハホールディングス 2020年5月期・2021年5月期・2024年5月期決算説明会資料(PB商品実績)
同じ問いに直面した会社
参考文献
- ツルハホールディングス 決算説明会資料「2020年5月期決算説明会資料」
- ツルハホールディングス 決算説明会資料「2021年5月期決算説明会資料」
- ツルハホールディングス 決算説明会 質疑応答「2021年5月期決算説明会 質疑応答」
- ツルハホールディングス 決算説明会資料「2024年5月期決算説明会資料」
- ツルハホールディングス 有価証券報告書「第58期(2020年5月期)【役員の状況】【企業結合等関係】」
- ツルハホールディングス 有価証券報告書「第59期(2021年5月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】」