円谷フィールズHDへ改称(2022年・円谷フィールズHDの決断)

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論点 遊技機を切り出しIP投資に専念するか
円谷フィールズHD:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
持株会社体制への移行と、商号を変更したグループ再編

何をなぜ決めたか:持株会社体制への移行と、商号を変更したグループ再編

概要

2022年10月3日、フィールズは単独の新設分割によって持株会社へ移り、同日付で商号を円谷フィールズホールディングス株式会社へ変更した。承継会社として新設したフィールズ株式会社へ移したのは、遊技機の企画開発および販売事業である。

分割前の提出会社の売上高83,604百万円はその全額がこの事業で、稼いでいる事業をまるごと子会社へ渡し、親会社はグループ経営管理に退いた。新設会社が発行した普通株式1,000株は全株を分割会社が引き受け、資本金の増減はない。共通支配下の取引として処理されている。

背景

2021年3月期はコロナ禍による遊技機市場の縮小で連結売上高38,796百万円・営業損失2,241百万円まで落ち、翌2022年3月期は売上高94,900百万円・営業利益3,444百万円へ戻した。

移行の理由は、この期のセグメント別の姿に表れている。売上の9割近くを占めるPS事業のセグメント利益が1,750百万円だったのに対し、売上8,851百万円のコンテンツ&デジタル事業は1,465百万円を稼いでいた。売上で1割に満たない事業が、利益では肩を並べていた。

内容

2022年3月22日に検討開始を公表し、5月18日の取締役会で新設分割計画書を承認、6月22日の第34回定時株主総会で定款の一部変更とあわせて関連議案が承認された。効力発生日は10月3日。

承継は効力発生日時点の資産・負債・雇用契約その他の権利義務を包括して移す形をとり、新設会社へ承継する債務は分割会社も重畳的に引き受けた。報告セグメントはIPを基軸とする単一セグメントから、コンテンツ&デジタル事業とPS事業の2区分へ改まり、2023年3月期第3四半期から適用された。

含意

2010年に議決権の51.0%を取得した子会社の名が、12年後に親会社の商号となった。同じ手法は2001年にも使っている。名古屋で遊技機と製鉄原料を扱って出発した株式会社東洋商事は、新設分割で製鉄原料部門を新会社へ移し、自らはフィールズを名乗った。

残す事業ではなく、残す名前のほうを先に決める再編である。2022年に切り出したのは、単体売上の全額を稼いでいた遊技機事業だった。

いつ何が起きたか 9件
当時の取締役 7名

当時の取締役(2021年6月株主総会決議)

  • 山本英俊:会長
  • 吉田永:専務
  • 小澤謙一:取締役
  • 山中裕之:取締役
  • 吉田賢吉:取締役
  • 糸井重里:社外取締役
  • 依子:社外取締役
考察:社名が先に動く再編
考察

考察:社名が先に動く再編

持株会社化そのものは珍しい手続きではない。この事例で目を引くのは、単体売上の全額を稼いでいた事業の名を子会社へ渡し、売上で1割に満たない事業に由来する名前をグループの看板に掲げた点にあると思われる。組織の形は、稼ぎの大きさではなく、これから稼ごうとする方向に合わせて選ばれた。遊技機事業を新設分割で切り出し、IP・デジタルの企業群と横並びに置く配置も同じ考え方の延長にある。数字の現在地よりも、対外的な自己申告を先に動かす再編であった。

もっとも、この順序には賭けの要素が残る。名前を変えても、当面の利益は遊技機の入替需要が支え続ける。移行後の4期で、看板に名を残した側の利益はむしろ細っている。コンテンツ&デジタル事業のセグメント利益は2023年3月期の4,378百万円を頂点に、2026年3月期は934百万円まで減少した。この事業に掲げた2028年3月期の営業利益100億円という目標に届かなければ、社名と収益構造の乖離はむしろ広がっていく。今回の名乗りが定着するのかどうかは、その3年で見えてくるのだろう。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
数字で見る 3表

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図と表

円谷フィールズHD:事業セグメント別の売上高とセグメント利益の推移

コンテンツ&デジタル事業 売上高(百万円)PS事業 売上高(百万円)コンテンツ&デジタル事業の利益率(%)
円谷フィールズHD:事業セグメント別の売上高とセグメント利益の推移
(百万円) コンテンツ&デジタル事業 売上高PS事業 売上高コンテンツ&デジタル事業 利益PS事業 利益 備考
2022年3月期 8,85183,7151,4651,750 移行前。2023年3月期の有報で新区分に組み替えて開示された前期分
2023年3月期 14,029100,8054,3787,714 2022年10月3日に移行。第3四半期から2区分へ変更した最初の期
2024年3月期 14,998125,3283,78110,412
2025年3月期 16,008122,9002,83515,277 この期からPS事業はアミューズメント機器事業へ名称を変更している
2026年3月期 13,468158,89993419,881
出所:円谷フィールズホールディングス 有価証券報告書 第35〜38期(セグメント情報等)
出所:円谷フィールズホールディングス 有価証券報告書 第35〜38期(セグメント情報等)

円谷フィールズHD:連結従業員数と提出会社従業員数の推移

提出会社従業員数(名)子会社の従業員数(名)
円谷フィールズHD:連結従業員数と提出会社従業員数の推移
(名) 連結従業員数提出会社従業員数 備考
2018年3月期 1,514728
2019年3月期 1,342535
2020年3月期 1,341510
2021年3月期 1,266527
2022年3月期 1,193505 移行前。提出会社が遊技機事業の販売部門を直接抱えていた最後の期
2023年3月期 1,259104 提出会社は401名減。遊技機事業をフィールズ株式会社へ承継したことによる
2024年3月期 1,423104
2025年3月期 1,664117
2026年3月期 1,774110 提出会社の従業員はすべて持株会社に所属し、セグメント別の記載はない
出所:円谷フィールズホールディングス 有価証券報告書 第30〜38期(従業員の状況。臨時雇用者数を除く就業人員数)
出所:円谷フィールズホールディングス 有価証券報告書 第30〜38期(従業員の状況。臨時雇用者数を除く就業人員数)

新設分割の条件

新設分割の条件
科目 概要 備考
検討開始の公表 2022年3月22日 「持株会社体制への移行検討開始のお知らせ」で持株会社の商号と移行日を示した
新設分割計画書の承認取締役会 2022年5月18日 同日、定款の一部変更もあわせて決議。5月20日に臨時報告書を関東財務局長へ提出
新設分割計画書の承認株主総会 2022年6月22日 第34回定時株主総会で関連議案を承認
企業結合日(効力発生日) 2022年10月3日 同日付で商号を円谷フィールズホールディングス株式会社へ変更
企業結合の法定形式 当社を分割会社とする単独の新設分割 新設する「フィールズ株式会社」が承継会社。当社の特定子会社にあたる
対象となった事業 遊技機の企画開発および販売事業 付帯する事業を含む
分割する事業部門の売上高 83,604百万円 2022年3月期。分割前の提出会社の売上高に対する比率は100%
株式の割当て 新設会社の普通株式1,000株 全株を分割会社である当社へ割り当て。新設会社の資本金は100百万円
資本金の増減 増減なし 分割会社の資本金は7,948百万円のまま
新設会社が承継する権利義務 効力発生日時点の資産・負債・雇用契約等 承継する債務は、当社も新設会社とともに重畳的に引き受ける
分割後の分割会社の事業内容 グループ経営管理 代表者は代表取締役社長CEOの山本英俊氏。新設会社の代表取締役も同氏が務める
会計処理 共通支配下の取引 企業結合会計基準・事業分離等会計基準および適用指針に基づく
報告セグメント 単一セグメントから2区分へ コンテンツ&デジタル事業とPS事業。2023年3月期第3四半期から適用
出所:円谷フィールズホールディングス 有価証券報告書 第34期(2022年3月期)【重要な後発事象】・第35期(2023年3月期)【企業結合等関係】
出所:円谷フィールズホールディングス 有価証券報告書 第34期(2022年3月期)【重要な後発事象】・第35期(2023年3月期)【企業結合等関係】
当時の取締役 7名

当時の取締役(2021年6月株主総会決議)

  • 山本英俊:会長
  • 吉田永:専務
  • 小澤謙一:取締役
  • 山中裕之:取締役
  • 吉田賢吉:取締役
  • 糸井重里:社外取締役
  • 依子:社外取締役
参考文献

参考文献

参考

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