円谷プロダクションの子会社化(2010年・円谷フィールズHDの決断)

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論点 遊技機の外の収益源に版権元を買収するか
円谷フィールズHD:業績の推移
売上高(億円)経常利益率(%)
映像コンテンツ版権元の取り込みによる、遊技機の外への収益源の広がり

何をなぜ決めたか:映像コンテンツ版権元の取り込みによる、遊技機の外への収益源の広がり

概要

2010年3月17日、フィールズは取締役会で円谷プロダクション株式の譲受を決議し、同年4月2日に映像制作のティー・ワイ・オーと株式譲渡契約を締結して議決権の51.0%を取得した。ウルトラマンシリーズの版元を、遊技機の販売会社が傘下に収めた取引であった。

背景

フィールズは2003年の上場後、SANKYO系・京楽系・カプコン系の各メーカーと販売契約を重ねて全国型の販社網を築き、2004年からはエヴァンゲリオンの遊技機を扱っていた。ただしIPはいずれも他社から借りる立場であり、リーマンショック後は売上も後退していた。

内容

取得原価は現金10億9,100万円で、支払資金は自己資金を充てた。円谷プロダクションの2009年7月期の純資産は8億3,200万円の債務超過で、フィールズは取得と同時に運転資金12億7,400万円を貸し付け、ティー・ワイ・オー株式の14.99%も3億6,600万円で引き受けている。同年4月16日にはデジタル・フロンティアの議決権74.3%もあわせて取得し、映像制作機能を含むかたちでIPを抱えた。

含意

買収を境に、フィールズは他社IPの流通業者から、ウルトラマンの版元として玩具・ライセンス・映像・イベントを統括する側へ立場を変えた。12年後には持株会社の商号にこの子会社の名を掲げることになる。

いつ何が起きたか 6件
考察:借りる側から、貸す側へ
考察

考察:借りる側から、貸す側へ

この買収の核心は、金額の大きさではなく、取引関係のどちら側に立つかの選択にあったと推察される。遊技機の販社は、メーカーからは機械を仕入れ、版元からはキャラクターを借りる。売れる台を見抜く目利きは必要でも、作品そのものの価値は他人の手の中にある。ティー・ワイ・オーが手放した51%を、債務超過と12億円あまりの運転資金の面倒ごと引き取ったことで、フィールズは玩具・映像・ライセンスの各出口を自ら開ける立場に移った。事業の入れ替えというより、業界の中での位置を一段動かす判断だったといえる。

もっとも、買った時点で答えが出た取引ではない。買収後の10年で遊技機事業は二度の急落を経験し、2017年3月期には過去最大の赤字を計上している。その間もウルトラマンは残り、規制や稼働に左右されない収益源として輪郭を得ていった。IPは20〜30年かけて育つという山本氏の言い方に従うなら、2010年に取得した資産の成否は、放送開始60年を迎える海外展開の帰趨にかかってくる。他人の作品を売って稼いだ会社が、自分の作品を世界へ売る会社になれるのか——問いはまだ開いたままとみられる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
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図と表

円谷フィールズHD:のれんと無形固定資産の推移

のれん(百万円)のれん以外の無形固定資産(百万円)
円谷フィールズHD:のれんと無形固定資産の推移
(百万円) のれん無形固定資産総資産 備考
2006年3月期 1,6012,75287,556 旧基準のため連結調整勘定として計上していた期
2007年3月期 1,4064,03666,081
2008年3月期 1,0573,93769,168
2009年3月期 3262,76152,064
2010年3月期 2392,33381,329 取得の決議は2010年3月17日で、この期末の残高には円谷プロ分を含まない
2011年3月期 2,8015,07078,971 円谷プロ2,055とデジタル・フロンティア579を計上した期
2012年3月期 2,4984,37293,601
2013年3月期 2,1774,540106,628
2014年3月期 1,9054,365104,869
2015年3月期 1,6184,490110,316
2016年3月期 1,2983,74692,478
出所:フィールズ 有価証券報告書 第19期〜第28期(連結貸借対照表、主要な経営指標等の推移)
出所:フィールズ 有価証券報告書 第19期〜第28期(連結貸借対照表、主要な経営指標等の推移)

円谷フィールズHD:連結業績の推移

売上高(百万円)経常利益率(%)
円谷フィールズHD:連結業績の推移
(百万円) 売上高経常利益当期純利益 備考
2006年3月期 96,81413,1277,086
2007年3月期 85,3219,2023,710
2008年3月期 101,81811,7055,296
2009年3月期 73,035991△1,481 リーマンショック後の低迷で当期純損失を計上した期
2010年3月期 66,3427,7613,289
2011年3月期 103,59313,6847,520 円谷プロダクションとデジタル・フロンティアの連結が始まった期
2012年3月期 92,1958,6615,991
2013年3月期 108,14110,2684,720
2014年3月期 114,9049,7655,370
2015年3月期 99,5545,4913,018
2016年3月期 94,4761,380118 2015年3月期からは親会社株主に帰属する当期純利益
出所:フィールズ 有価証券報告書 第19期〜第28期(主要な経営指標等の推移)
出所:フィールズ 有価証券報告書 第19期〜第28期(主要な経営指標等の推移)

買収の条件

買収の条件
科目 概要 備考
被取得企業 株式会社円谷プロダクション 映画・テレビ番組の企画・製作、キャラクター商品の企画・製作・販売
取締役会の決議日 2010年3月17日 株式譲渡契約の締結は2010年4月2日。相手先は株式会社ティー・ワイ・オー
企業結合日 2010年4月2日 みなし取得日は連結会計年度の開始日で、業績は2010年4月から通期で含む
企業結合の法的形式 株式取得 結合後企業の名称に変更はない
取得した議決権比率 51.0% 取得株式数は51,000株。企業結合日の直前に所有していた株式はない
取得企業を決定した根拠 現金を対価とした株式取得 フィールズが議決権の51.0%を取得したこと
取得原価 1,091百万円 対価は全額現金。支払資金は自己資金を充てた
のれん 2,055百万円 10年均等償却。今後の事業展開により期待される将来の超過収益力から発生
受け入れた資産合計 1,067百万円 流動資産611百万円、固定資産456百万円
引き受けた負債合計 2,031百万円 流動負債1,919百万円、固定負債112百万円
被取得企業の規模 純資産△832百万円 2009年7月期。資本金310百万円、総資産1,862百万円
売り手株式の引き受け 366百万円 ティー・ワイ・オー株式4,887,000株(14.99%)を第三者割当で取得
被取得企業への貸付 1,274百万円 円谷プロダクションに運転資金として実行
通期換算した業績への影響 影響なし 連結会計年度の開始日をみなし取得日として結合しているため
同時に取得した会社 デジタル・フロンティア 2010年4月16日に議決権74.3%を650百万円で取得。のれんは579百万円
結合の理由 IPの積極活用とマルチユース展開 新規映像開発と新シリーズ開発によるIP価値の向上、世界市場での展開
出所:フィールズ 有価証券報告書 第22期(2010年3月期)【重要な後発事象】・第23期(2011年3月期)【企業結合等関係】
出所:フィールズ 有価証券報告書 第22期(2010年3月期)【重要な後発事象】・第23期(2011年3月期)【企業結合等関係】
参考文献

参考文献

参考
  • フィールズ 有価証券報告書 第22期(2010年3月期)【重要な後発事象】
  • フィールズ 有価証券報告書 第23期(2011年3月期)【企業結合等関係】
  • フィールズ 有価証券報告書 第19期〜第28期(連結貸借対照表、主要な経営指標等の推移)
  • フィールズ 有価証券報告書【沿革】
  • 遊技通信 1251号(遊技通信社・2000年8月)
  • 円谷フィールズホールディングス 2022年3月期 決算および中期経営計画説明会 質疑応答
  • フィールズ 有価証券報告書「第22期(2010年3月期)【重要な後発事象】」
  • フィールズ 有価証券報告書「第23期(2011年3月期)【企業結合等関係】」
  • フィールズ 有価証券報告書「第19期〜第28期(連結貸借対照表、主要な経営指標等の推移)」
  • 円谷フィールズホールディングス 決算説明会 質疑応答「2022年3月期 決算および中期経営計画説明会 主な質疑応答」

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