HOYAからペンタックス買収(2011年・リコーの決断)

更新:
論点 手薄なカメラ事業を買収で補うか
リコー:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
祖業のカメラを外から補い、品ぞろえと技術を埋める選択

何をなぜ決めたか:祖業のカメラを外から補い、品ぞろえと技術を埋める選択

概要

2011年10月、HOYAがPENTAXブランドで手掛けるイメージング・システム事業を買収した。譲渡契約の締結は同年7月1日で、切り出された会社はペンタックスリコーイメージング株式会社としてリコーの傘下に入った。東京都板橋区に本社を置く資本金100百万円の会社で、デジタルカメラ等光学機器の製造および販売を担い、議決権の所有割合は100.0%である。

主導したのは近藤史朗社長で、買収後もPENTAXのブランドは製品名に残した。翌2012年3月期の有価証券報告書では、沿革に「HOYA株式会社のPENTAXイメージング・システム事業を買収」と記されている。

背景

リコーの2011年3月期の売上高は1兆9,413億円で、その大半は複写機・複合機を中心とする画像&ソリューション分野が占めていた。デジタルカメラを含むその他分野は売上高1,218億円・セグメント損失49億円にとどまり、全社の売上に占める比率は6%程度だった。

しかもその年のその他分野は、デジタルカメラなどの売上が主に海外で減少して前期比2.0%減という状態にあった。カメラは1936年の理研感光紙から続く祖業の一つでありながら、事業として自力で伸びる形にはなっていなかった。

内容

2011年度の事業の買収による支出は、取得時の現金および現金同等物の受入額を控除して148億円。このうちペンタックスリコーイメージング社および子会社の買収が主な中身である。のれんは3,726百万円をその他分野に計上した。米国会計基準を採っていたため、のれんは償却せず毎年12月31日を基準日として減損テストを行う。

2012年3月期のその他分野の売上高は前期比11.7%(142億円)増の1,361億円となり、増加の主因がこの買収だった。ただしセグメント損失は60億円へ拡大している。

含意

2013年3月期は、デジタルカメラ分野で事業構造を転換するための構造改革費用が営業費用を押し上げ、その他分野のセグメント損失は52億円となった。この一時的な費用を除けばペンタックス事業は堅調に推移し、新製品も市場で高い評価を受けている。

翌2014年3月期にはその他分野のセグメント損益が2億円の黒字へ転じた。同じ時期に会社はペンタックスリコーイメージングからリコーイメージングへ商号を変更し、買った事業を自社の名前の下に置き直している。

いつ何が起きたか 6件
考察:小さな祖業を抱え直すという選択
考察

考察:小さな祖業を抱え直すという選択

この買収の性格は、計上されたのれんの小ささによく表れている。3,726百万円は、同じ時期に連結貸借対照表へ載っていたのれん2,210億円の1.7%にすぎない。規模や収益を買いにいった案件ではなく、自前では埋まらなかったレンズ交換式カメラの技術とPENTAXという名前を、外から調達した案件だった。祖業でありながら売上比率6%の事業を、撤退でも縮小でもなく補強という形で扱った判断だといえる。

もっとも、買った側の数字は長く報われなかった。デジタルカメラを含むその他分野のセグメント損益は、買収後の6期のうち黒字が2期だけで、2017年3月期は再び60億円の損失に沈んでいる。スマートフォンの普及でカメラ市場そのものが縮んだ以上、これは当初の想定を超えた環境変化だったとみるべきだろう。それでもリコーは事業を手放さず、商号を自社の名に改めて抱え続けた。小さな祖業をどう位置づけるかという問いは、買収の条件が決着した後も残り続けている。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
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図と表

リコー:デジタルカメラを含むその他分野の業績

売上高(百万円)セグメント損益率(%)
リコー:デジタルカメラを含むその他分野の業績
(百万円) 売上高セグメント損益 備考
2010年3月期 124,402△3,447 翌期の有価証券報告書の前期比較欄から採った値
2011年3月期 121,876△4,911 買収前。デジタルカメラなどの売上が主に海外で減少し前期比2.0%減
2012年3月期 136,121△6,010 2011年10月にペンタックスリコーイメージング社が加わる。下期6か月分
2013年3月期 146,012△5,270 デジタルカメラ分野で構造改革費用を計上。IFRS組替後の売上は110,893
2014年3月期 120,800211 第114期よりIFRS。セグメント損益が黒字へ転じた
2015年3月期 116,956△3,064
2016年3月期 109,0531,411
2017年3月期 111,949△6,069 市場縮小のなかで再び損失。売上高は買収前の2011年3月期を下回る
出所:リコー 有価証券報告書 第111期〜第117期(事業の種類別セグメント情報)
出所:リコー 有価証券報告書 第111期〜第117期(事業の種類別セグメント情報)

買収の条件

買収の条件
科目 概要 備考
買収した事業 PENTAXイメージング・システム事業 HOYAがPENTAXブランドで手掛けるデジタルカメラ・交換レンズなどの事業
譲渡会社 HOYA株式会社 2007年にペンタックスを買収し、医療用内視鏡を残してイメージングを切り出した
結合後の会社 ペンタックスリコーイメージング株式会社 東京都板橋区。資本金100百万円。デジタルカメラ等光学機器の製造販売を担う
譲渡契約の締結 2011年7月1日 売り手であるHOYAの開示による。買収の実行はこの3か月後
買収の時期 2011年10月 沿革に記した時期。連結に取り込んだ業績は2012年3月期の下期6か月分
取得した議決権比率 100.0% 完全子会社。2013年度にリコーイメージング株式会社へ商号を変更した
取得に伴う現金支出 148億円 2011年度の事業の買収による支出。取得時の現金および現金同等物の受入額控除後
のれん 3,726百万円 その他分野に計上。2013年3月期末は為替の影響を受け3,740百万円
のれんの会計処理 償却せず年1回の減損テスト 米国会計基準。基準日は毎年12月31日で、減損の兆候があればその都度実施する
買収した期の売上効果 その他分野が11.7%増 2012年3月期。142億円の増加の主因。セグメント損失は60億円へ拡大した
出所:リコー 有価証券報告書 第111期(2011年3月期)・第112期(2012年3月期)・第113期(2013年3月期)(沿革・関係会社の状況・のれんの帳簿価額の変動・事業の種類別セグメント情報)
出所:リコー 有価証券報告書 第111期(2011年3月期)・第112期(2012年3月期)・第113期(2013年3月期)(沿革・関係会社の状況・のれんの帳簿価額の変動・事業の種類別セグメント情報)
参考文献

参考文献

参考
  • リコー ニュースリリース「ペンタックスリコーイメージング株式会社を発足」
  • リコー 有価証券報告書「第111期(2011年3月期)【事業の種類別セグメント情報】」
  • リコー 有価証券報告書「第112期(2012年3月期)【沿革】【関係会社の状況】【のれん、その他の無形固定資産および長期性資産】」
  • リコー 有価証券報告書「第113期(2013年3月期)【事業の種類別セグメント情報】」
  • HOYA 有価証券報告書「第74期(2012年3月期)【経営上の重要な契約等】」

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