タリーズコーヒー日本を子会社化(2006年・伊藤園の決断)

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論点 コーヒー強化は自社育成か買収か
伊藤園:業績の推移
売上高(億円)経常利益率(%)
運営会社フードエックス・グローブの株式取得による店舗網の取り込み

何をなぜ決めたか:運営会社フードエックス・グローブの株式取得による店舗網の取り込み

概要

2006年10月、伊藤園がタリーズコーヒーの日本事業を運営するフードエックス・グローブ(現・タリーズコーヒージャパン)の株式を追加取得し、所有割合を36.4%から51.0%へ引き上げて連結子会社とした経営判断。連結開始時に対応する株式の取得価格は67億84百万円で、のれん87億83百万円を計上した。

背景

主力の"お〜いお茶"に売上の多くを頼る構造は変わらず、缶コーヒー・野菜飲料と品揃えを拡大する過程でコーヒー領域の強化が課題として残っていた。1993年には相良にコーヒー焙煎加工工場を建設して原料から手がけていたが、飲料の一品目としての参入にとどまっていた。

内容

10月26日の取締役会で、株式会社ユニカフェと松田公太氏らから1,064,000株を19億15百万円で追加取得することを決議し、同日をもって取得して所有株式数を3,734,000株(51.0%)とした。翌2007年6月には2,120,000株を42億40百万円で買い増し、所有割合は80.5%となっている。

含意

協力工場方式で固定費を抑えてきた会社が、店舗という人流依存の事業を抱えた。コロナ禍の2021年4月期には飲食関連事業が13億74百万円の営業損失に沈んだ一方、2025年4月期には売上高437億69百万円・営業利益35億18百万円、総店舗数818店舗まで伸びている。

いつ何が起きたか 7件
考察:買収で得たのは店舗か、時間か
考察

考察:買収で得たのは店舗か、時間か

この買収を、茶の会社が畑違いの外食に手を出した話として読むと、性格を取り違えることになる。伊藤園は緑茶飲料でも、まず商品を作り、次に自動販売機と協力工場という販路と生産の仕組みを自前で組み上げてきた。コーヒーだけは、その順序を踏まずに完成した運営会社ごと取得している。缶コーヒーで大手と正面から争うより、店舗で確立したブランドを飲料の棚へ持ち出すほうが早いという計算が働いただろう。

もっとも、買った時点の相手は身軽な会社ではなかった。受け入れた負債は資産を2,000百万円ほど上回り、純資産は負である。取得価格6,784百万円を超える87億83百万円ののれんは、その差を将来の収益力で埋めるという見立ての大きさをそのまま映している。連結初年度のこの会社は赤字で累積損失を抱えており、伊藤園は役員や幹部社員を送り込んで不採算部門の整理と業務改善を進めた。その手当てを終えた翌年に持ち株比率を引き上げているから、買収そのものより、買ったあとに立て直せるかどうかにこの判断の成否がかかっていたとみられる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
数字で見る 3表

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図と表

伊藤園:タリーズを含むセグメントの推移

売上高(百万円)セグメント利益率(%)
伊藤園:タリーズを含むセグメントの推移
(百万円) 売上高セグメント利益 備考
2005年4月期 3,010△291 連結前。海苔・和菓子等の販売と米国の飲食店が中身であった
2006年4月期 3,171△127
2007年4月期 10,410120 連結は10月から。セグメント資産は526百万円から12,421百万円へ増えた
2008年4月期 18,205800 通期で寄与。資本的支出4,415百万円は主に店舗の出店による
2009年4月期 19,867620 タリーズの運営する店舗等で減損損失296百万円を計上した
2010年4月期 20,2141,284
2011年4月期 18,1431,646 報告セグメントを改め区分は「その他」へ。売上高は外部顧客に対する分
2012年4月期 22,3152,716
出所:株式会社伊藤園 有価証券報告書 第41期〜第47期(事業の種類別セグメント情報、セグメント情報)
出所:株式会社伊藤園 有価証券報告書 第41期〜第47期(事業の種類別セグメント情報、セグメント情報)

伊藤園:飲食関連事業セグメントの推移

売上高(百万円)セグメント利益率(%)
伊藤園:飲食関連事業セグメントの推移
(百万円) 売上高セグメント利益 備考
2013年4月期 20,5252,692 飲食関連事業を独立した報告セグメントとした最初の期
2014年4月期 23,1803,178 総店舗数555店舗
2015年4月期 25,2343,572 総店舗数588店舗
2016年4月期 27,5362,879 総店舗数638店舗
2017年4月期 30,2523,130 総店舗数671店舗
2018年4月期 32,5703,250 総店舗数706店舗
2019年4月期 34,5553,504 総店舗数735店舗
2020年4月期 32,7981,725 総店舗数747店舗。9割以上の店舗で臨時休業と時短営業に入った
2021年4月期 26,206△1,374 総店舗数764店舗。店舗等の減損損失1,872百万円を計上した
2022年4月期 30,046860 総店舗数760店舗。この期から収益認識に関する会計基準を適用している
2023年4月期 35,4922,429 総店舗数766店舗
2024年4月期 40,3503,236 総店舗数791店舗
2025年4月期 43,7693,518 総店舗数818店舗
出所:株式会社伊藤園 有価証券報告書 第48期〜第60期(セグメント情報、業績等の概要)
出所:株式会社伊藤園 有価証券報告書 第48期〜第60期(セグメント情報、業績等の概要)

株式取得の条件

株式取得の条件
科目 概要 備考
被取得企業 フードエックス・グローブ㈱ 飲食店の経営・フランチャイズ展開を行う事業会社を統括する持株会社
被取得企業の資本金 3,790百万円 2006年10月26日現在。本社は東京都港区赤坂、代表取締役社長は松田公太
株式の取得先 ㈱ユニカフェ、松田公太氏、北島英樹氏 追加取得分の売り手。取得の対価の種類は有価証券報告書に記載がない
決議日 2006年10月26日 取締役会で追加取得を決議し、同日をもって取得した
連結子会社化 2006年10月 決算日は3月31日で、同日現在の財務諸表を連結財務諸表の作成に使用している
取得直前の所有株式数 2,670,000株(36.4%) 追加取得の前から所有していた分。持分法適用会社ではなかった
追加取得した株式数 1,064,000株 発行済株式に対する割合は14.6ポイント分にあたる
追加取得の取得価額 1,915百万円
取得後の所有株式数 3,734,000株(51.0%) これによりフードエックス・グローブが特定子会社に該当することとなった
株式の取得価格 6,784百万円 連結開始時に対応する取得価格。うち1,915百万円が10月26日の追加取得分
子会社取得に伴う支出 4,820百万円 取得価格から被買収会社の現金及び現金同等物1,963百万円を差し引いた額
受け入れた資産 8,664百万円 流動資産3,087百万円、固定資産5,577百万円
受け入れた負債 10,663百万円 流動負債3,672百万円、固定負債6,991百万円。受け入れた純資産は負である
のれん 8,783百万円 主として18年の定額法により償却。株式の取得価格を上回る額を計上した
結合の理由 コーヒー事業の拡大 全国に約300店舗を持つタリーズのブランドを活用しコーヒー飲料を強化する
後日の追加取得 2,120,000株・4,240百万円 2007年6月8日受渡。所有株式数5,889,000株、所有割合80.5%となった
商号変更 2008年4月1日 タリーズコーヒージャパン㈱を吸収合併し、同社名へ商号を変更した
議決権所有割合100.00% 2010年4月期 2009年4月期末は90.42%。2025年4月期末も100.0%で変わっていない
出所:株式会社伊藤園 有価証券報告書 第42期(2007年4月期)【経営上の重要な契約等】【連結キャッシュ・フロー計算書関係】【重要な後発事象】
出所:株式会社伊藤園 有価証券報告書 第42期(2007年4月期)【経営上の重要な契約等】【連結キャッシュ・フロー計算書関係】【重要な後発事象】
参考文献

参考文献

参考
  • 伊藤園 有価証券報告書「第42期(2007年4月期)【経営上の重要な契約等】【連結キャッシュ・フロー計算書関係】」
  • 伊藤園 有価証券報告書「第42期(2007年4月期)【重要な後発事象】【連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項】」
  • 伊藤園 コーポレートブック「2007年4月期 コーポレートブック」
  • 伊藤園 決算説明会資料「2009年4月期 決算説明会」
  • 伊藤園 有価証券報告書「第44期(2009年4月期)【企業結合等関係】【関係会社の状況】」
  • 伊藤園 有価証券報告書「第45期(2010年4月期)【関係会社の状況】」
  • 伊藤園 有価証券報告書「第41期〜第60期(事業の種類別セグメント情報、セグメント情報、業績等の概要)」
  • 伊藤園 有価証券報告書「第60期(2025年4月期)【沿革】【関係会社の状況】」

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